5 / 37
1章 ゾンビになった日
あんよがじょうず
しおりを挟む・これまでのあらすじ
初っぱな女泣かせの罪な男ケロック。享年10歳にしてスケコマシかよ死んでしまえ。もう死んでるけど。
とりあえず今日のところは休むといい。町医者ルシルはそう言って部屋を出て行った。
ルシルから提案されたこれからのおおまかな流れを説明するとこうだ。
⚫︎ケロックの家族にはうまくごまかす。少なくともケロック自身のことがわからないうちは、彼がゾンビであることは隠しておいたほうがいい。
⚫︎ルシルは簡単な連絡手段を考案してくる。意思の疎通が難しい現状では、何らかのアイテムを用いる必要がある。
⚫︎ルシルは神殿というところから『神眼の水晶』というアイテムを盗・・・・拝借してくる。これによって行う儀式で、一部の加護おそらくスキルのことを確認することができる。
⚫︎ケロック自身の能力を把握する。生まれたばかり? の彼には未だ存在として謎な部分が多い。ルシルよりも観察や検証をする時間は多いので、積極的に自身の感覚や動きを掴んでいく。
もちろんケロックは死んでいて、頭の血の巡りが悪いので・・・・・
(【天の声】さん記憶した?)
『スキル使いが荒いですね、そういうシステムですから別にいいんですけど』
とっても便利なスキル【天の声】に覚えてもらったのであった。
(多分今はルシルさんとやらが僕の家族? に上手く説明してくれてるだろうから、僕らはその間どうすればいいと思う?)
『とりあえず歩行練習でもしたらどうです? どのくらい動けるか把握しとくのもお約束のうちに入っていたでしょう』
(そうだね、それぐらいできないと色々と迷惑かけそうだし)
えっちらおっちらと椅子から降りて、床に足をつけた後、ゆっくりと椅子から手を離してみる。
少しふらつきはあるものの、確かに二本の足で立ててはいるようだ。
(どう?)
『この調子でしたら歩行自体に問題はなさそうですね』
(よっしゃ歩こう)
そう思い右足を上げ・・・・・ようとして体が傾いたので、あわてて足を出した。
ずだん! と音を立てて床を踏む。
(お、おおおおおおお!?)
『この一歩は小さな一歩だが、ゾンビにとっては大きな進歩である』
一人と一スキルの静かな盛り上がりに、もう一歩踏み出そうと試みる。
『前に体重をかけるんですよ』
(あっ、なるほどね)
言われた通りに体を前に傾けて・・・・・
びったーーーーーーん!!!!
ケロックは顔面ごと床に叩きつけられたのである。
(痛っ! ・・・・・くはない)
『まだ痛覚はないようですね。というより、左足を上げましたか?』
(あ、忘れてた)
踏み出す足がなければ転ぶのは必然である。どうやらまだまだ練習が必要なようだ。
ケロックが顔を上げると、鼻から何かか流れていくのを感じる。
(もしかして鼻血? 僕死んでるけど、これって止まるの?)
『称号【フレッシュイモータル】の効果により自己再生が行われるはずです。多分・・・・・』
(多分て)
(そもそも痛覚とか他の感覚スキルってどうやったら目覚めるの?)
『そもそもスキルとはその人の能力や思いが形になり、名前がつくものです。今の感覚スキルが目覚めたのに、きっかけなどがあるものと思われます』
きっかけ、ね。そう独りごちて、視覚・聴覚・触覚・平衡感覚・深部感覚、5つの感覚スキルを手に入れたときのことを、ケロックは思い返していた。
最初の感覚がわからないので、知りたいと思ったら【触覚】【平衡感覚】【深部感覚】を得た。
周りの情報が欲しいと思ったら【視覚】【聴覚】を得た。ならば・・・・・
(味覚が戻ったらうどんが食べたい)
『ただの願望じゃないですか』
(今まではその願望で感覚が戻ったんだけど、うーん、戻んないなぁ)
『急ぐ必要はないので気長に頑張りましょう』
(そうだね、正直味覚とか後回しでいいし)
「ちょっとケロちゃん何してるの!」
新たな騒動の火種が金切り声をあげた。
・用語
『心眼の水晶』
神官の儀式によって、対象の加護などを覗き見ることができる道具。
条件によって情報量が変わる。
『加護』
スキルともいう。特定のアイテムで見ることができる名前のついた能力。
神様からの贈り物とされているが、詳細は不明。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる