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しおりを挟む修学旅行が終わり、今日から7月となる。
四限を終えたら担任に呼ばれた俺は、職員室へと来ていた。
「高瀬は就職希望だったな。お前母親とは話し合ったのか。進学させたいと三者面談では言っていただろう」
「就職でいいですよ。進学する気俺はないんで」
「お前は母子家庭だったな。金銭的な面であれば母子専用の奨学金制度もある。今からでも高瀬ならしっかりやる気を出して勉強すれば――」
そんなことより腹減ったんだが。
真島の今日の弁当はなんだろう、と全校集会の校長ばりに長くなりそうな担任の話を右から左へ受け流す。
担任が言っているのは5月にやった三者面談の事で「大学とか楽しそうだから行きたーい」と自分が行くのかとツッコミ入れるレベルで適当なことを抜かした俺の母親のせいだ。
そもそもそんな金ねーだろうが。
求人票は今日から見れるらしく、最後に資料を貰うと俺は職員室を出た。
それにしてももう進路のことを考えないといけない季節になってしまったとか、なんだかうんざりしてくる。
教室へ戻ると廊下前でヒビヤンと真島が話しているのを発見した。
何話してんだかよく分からないが、真島の顔がムキになってる事を察するにヒビヤンに誂われてるんだろう。
ミカ先輩はもういないのに相変わらず単純なやつだ。
二人の頭をパコンと叩いてから真島を連れて屋上へ向かう。
「ちょっとだけ…っ」
屋上に着くと、誰もいないことを確認した真島にすぐさま抱きつかれた。
どうやらヒビヤンに遊ばれて機嫌を損ねていたらしいが、俺に触ればあっという間に機嫌が良くなっていく。
ふふふと気色悪い笑い方をしながら目尻を下げる真島は、今日も安定して俺バカだ。
とりあえず飯を食って、珍しくお菓子を作ったとか言い出した真島にカップケーキを手渡される。
これまたバレンタインデーかなにかかと思うような可愛らしいデコレーションにラッピング。
ついにコイツはパティシエの道も目指し始めたか。
あまり甘ったるいのは得意じゃないんだが、嬉しそうな顔で差し出してくるからそれを受け取る。
「お、うまい」
パクリと口に入れたら見た目ほど甘くもなく、なんかふわふわしていた。
ちらっと見たらすげー嬉しそうな顔して俺を見ている。
だから飯食ってる俺より幸せそうな顔すんな。
「はぁ…好きだなあ。大好き」
「お前な、遊園地の時も思ったけど最近頭に浮かんだことそのまま口に出しすぎだろ」
「えっ、そうかな」
「おー。お仕置き決定」
言ったら、ぶるっと震えたように真島の顔が紅潮する。
ドMか。
「な、何してくれるの?」
「ご褒美じゃねーんだよ。説教しようとしてんの。分かるか?」
「わ、分かります」
すぐに正座になってじっと俺を見つめる。
なんだろう。既に反省する気満々の奴にわざわざ説教するとか、非常にやりづらい。
「あー…今一度言っておくけどさ。俺とお前が付き合ってるのは周りに秘密にしてんだよ。貞男とヒビヤンと七海は心広いからいいとしても、男同士付き合ってるなんて周りから見たらイイもんじゃねーの分かるだろ」
特に高校卒業したら別れると決めているのに、ここで真島にホモ疑惑なんかついたら後々変に影響しても困る。
目立つ奴だから噂が広まるのなんかあっという間だし、一度そうなってしまえばその噂を払拭することは難しい。
「だから少しは周りを見て、考えて発言しろって話」
「うん、分かった!」
返事はいいがコイツちゃんと分かってるんだろうか。
なんかキラキラした目で見つめられてるんだが。
「お、お仕置きもう終わり?」
「……」
軽く説教するだけのつもりだったが、そんなにお望みならもっとしてやろうか。
久しぶりに悪戯心がわいて、緩みきったその顔にニッコリと微笑みかけると俺は真島ににじり寄った。
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