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1章
4間奏-隣国
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「ーーなぁクレッチ、本当にこのまま隣国に向かって大丈夫なのか?
さっきの盗賊が、相手の国の差し金って可能性もあるかもしれないし、一旦ヴィシュガルドに帰った方が良いように思うんだが。」
揺れる馬車の中、奏太がクレッチに尋ねた。
盗賊団に襲われたにも関わらず、そのまま旅を強行する事に奏太が疑問を抱く。
「うーん、なんでも大事な会談らしく、どうしても行かなきゃいけないみたいなんだ。
それに、盗賊団が相手国の差し金である可能性は低いと思うよ。」
「どうしてだ?」
クレッチの話の根拠が分からず、奏太は質問を続ける。
「まず本来なら国王陛下の外遊には、もっと多くの兵士が護衛に付くんだけど、今回は中立国に出向くという事で、侵略の意思がない事を示すために、
護衛の数は最小限に抑えなければならない。
そういう状況で路中に国王陛下の身に危険が及べば、真っ先に疑われるのは相手国の関与だからね。
もし陛下の身に何かあれば、ヴィシュガルド王国が即相手国に宣戦布告するのは確定的だ。
お互い利害があっての中立関係な訳だから、問答無用の敵対化はお互いに望む結果ではない。」
なるほど。つまり真っ先に関与を疑われる国が、疑われるようなことをする筈がない、という理屈か。
「だから可能性としてあるのは、二国の関係をよく思わない第三国の関与だね。
でも兵士がさっき従順になった盗賊達に尋問したみたいだけど、彼等はヴィシュガルド王国に拠点を置く盗賊団らしく、どうやら第三国に関する情報は出てこなかったみたいだよ。」
とりあえずどこかの国の差し金である可能性は限りなく低そうだ。
「でも……あんな盗賊団がまた現れる可能性は0じゃないってことだよな……?」
奏太がクレッチに恐る恐る確認する。
「その時はまたあの素敵な音楽をよろしく頼むよ!」
クレッチが笑顔で答えるが、全く恐ろしい奴だ、と奏太は身震いしたーー
「ーーそれで、その隣国っていうのはどんな国なんですか?」
横から響子がクレッチに尋ねる。
「獣人の国、ズームー王国だよ。」
「やや!? それはつまり猫耳娘の国でござるか!?」
クレッチが発した『獣人の国』という言葉に、金重が食い付き身を乗り出す。
「獣人族は半分獣、半分人の種族だからね。勿論猫の姿をした人も沢山いるよ。」
「なななななんと……。」
金重が感動に身を震わせる。
「あっ、ほら! 見えてきたよ! あれがズームー王国だ!」
クレッチの言葉に、3人が馬車から身を乗り出す。
すると丘の向こうに、壁に囲まれた大きな街が見える。
「うわぁ~! 大きな国ですねえ~!」
獣人の国と聞いて、ジャングルの奥地に住む部族の小さな村や、山奥に聳えるマチュピチュのような所を想像したが、割とヴィシュガルド王国と変わらない、普通の城下町といった雰囲気だ。
暫くすると馬車は関所にたどり着き、門をくぐった。
流石に国王の来訪という事もあってか、門番のチェックはすんなり通ったようだ。
中には美しい街が広がっていた。
ヴィシュガルド王国と変わらない家や店が立ち並んでいるが、ヴィシュガルドと決定的に違うのは、緑の多さ。
街の至るところに木々や草花が生え、家の側に清流が流れる。
虫や鳥も多く、家の隣の畑で住民が農作業をしている。
国全体が、田舎街のような雰囲気を擁している。
そしてやはり、住民は皆獣のような見た目をしている。
人間と同じく服は着ているが、中には二本足で立って服を着ているだけの、ほぼ犬のような見た目をした獣人までいる。
逆に頭には兎の耳が生えているが、あとは自分達とほぼ変わらない見た目の獣人もいる。
どれだけ人間寄りか獣寄りかは、人によって異なるようだ。
「おおっ! あっちにも猫耳娘! こっちにも猫耳!
