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第一章 蛹化
エピテーゼ
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女性の体に近付く事に喜びを感じる俺は、髪を伸ばしたり、脱毛やスキンケアをして、少しでも女らしくなれるように努力していた。
しかし、そんな俺には、女性の象徴である乳房の膨らみがなかったので、代用品が必要となった。
中学生の頃の俺はブラジャーのカップの中に丸めた靴下を入れていたが、更なるリアルさを求め、市販のシリコンバストを使用するようになっていた。
しかし、俺は女装用品であるシリコンバストに不満を持っていた。
女らしいファッションを極めるには、女らしい肉体が必要だったが、市販のシリコンバストは乳房の幅が狭く、その逆に乳房の高さというか厚みがあり、前に突き出た不自然な形状をしていた。
女装時の俺は立ち姿も女性化させていて、背中を反らせて胸部を上に向けるように突き出す姿勢をしていた。
男と女は立ち姿も違っていて、男性は肩甲骨あたりの背中が斜め上を向いているのに対し、女性は斜め下を向いていて、それに伴い、胸部も斜め上を向いていた。
その姿勢は、結果的に乳房の膨らみを強調することになるので、不自然な形状の乳房を目立たせることになっていた。
女装用のシリコンバストは、正に取って付けた様な見た目で、男が理想とする「おっぱい」を具現化した物だった。
また、市販品は耐久性の為なのか、縁が分厚く作られていたので皮膚との馴染みが悪く、裏側が平坦で体に密着する事もなかった。
乳房の幅やバージスラインの形状は、アンダーバストのサイズによって決まっていて、同じカップ数でも、アンダーが65センチの人と85センチの人とでは、乳房の形状が大きく異なっていた。
本来なら、シリコンバストもブラジャーと同様に細かいサイズ展開が必要だった。
しかし、ブラジャーと同じサイズ展開をするには、アンダーバストのサイズを65から85までの5種類を用意し、それぞれに、AからFまでのカップを用意すると、30種類の商品が必要となり、ニッチな商品である女装用のシリコンバストの需要と供給のバランスを考えると、それは無理な相談だった。
俺は納得のいくシリコンバストを探し続け、最終的に「エピテーゼ」の存在に辿り着いた。
エピテーゼとは事故や手術によって欠損した体の部位を補う「補綴物」のことだ。
画像で見た乳房のエピテーゼは、オーダーメイドされた物だったので、本物と見分けがつかない出来だった。
俺は乳房のエピテーゼが欲しくなったが、医療用の器具を性的な目的に使用する事に罪悪感があり、メーカーに注文することが出来なかった。
そこで、俺は乳房のエピテーゼを自作することにした。
子供の頃から手先が器用だった俺は、ガンプラやフィギュアを改造や全塗装するのが趣味だったので、シリコン樹脂を使ったエピテーゼも自作できると考えた。
俺は自分の胸部の型を取り、石膏で等身大のトルソーを作ると、粘土で乳房を造形して石膏で型を取り、シリコン樹脂を流し込んでエピテーゼを作った。
初めて作ったエピテーゼは粗末な出来だったが、自分の体から型を取ったエピテーゼの裏側の形状は完璧で、プライマーと医療用接着剤で胸部に貼り付けたエピテーゼは、まるで自分の体の一部のように密着し、多少、乱暴に扱っても剥がれる気配がなかった。
俺の体の一部となった乳房のエピテーゼは、その自重でデコルテ部分の皮膚を引っ張り、膨らみの位置が低くなっていた。
俺は重力の影響を考慮しなかったことを反省したが、乳房を女性が自慰行為をする時の様に揉んでみると、神経が通っていない筈の乳房が気持ち良く感じた。
自己女性化愛好症の俺は、体が本物の女性に近付いた事に興奮したが、それは、男の性的な興奮とは違っていて、陰茎が勃起しない不思議な感覚だった。
俺は、より完璧な乳房を目指してエピテーゼ作りに没頭した。
シリコンバストの問題点の一つだった皮膚とエピテーゼとの継ぎ目は、エピテーゼの範囲を広げ、縁を極限まで薄くする事でクリアした。
湿布よりも薄くしたエピテーゼの縁は、慎重に扱わないと簡単に破れてしまったが、皮膚との段差は、ほとんどなくなっていた。
耐久性よりもリアルさを求めていた俺は、市販品には出来ない薄さを実現していた。
そして、趣味でフィギュアの全塗装をしていた俺は、肌色の調色にも慣れていて、自分の皮膚の色を再現でき、皮膚から透けて見える血管も再現する事が出来た。
普段から1/7スケールのフィギュアに彩色していた俺にとって、1/1スケールのエピテーゼに彩色する事は造作もない事だった。
また、複雑な造形の乳首も「ニップル」と呼ばれる市販の付け乳首から型をとることでクリアした。
市販のニップルの中には、女性の乳首から型をとった商品もあり、乳輪の僅かな凹凸まで再現されていたので、エピテーゼのリアルさが増していた。
しかし、問題は乳首の位置だった。
自然な乳首の位置は思いのほか調整が難しく、ほんの数ミリ違うだけで違和感が出てしまった。
