ベタボレプリンス

うさき

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 なんとなく真島に対して気まずさを感じながら、夕飯を食ってその日は別れた。
 ここしばらく触らせてなかったから、変に反動がでたのか。
 それともそういう問題でもないのか。

 考えれば俺と真島が付き合ってから、気付けば三ヶ月が経とうとしている。
 三ヶ月間まさかキスの一つもしないカップルとか俺としては全く考えられないが、だが待て相手は男だ。
 そもそも俺はアイツに恋愛対象じゃないと言ったはずだが。

「…って俺は何考えてんだ」

 気付けば真島が帰ってから、ずっとそのことでぐるぐるしていた。
 無理なら無理でいいし、俺が本気で嫌がることをアイツはしないだろう。
 というか恋愛対象じゃないと言いながら、まだ付き合ってるというのもおかしな話な気がしてきた。
 真島の気持ちを弄ぶだけなら、普通に友達としてでも充分なんじゃないか。

「あー、クソっ」

 再び真島の事で占めていく頭に、俺はガシガシと髪を掻く。
 どうやら俺は本気で疲れているらしい。
 もう風呂入ってさっさと寝ようとソファを立ち上がると、ふとスマホの電源を切りっぱなしにしていたことを思い出した。

「…マジかよ」

 電源を入れたら、ミカ先輩からメッセが届いていた。
 内容は、明日一緒にお昼食べようとのこと。
 というか今実行委員は昼休みも献上して文化祭の準備に当たっているわけだが、そのことを分かってるんだろうか。
 そして俺に電源切られといて、よく誘えるな。

 とりあえず『無理です』と一言入れておいたが、この分だとどうせ断っても教室まで来そうだ。
 まあ明日のことは明日考えようと俺はスマホを投げると、予定通り風呂に入ることにした。



 翌日の昼休み。
 いつも通り真島が弁当を持って俺の教室へ来る。
 昨日の事があってなんとなく気まずさを感じていたが、真島は俺の顔を見ると変わらず嬉しそうに笑ってくれた。
 その表情に少し安心して屋上へ向かおうとしたところで、ミカ先輩が来た。

「うーめのん。お昼一緒にたーべよ」
「…先輩。俺無理だって送りましたよね」
「どうして?誰と食べたって同じでしょ?」
「違います」

 ジト目でそう言ってやったが、先輩はニコニコと笑顔のままだ。
 本当にこの人は自分勝手で、付き合ってた時と何も変わらない。

「もー、そんな冷たくしなくてもいいじゃん。まだあの時のこと根に持ってるの?」
「…はぁ?別にもう忘れてましたよ」
「じゃあいいじゃん。どうせ実行委員の仕事あるんだからすぐ会うし。それにちょっと――」

 そう言って先輩は真島をちらりと見た。
 何か嫌な予感がして、俺はとっさに先輩の手を掴む。

「分かりました。じゃあ今日だけですよ」
「ほんと?やったぁ」

 俺の言葉に素直に喜ぶ先輩。
 この人が言い出したらきかないのは今に始まったことじゃない。

 気まぐれで、ワガママで、自分勝手。
 でも、だからこそあの時はちょうど良かった。

「真島悪い。また今度な」
「…う、うん」
「別に真島くんも一緒でもいいよ?」
「絶対嫌ですよ。行きましょう、先輩」

 元恋人と現恋人と三人で一緒に飯を食うとか、一体どこの昼ドラだ。
 俺は先輩を強引に連れ出しながら、ふと今の言い方は真島に誤解されたかなと頭に過ぎる。
 それでも真島のことはあとでフォローすればいいとして、とりあえず俺は先輩と話をするため食堂へと足を向けた。
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