ここは桃源郷でござるか……!?」
中には猫耳娘というより、猫娘と呼んだ方が近い人もいたが、自称『猫耳娘は小生の嫁』の金重が興奮しながら、あっちこっちとキョロキョロ頭を動かす。
まあ金重でなくともテンションが上がるのは仕方ない。
「わぁ~! あそこの人は犬耳ですよぉ~!
あ! あっちの人は熊さんみたいです!」
まるでサファリパークさながらに、響子も舞い上がる。
「これから俺達は何処へ向かうんだ?」
この国で自分達はこれからどうするのか、奏太がクレッチに尋ねる。
「陛下と兵士の方々はこのままズームー城まで向かうけど、もう魔物も出てこないから、僕達の任務はとりあえずここで終了だよ! お疲れ様!
また2日後にヴィシュガルド王国に帰国するから、それまでは自由行動で構わないよ!」
なんと、こんな所でお暇を頂いてしまった。自由行動と言われても、宿や食事何処でどうすれば良いのだろうか。
永吉に貰った日本語の地図には、流石にズームー王国までは載ってないし……。
奏太が考えあぐねているとーー
「あ、 そうだ! 今回のクエストは国王陛下から旅費も後から報酬と一緒に頂ける事になっているから、君達には前払いで渡しておくよ!
あとついでに僕達からの報酬の金貨15枚も支払っておくよ!
もう演奏は聴かせて貰った上、戦闘でも助けて貰ったからね!」
そう思い出したように言うと、クレッチは金貨30枚を渡してきた。
金貨30枚、つまり一人金貨10枚。
旅費も含まれているとはいえ、かなりの大金だ。
奏太がありがたく受け取ると、響子と金重に10枚ずつ配った。
「この道を真っ直ぐ進めば街の中心部に辿り着くよ。
中心部にはお店や宿も沢山あるから、そこで聞いてみると良い。
それじゃあまた2日後の朝、ここに集合という事で!
3人とも今日はありがとう!」
クレッチはお礼を言うと、パーティメンバーを引き連れ、奏太達の前から去っていった。
「それじゃあ、俺達も今日の宿を探しますか。」
「はい!」
フラフラと獣人に気を取られている金重からの返事は無いが、奏太達は街の中心部へ向かう事にしたーー
さっきの盗賊が、相手の国の差し金って可能性もあるかもしれないし、一旦ヴィシュガルドに帰った方が良いように思うんだが。」
揺れる馬車の中、奏太がクレッチに尋ねた。
盗賊団に襲われたにも関わらず、そのまま旅を強行する事に奏太が疑問を抱く。
「うーん、なんでも大事な会談らしく、どうしても行かなきゃいけないみたいなんだ。
それに、盗賊団が相手国の差し金である可能性は低いと思うよ。」
「どうしてだ?」
クレッチの話の根拠が分からず、奏太は質問を続ける。
「まず本来なら国王陛下の外遊には、もっと多くの兵士が護衛に付くんだけど、今回は中立国に出向くという事で、侵略の意思がない事を示すために、
護衛の数は最小限に抑えなければならない。
そういう状況で路中に国王陛下の身に危険が及べば、真っ先に疑われるのは相手国の関与だからね。
もし陛下の身に何かあれば、ヴィシュガルド王国が即相手国に宣戦布告するのは確定的だ。
お互い利害があっての中立関係な訳だから、問答無用の敵対化はお互いに望む結果ではない。」
なるほど。つまり真っ先に関与を疑われる国が、疑われるようなことをする筈がない、という理屈か。
「だから可能性としてあるのは、二国の関係をよく思わない第三国の関与だね。
でも兵士がさっき従順になった盗賊達に尋問したみたいだけど、彼等はヴィシュガルド王国に拠点を置く盗賊団らしく、どうやら第三国に関する情報は出てこなかったみたいだよ。」
とりあえずどこかの国の差し金である可能性は限りなく低そうだ。
「でも……あんな盗賊団がまた現れる可能性は0じゃないってことだよな……?」
奏太がクレッチに恐る恐る確認する。
「その時はまたあの素敵な音楽をよろしく頼むよ!」
クレッチが笑顔で答えるが、全く恐ろしい奴だ、と奏太は身震いしたーー
「ーーそれで、その隣国っていうのはどんな国なんですか?」
横から響子がクレッチに尋ねる。
「獣人の国、ズームー王国だよ。」
「やや!? それはつまり猫耳娘の国でござるか!?」
クレッチが発した『獣人の国』という言葉に、金重が食い付き身を乗り出す。
「獣人族は半分獣、半分人の種族だからね。勿論猫の姿をした人も沢山いるよ。」
「なななななんと……。」
金重が感動に身を震わせる。
「あっ、ほら! 見えてきたよ! あれがズームー王国だ!」
クレッチの言葉に、3人が馬車から身を乗り出す。
すると丘の向こうに、壁に囲まれた大きな街が見える。
「うわぁ~! 大きな国ですねえ~!」
獣人の国と聞いて、ジャングルの奥地に住む部族の小さな村や、山奥に聳えるマチュピチュのような所を想像したが、割とヴィシュガルド王国と変わらない、普通の城下町といった雰囲気だ。
暫くすると馬車は関所にたどり着き、門をくぐった。
流石に国王の来訪という事もあってか、門番のチェックはすんなり通ったようだ。
中には美しい街が広がっていた。
ヴィシュガルド王国と変わらない家や店が立ち並んでいるが、ヴィシュガルドと決定的に違うのは、緑の多さ。
街の至るところに木々や草花が生え、家の側に清流が流れる。
虫や鳥も多く、家の隣の畑で住民が農作業をしている。
国全体が、田舎街のような雰囲気を擁している。
そしてやはり、住民は皆獣のような見た目をしている。
人間と同じく服は着ているが、中には二本足で立って服を着ているだけの、ほぼ犬のような見た目をした獣人までいる。
逆に頭には兎の耳が生えているが、あとは自分達とほぼ変わらない見た目の獣人もいる。
どれだけ人間寄りか獣寄りかは、人によって異なるようだ。
「おおっ! あっちにも猫耳娘! こっちにも猫耳!
ここは桃源郷でござるか……!?」
中には猫耳娘というより、猫娘と呼んだ方が近い人もいたが、自称『猫耳娘は小生の嫁』の金重が興奮しながら、あっちこっちとキョロキョロ頭を動かす。
まあ金重でなくともテンションが上がるのは仕方ない。
「わぁ~! あそこの人は犬耳ですよぉ~!
あ! あっちの人は熊さんみたいです!」
まるでサファリパークさながらに、響子も舞い上がる。
「これから俺達は何処へ向かうんだ?」
この国で自分達はこれからどうするのか、奏太がクレッチに尋ねる。
「陛下と兵士の方々はこのままズームー城まで向かうけど、もう魔物も出てこないから、僕達の任務はとりあえずここで終了だよ! お疲れ様!
また2日後にヴィシュガルド王国に帰国するから、それまでは自由行動で構わないよ!」
なんと、こんな所でお暇を頂いてしまった。自由行動と言われても、宿や食事何処でどうすれば良いのだろうか。
永吉に貰った日本語の地図には、流石にズームー王国までは載ってないし……。
奏太が考えあぐねているとーー
「あ、 そうだ! 今回のクエストは国王陛下から旅費も後から報酬と一緒に頂ける事になっているから、君達には前払いで渡しておくよ!
あとついでに僕達からの報酬の金貨15枚も支払っておくよ!
もう演奏は聴かせて貰った上、戦闘でも助けて貰ったからね!」
そう思い出したように言うと、クレッチは金貨30枚を渡してきた。
金貨30枚、つまり一人金貨10枚。
旅費も含まれているとはいえ、かなりの大金だ。
奏太がありがたく受け取ると、響子と金重に10枚ずつ配った。
「この道を真っ直ぐ進めば街の中心部に辿り着くよ。
中心部にはお店や宿も沢山あるから、そこで聞いてみると良い。
それじゃあまた2日後の朝、ここに集合という事で!
3人とも今日はありがとう!」
クレッチはお礼を言うと、パーティメンバーを引き連れ、奏太達の前から去っていった。
「それじゃあ、俺達も今日の宿を探しますか。」
「はい!」
フラフラと獣人に気を取られている金重からの返事は無いが、奏太達は街の中心部へ向かう事にしたーー
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