完璧なバランスの乳房が出来たと思っても、翌日に改めて見ると乳首の位置が不自然に感じる…俺は正解が分からなくなっていた…。
しかし、そんな俺には、女性の象徴である乳房の膨らみがなかったので、代用品が必要となった。
中学生の頃の俺はブラジャーのカップの中に丸めた靴下を入れていたが、更なるリアルさを求め、市販のシリコンバストを使用するようになっていた。
しかし、俺は女装用品であるシリコンバストに不満を持っていた。
女らしいファッションを極めるには、女らしい肉体が必要だったが、市販のシリコンバストは乳房の幅が狭く、その逆に乳房の高さというか厚みがあり、前に突き出た不自然な形状をしていた。
女装時の俺は立ち姿も女性化させていて、背中を反らせて胸部を上に向けるように突き出す姿勢をしていた。
男と女は立ち姿も違っていて、男性は肩甲骨あたりの背中が斜め上を向いているのに対し、女性は斜め下を向いていて、それに伴い、胸部も斜め上を向いていた。
その姿勢は、結果的に乳房の膨らみを強調することになるので、不自然な形状の乳房を目立たせることになっていた。
女装用のシリコンバストは、正に取って付けた様な見た目で、男が理想とする「おっぱい」を具現化した物だった。
また、市販品は耐久性の為なのか、縁が分厚く作られていたので皮膚との馴染みが悪く、裏側が平坦で体に密着する事もなかった。
乳房の幅やバージスラインの形状は、アンダーバストのサイズによって決まっていて、同じカップ数でも、アンダーが65センチの人と85センチの人とでは、乳房の形状が大きく異なっていた。
本来なら、シリコンバストもブラジャーと同様に細かいサイズ展開が必要だった。
しかし、ブラジャーと同じサイズ展開をするには、アンダーバストのサイズを65から85までの5種類を用意し、それぞれに、AからFまでのカップを用意すると、30種類の商品が必要となり、ニッチな商品である女装用のシリコンバストの需要と供給のバランスを考えると、それは無理な相談だった。
俺は納得のいくシリコンバストを探し続け、最終的に「エピテーゼ」の存在に辿り着いた。
エピテーゼとは事故や手術によって欠損した体の部位を補う「補綴物」のことだ。
画像で見た乳房のエピテーゼは、オーダーメイドされた物だったので、本物と見分けがつかない出来だった。
俺は乳房のエピテーゼが欲しくなったが、医療用の器具を性的な目的に使用する事に罪悪感があり、メーカーに注文することが出来なかった。
そこで、俺は乳房のエピテーゼを自作することにした。
子供の頃から手先が器用だった俺は、ガンプラやフィギュアを改造や全塗装するのが趣味だったので、シリコン樹脂を使ったエピテーゼも自作できると考えた。
俺は自分の胸部の型を取り、石膏で等身大のトルソーを作ると、粘土で乳房を造形して石膏で型を取り、シリコン樹脂を流し込んでエピテーゼを作った。
初めて作ったエピテーゼは粗末な出来だったが、自分の体から型を取ったエピテーゼの裏側の形状は完璧で、プライマーと医療用接着剤で胸部に貼り付けたエピテーゼは、まるで自分の体の一部のように密着し、多少、乱暴に扱っても剥がれる気配がなかった。
俺の体の一部となった乳房のエピテーゼは、その自重でデコルテ部分の皮膚を引っ張り、膨らみの位置が低くなっていた。
俺は重力の影響を考慮しなかったことを反省したが、乳房を女性が自慰行為をする時の様に揉んでみると、神経が通っていない筈の乳房が気持ち良く感じた。
自己女性化愛好症の俺は、体が本物の女性に近付いた事に興奮したが、それは、男の性的な興奮とは違っていて、陰茎が勃起しない不思議な感覚だった。
俺は、より完璧な乳房を目指してエピテーゼ作りに没頭した。
シリコンバストの問題点の一つだった皮膚とエピテーゼとの継ぎ目は、エピテーゼの範囲を広げ、縁を極限まで薄くする事でクリアした。
湿布よりも薄くしたエピテーゼの縁は、慎重に扱わないと簡単に破れてしまったが、皮膚との段差は、ほとんどなくなっていた。
耐久性よりもリアルさを求めていた俺は、市販品には出来ない薄さを実現していた。
そして、趣味でフィギュアの全塗装をしていた俺は、肌色の調色にも慣れていて、自分の皮膚の色を再現でき、皮膚から透けて見える血管も再現する事が出来た。
普段から1/7スケールのフィギュアに彩色していた俺にとって、1/1スケールのエピテーゼに彩色する事は造作もない事だった。
また、複雑な造形の乳首も「ニップル」と呼ばれる市販の付け乳首から型をとることでクリアした。
市販のニップルの中には、女性の乳首から型をとった商品もあり、乳輪の僅かな凹凸まで再現されていたので、エピテーゼのリアルさが増していた。
しかし、問題は乳首の位置だった。
自然な乳首の位置は思いのほか調整が難しく、ほんの数ミリ違うだけで違和感が出てしまった。
完璧なバランスの乳房が出来たと思っても、翌日に改めて見ると乳首の位置が不自然に感じる…俺は正解が分からなくなっていた…。
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