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1章
9サビ-涙
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「なんだこの騒音は!?」
「先程までの音楽は一体どうしたんだ!」
爆音でパンクを演奏する奏太達、いや今回は響子と金重にエルフ達が何事かと詰め寄る。
しかも頭の中には響子の歌声と、ドラムの音まで念話で聴こえてくる。
「そうか……! 先程の演奏はダークエルフ達に届いていなかったのか!
だからわざわざ念話魔法を使って歌っているんだな!
見ろ! 矢の攻撃が止まっているぞ!」
セイビアが奏太達の意図と、それによりダークエルフ達の攻撃が止まった事に気付く。
「おお! 本当だ!」
「よし! 今から俺達も反撃する、ぞ……?」
エルフ達は奏太達の演奏に活力を戻し、ダークエルフ達に反撃しようと立ち上がるがーー
「なぜだ……彼らの演奏する姿から目が離せない……」
「ああ……なんだか無性に胸が熱くなってくる!」
「もっとこの音楽を聴いていたい!」
エルフ達はなぜか反撃の狼煙を上げず、一人、また一人と奏太達が演奏する元へと集まってくる。
そして気付けば村のエルフ達全員が、奏太達の前で拳を振り上げながらライブに聴き入っていたーー
ーーー
「クソ! なんなのださっきから聴こえてくるこの騒音は!?」
ラドウィグ達は状況を確認すべく、村に向かって進軍を続けていた。
奏太達の演奏に盛り上がるエルフ達とは対称的に、ダークエルフ達は皆爆音に耳をふさいでいる。
「ひどい演奏だ! リズムも何もありゃしないぜ!」
「一体どうやったらこんな不快な演奏を奏でられるんだ!」
一見パンクとの親和性が高そうな見た目をしているが、ダークエルフ達は聴こえてくる演奏になぜか悪態をついている。
それもそのはず。
響子と奏太が念話魔法で送っている歌と伴奏は、瞬時にダークエルフ達の脳内に届いている。
一方響子と金重が奏でる楽器の音は音速で伝わるため、距離の離れたダークエルフ達はそのタイムラグによって全く噛み合っていない演奏を聴かされていた。
「こしゃくな妨害をしやがって……! こんな事を思い付くのはきっとあの薄汚い人間どもだな!
村に着いたら真っ先にあいつらを葬り去ってやる!」
ラドウィグは怒りの表情を浮かべながら走っていると、村が目前まで迫ってきた。
『お前達! 村に着いたらエルフ達には手を出さず、この不快な音を奏でている奴らを真っ先にしと……め……』
ラドウィグが奏太達の始末をダークエルフ達に指示しようとするが、村に近付くにつれて耳に聴こえてくる演奏と、脳内に流れる歌とリズムが徐々に一致していく。
そして村に到着した時には、両者はほぼ認識に及ばない程の誤差となって、奏太達の演奏がダークエルフ達の元へと届けられた。
「なんだ、この音楽は……」
ラドウィグの足が止まり、呆然と演奏に耳を傾ける。
他のダークエルフ達も指示されるでもなく、立ち止まって演奏を聴いていた。
「おい、この曲スゲー格好よくないか!?」
「ああ! ムチャクチャ心揺さぶられるじゃねーか!」
先程まで奏太達の演奏をけなしていたダークエルフ達が、一転称賛の声を上げる。
響子がその見た目を「格好いい」と称しただけあって、やはりダークエルフとパンクは実に相性が良かった。
(曲がいいのはもちろんだが、いや、スゲーいい。めちゃめちゃ格好いい。だが、それ以上にこれを聴いていると、なぜか森で過ごしていた時の事を思い出す……。
森を焼かれ、家族と仲間を殺され、必死に逃げて、襲ってきた魔族やドラゴンへの復讐を皆で誓い合った。父、母、そしてセイビアと。
そのために俺は皆が怯えず暮らせる場所を探して、あの要塞に移り住む事に決めたんだ。
多少汚い場所だったが皆で協力すれば、森にも勝る美しい国を作れると信じて……。
でも気付けば俺は魔族達の残した魔素に毒され、村に住む仲間達を蔑むようになっていたんだ。
一体俺は何と戦っていたんだ……?
なぜ家族やかつての仲間達に向かって矢を放っているんだ?)
『ーー今その理由がわかった。理由があるんだ。
理由があるから、俺は待っているんだ。
待つ理由ができたんだ。
ベルリンの壁で』
その時、響子の歌うサビのメロディがラドウィグの頭に響いた。
響子が歌う歌詞は英語だったが、その意味はラドウィグにも理解できた。
響子が紡ぐ一つ一つの言葉がラドウィグの心に突き刺さり、ラドウィグの目から涙がこぼれた。
(そうだ……俺が森を飛び出して、あの暗い壁に囲まれた要塞で皆を待っていたのには、理由があったんだ。
奴らに報復して仲間の魂を弔い、エルフが輝ける国をもう一度再建し、皆で襲い来る脅威に立ち向かうためだったんだ!
俺達が戦うべき相手はエルフじゃなく、他にいたんだ……!)
