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パートナーの秘書と鼎談
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婚姻届にサインをして。
しばらくしたら、マンション下にたむろっていたマスコミはいなくなっていた。
「広告を総て引き上げる、と言えばマスコミは黙るものだ」
篠塚さ……じゃなかった、賢吾さんは。資本主義はありがたいね、と言った。
株主や、CMを流すスポンサーはマスコミにとって大切なのである。
なるほど、その手があったか。
役所などの書類も、代理を頼む、というサインをしたくらいで。
ほとんど秘書の人がやってくれたそうだ。
名前が変わっても、特に誰からも突っ込まれなかった。
普段PNで呼ばれてるからかな?
★☆★☆★
「秘書が、私のハートを射止めた君を、どうしても見たいというのだが……」
何で、そんな嫌そうに言うのかな。
「え、書類のお礼も言いたいし。いいけど……?」
「私の珠玉の宝石を、他人に見せたくないのだ」
たまに近所のコンビニくらいなら、出かけてたけどな。
「あ、でも人に会うのにちゃんとした服、あんまりないや」
普段着はシャツにジャージとか、どうでもいい格好だ。
久しぶりに買った服がセーラー服という悲しみ。精液でどろどろになったので捨てられたし。
会社員でもないのに、スーツでお出迎え、っていうのも変だよな。
スーツは一回だけ参加した出版社のパーティーで着たきりで。ずっとクローゼットに下げっぱなしだ。
通販で何かいいのはないか、調べに行こうとしたら。
抱き寄せられてしまった。
「その服は、私が贈ろう」
「え、いいよ。服くらい、自分で買えるし」
今は休職中みたいな感じだけど。印税は入ってきてるし。
「……自分が贈った服を、淫らに脱がせてやりたい、と思ったことはないのかね?」
困ったような顔をしている。
ああ、エロ漫画でよく見るシチュエーションだよね、それ。
リアルで言う人、居るんだ? ここに居た。
「じゃあ、有り難く貰っとく。それで、えっちに脱がせてね?」
賢吾さんの頬に、キスをした。
「ああ、勿論だ」
★☆★☆★
いや、有り難く貰うって言ったよ? 言ったけどさ。
いくらなんでも、デザイナーが出張して来て、細かく採寸までして。
デザインから何から、上から下までフルオーダーになるとか思わないじゃん?
おいくら万円掛かるの!? いやもう考えたくない。
バレンティーノとかさあ。ファッションに縁のないぼくですら知ってる、超有名デザイナーズブランドだよ? シャツ一枚が何十万とかの世界だよこれ。
高校時代のジャージに一枚五百円のへろったTシャツなんて姿で採寸させてしまってごめんなさい。
甘い感じと硬めなのや柔かいの、とか、賢吾さんと謎の会話をして。
デザイナーは去った。感じのいいひとだったなあ。
しばらくして。
篠塚家のクローゼットに、沢山の箱が届けられたのだった。
一着じゃないのかよ!?
どれもサイズはたいへんぴったりで肌触りが良く、スタイリッシュな服だったけど。
こんなに服貰っても、外出しないよ?
まさか、着せて脱がすだけなのに。こんなに買ったの!?
もったいなさすぎるよ!
などと泣いてる間に、賢吾さんの秘書が到着したようだ。
うわあ、緊張する。
★☆★☆★
「S&M・E・C CEO専属秘書の伊丹 志信です。どうぞお見知りおきを」
きっちりしたスーツの、仕事ができそうなイケメン眼鏡が名刺を差し出してきたので、両手で受け取った。
「すみません、お返しできる名刺がなくて」
出版社の新年会にも顔を出さないので、必要を感じなかったのだ。
「お名前は存じ上げておりますので。実は、篠塚に例の漫画をお報せしたのは私なのです」
「へ、」
真面目で硬そうな印象なのに。
伊丹さんはぼくの漫画の以前からの読者だったらしい。
顔も似ていて、喋り方も上司そっくりだったので、思わず見せてしまったと。
エ、エロ本ですよ? そういうのオープンな職場なの?
「え、よく感想をくれてる『si,』さん!?」
男性で感想をくれる人は滅多にいないので、よく覚えている。
細かいとこまで見てるなあ、という印象だった。
「拙い感想で、お恥ずかしい……」
伊丹さんはぼくの単行本も持ってきていて。
頼まれてサインをした。
初版だった。
これ、はじめての単行本で。初版はかなり刷数が少なかったのに。
本当に、ファンなんだ……。
初めて読者をじかに見た。
照れるけど、嬉しいもんだなあ。
★☆★☆★
「何度もお会いしたいとお願いしていたのですが。ようやくお会いできて嬉しいです」
「私の郁を、いびるかと思ったのだ」
ああ、どこの馬の骨が我が社のCEOを誑かしたんだ、って?
外見的には、笑顔で嫌味を言いそうなキャラではある。
中身は違ったけど。
もらった感想から考えるに、繊細な文学青年気質だろうと思う。
「いびりませんよ。姑じゃあるまいし。いびるなら先生より代表をいびります」
私の方がずっとファンだったのに、と拗ねている。
単行本の絵を見て、一目惚れして買ったらしい。
ジャケ買いしたら中身はエロだったけど、どぎつくないし好みだったと。
光栄です……。
賢吾さんは、胸を張って言った。
「ふん、ならば私は、郁のデビュー当時から目をつけていたのだから、私が先だな」
「え?」
デビュー当時って。どういうこと?
引っ越してきて、挨拶した時が初対面じゃなかったっけ?
賢吾さんは、しまった、という顔をした。
★☆★☆★
たまたま誘われて行ってみた、出版社のパーティでのこと。
似合わない、吊るしのスーツを着ている、少女のような顔をした、自分の好みどストライクな子が所在なげに佇んでいた。
これまで知らなかった、何とも形容しがたい気持ちに囚われて。
声を掛けようと思ったら、社長やらなにやらに阻まれ。
気がつけばいなくなっていたという。
運良く、そこに立っていた子を知っている人がいて。
最近漫画家デビューした子だと聞き出し、名前をゲットして住所を調べさせた。
住所を知ったのはいいが。
単行本が爆発的に売れて、忙しいのか、全く外出しない。
さてどうしたものか、と悩んでいるうちに、その子は税金対策にマンションを購入し、引越しをした。
そして。ちょうど、隣の部屋が空いたので。
これはもう運命だと思い、隣に引っ越して。
意気揚々と挨拶に行ったところ。久しぶりに会った、寝不足の顔も愛らしく。
やはりこれは恋だ、と確信したという。
しばらくしたら、マンション下にたむろっていたマスコミはいなくなっていた。
「広告を総て引き上げる、と言えばマスコミは黙るものだ」
篠塚さ……じゃなかった、賢吾さんは。資本主義はありがたいね、と言った。
株主や、CMを流すスポンサーはマスコミにとって大切なのである。
なるほど、その手があったか。
役所などの書類も、代理を頼む、というサインをしたくらいで。
ほとんど秘書の人がやってくれたそうだ。
名前が変わっても、特に誰からも突っ込まれなかった。
普段PNで呼ばれてるからかな?
★☆★☆★
「秘書が、私のハートを射止めた君を、どうしても見たいというのだが……」
何で、そんな嫌そうに言うのかな。
「え、書類のお礼も言いたいし。いいけど……?」
「私の珠玉の宝石を、他人に見せたくないのだ」
たまに近所のコンビニくらいなら、出かけてたけどな。
「あ、でも人に会うのにちゃんとした服、あんまりないや」
普段着はシャツにジャージとか、どうでもいい格好だ。
久しぶりに買った服がセーラー服という悲しみ。精液でどろどろになったので捨てられたし。
会社員でもないのに、スーツでお出迎え、っていうのも変だよな。
スーツは一回だけ参加した出版社のパーティーで着たきりで。ずっとクローゼットに下げっぱなしだ。
通販で何かいいのはないか、調べに行こうとしたら。
抱き寄せられてしまった。
「その服は、私が贈ろう」
「え、いいよ。服くらい、自分で買えるし」
今は休職中みたいな感じだけど。印税は入ってきてるし。
「……自分が贈った服を、淫らに脱がせてやりたい、と思ったことはないのかね?」
困ったような顔をしている。
ああ、エロ漫画でよく見るシチュエーションだよね、それ。
リアルで言う人、居るんだ? ここに居た。
「じゃあ、有り難く貰っとく。それで、えっちに脱がせてね?」
賢吾さんの頬に、キスをした。
「ああ、勿論だ」
★☆★☆★
いや、有り難く貰うって言ったよ? 言ったけどさ。
いくらなんでも、デザイナーが出張して来て、細かく採寸までして。
デザインから何から、上から下までフルオーダーになるとか思わないじゃん?
おいくら万円掛かるの!? いやもう考えたくない。
バレンティーノとかさあ。ファッションに縁のないぼくですら知ってる、超有名デザイナーズブランドだよ? シャツ一枚が何十万とかの世界だよこれ。
高校時代のジャージに一枚五百円のへろったTシャツなんて姿で採寸させてしまってごめんなさい。
甘い感じと硬めなのや柔かいの、とか、賢吾さんと謎の会話をして。
デザイナーは去った。感じのいいひとだったなあ。
しばらくして。
篠塚家のクローゼットに、沢山の箱が届けられたのだった。
一着じゃないのかよ!?
どれもサイズはたいへんぴったりで肌触りが良く、スタイリッシュな服だったけど。
こんなに服貰っても、外出しないよ?
まさか、着せて脱がすだけなのに。こんなに買ったの!?
もったいなさすぎるよ!
などと泣いてる間に、賢吾さんの秘書が到着したようだ。
うわあ、緊張する。
★☆★☆★
「S&M・E・C CEO専属秘書の伊丹 志信です。どうぞお見知りおきを」
きっちりしたスーツの、仕事ができそうなイケメン眼鏡が名刺を差し出してきたので、両手で受け取った。
「すみません、お返しできる名刺がなくて」
出版社の新年会にも顔を出さないので、必要を感じなかったのだ。
「お名前は存じ上げておりますので。実は、篠塚に例の漫画をお報せしたのは私なのです」
「へ、」
真面目で硬そうな印象なのに。
伊丹さんはぼくの漫画の以前からの読者だったらしい。
顔も似ていて、喋り方も上司そっくりだったので、思わず見せてしまったと。
エ、エロ本ですよ? そういうのオープンな職場なの?
「え、よく感想をくれてる『si,』さん!?」
男性で感想をくれる人は滅多にいないので、よく覚えている。
細かいとこまで見てるなあ、という印象だった。
「拙い感想で、お恥ずかしい……」
伊丹さんはぼくの単行本も持ってきていて。
頼まれてサインをした。
初版だった。
これ、はじめての単行本で。初版はかなり刷数が少なかったのに。
本当に、ファンなんだ……。
初めて読者をじかに見た。
照れるけど、嬉しいもんだなあ。
★☆★☆★
「何度もお会いしたいとお願いしていたのですが。ようやくお会いできて嬉しいです」
「私の郁を、いびるかと思ったのだ」
ああ、どこの馬の骨が我が社のCEOを誑かしたんだ、って?
外見的には、笑顔で嫌味を言いそうなキャラではある。
中身は違ったけど。
もらった感想から考えるに、繊細な文学青年気質だろうと思う。
「いびりませんよ。姑じゃあるまいし。いびるなら先生より代表をいびります」
私の方がずっとファンだったのに、と拗ねている。
単行本の絵を見て、一目惚れして買ったらしい。
ジャケ買いしたら中身はエロだったけど、どぎつくないし好みだったと。
光栄です……。
賢吾さんは、胸を張って言った。
「ふん、ならば私は、郁のデビュー当時から目をつけていたのだから、私が先だな」
「え?」
デビュー当時って。どういうこと?
引っ越してきて、挨拶した時が初対面じゃなかったっけ?
賢吾さんは、しまった、という顔をした。
★☆★☆★
たまたま誘われて行ってみた、出版社のパーティでのこと。
似合わない、吊るしのスーツを着ている、少女のような顔をした、自分の好みどストライクな子が所在なげに佇んでいた。
これまで知らなかった、何とも形容しがたい気持ちに囚われて。
声を掛けようと思ったら、社長やらなにやらに阻まれ。
気がつけばいなくなっていたという。
運良く、そこに立っていた子を知っている人がいて。
最近漫画家デビューした子だと聞き出し、名前をゲットして住所を調べさせた。
住所を知ったのはいいが。
単行本が爆発的に売れて、忙しいのか、全く外出しない。
さてどうしたものか、と悩んでいるうちに、その子は税金対策にマンションを購入し、引越しをした。
そして。ちょうど、隣の部屋が空いたので。
これはもう運命だと思い、隣に引っ越して。
意気揚々と挨拶に行ったところ。久しぶりに会った、寝不足の顔も愛らしく。
やはりこれは恋だ、と確信したという。
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