ラドウィグは流れる涙もそのままに、自ら破壊した村へと駆け出したーー
※本日21時に次話を投稿致します。
「先程までの音楽は一体どうしたんだ!」
爆音でパンクを演奏する奏太達、いや今回は響子と金重にエルフ達が何事かと詰め寄る。
しかも頭の中には響子の歌声と、ドラムの音まで念話で聴こえてくる。
「そうか……! 先程の演奏はダークエルフ達に届いていなかったのか!
だからわざわざ念話魔法を使って歌っているんだな!
見ろ! 矢の攻撃が止まっているぞ!」
セイビアが奏太達の意図と、それによりダークエルフ達の攻撃が止まった事に気付く。
「おお! 本当だ!」
「よし! 今から俺達も反撃する、ぞ……?」
エルフ達は奏太達の演奏に活力を戻し、ダークエルフ達に反撃しようと立ち上がるがーー
「なぜだ……彼らの演奏する姿から目が離せない……」
「ああ……なんだか無性に胸が熱くなってくる!」
「もっとこの音楽を聴いていたい!」
エルフ達はなぜか反撃の狼煙を上げず、一人、また一人と奏太達が演奏する元へと集まってくる。
そして気付けば村のエルフ達全員が、奏太達の前で拳を振り上げながらライブに聴き入っていたーー
ーーー
「クソ! なんなのださっきから聴こえてくるこの騒音は!?」
ラドウィグ達は状況を確認すべく、村に向かって進軍を続けていた。
奏太達の演奏に盛り上がるエルフ達とは対称的に、ダークエルフ達は皆爆音に耳をふさいでいる。
「ひどい演奏だ! リズムも何もありゃしないぜ!」
「一体どうやったらこんな不快な演奏を奏でられるんだ!」
一見パンクとの親和性が高そうな見た目をしているが、ダークエルフ達は聴こえてくる演奏になぜか悪態をついている。
それもそのはず。
響子と奏太が念話魔法で送っている歌と伴奏は、瞬時にダークエルフ達の脳内に届いている。
一方響子と金重が奏でる楽器の音は音速で伝わるため、距離の離れたダークエルフ達はそのタイムラグによって全く噛み合っていない演奏を聴かされていた。
「こしゃくな妨害をしやがって……! こんな事を思い付くのはきっとあの薄汚い人間どもだな!
村に着いたら真っ先にあいつらを葬り去ってやる!」
ラドウィグは怒りの表情を浮かべながら走っていると、村が目前まで迫ってきた。
『お前達! 村に着いたらエルフ達には手を出さず、この不快な音を奏でている奴らを真っ先にしと……め……』
ラドウィグが奏太達の始末をダークエルフ達に指示しようとするが、村に近付くにつれて耳に聴こえてくる演奏と、脳内に流れる歌とリズムが徐々に一致していく。
そして村に到着した時には、両者はほぼ認識に及ばない程の誤差となって、奏太達の演奏がダークエルフ達の元へと届けられた。
「なんだ、この音楽は……」
ラドウィグの足が止まり、呆然と演奏に耳を傾ける。
他のダークエルフ達も指示されるでもなく、立ち止まって演奏を聴いていた。
「おい、この曲スゲー格好よくないか!?」
「ああ! ムチャクチャ心揺さぶられるじゃねーか!」
先程まで奏太達の演奏をけなしていたダークエルフ達が、一転称賛の声を上げる。
響子がその見た目を「格好いい」と称しただけあって、やはりダークエルフとパンクは実に相性が良かった。
(曲がいいのはもちろんだが、いや、スゲーいい。めちゃめちゃ格好いい。だが、それ以上にこれを聴いていると、なぜか森で過ごしていた時の事を思い出す……。
森を焼かれ、家族と仲間を殺され、必死に逃げて、襲ってきた魔族やドラゴンへの復讐を皆で誓い合った。父、母、そしてセイビアと。
そのために俺は皆が怯えず暮らせる場所を探して、あの要塞に移り住む事に決めたんだ。
多少汚い場所だったが皆で協力すれば、森にも勝る美しい国を作れると信じて……。
でも気付けば俺は魔族達の残した魔素に毒され、村に住む仲間達を蔑むようになっていたんだ。
一体俺は何と戦っていたんだ……?
なぜ家族やかつての仲間達に向かって矢を放っているんだ?)
『ーー今その理由がわかった。理由があるんだ。
理由があるから、俺は待っているんだ。
待つ理由ができたんだ。
ベルリンの壁で』
その時、響子の歌うサビのメロディがラドウィグの頭に響いた。
響子が歌う歌詞は英語だったが、その意味はラドウィグにも理解できた。
響子が紡ぐ一つ一つの言葉がラドウィグの心に突き刺さり、ラドウィグの目から涙がこぼれた。
(そうだ……俺が森を飛び出して、あの暗い壁に囲まれた要塞で皆を待っていたのには、理由があったんだ。
奴らに報復して仲間の魂を弔い、エルフが輝ける国をもう一度再建し、皆で襲い来る脅威に立ち向かうためだったんだ!
俺達が戦うべき相手はエルフじゃなく、他にいたんだ……!)
ラドウィグは流れる涙もそのままに、自ら破壊した村へと駆け出したーー
※本日21時に次話を投稿致します。
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