限界オタクだった俺が異世界に転生して王様になったら、何故か聖剣を抜いて勇者にクラスチェンジした元近衛騎士に娶られました。

篠崎笙

文字の大きさ
8 / 61
華麗なる少年王の半生

美貌の勇者、旅立つ

しおりを挟む
「我が君、旅の間、しばしお傍を離れますが。すぐに暴竜を打ち倒し、陛下の騎士として戻ってまいります。どうか、吉報をお待ちください」
勇者アルベルトは、跪いたまま、俺を見上げて告げた。


えー、戻ってくるのかよ。

てっきりこれを機に近衛騎士を辞めるのかと思ってたのに。
まあいいけど。


捧げられた聖剣を受け取り。

「Oratio……susurrus……Gloria……In mente habeatis」
呪文を唱え、刃の先の平たい部分に口づける。


*****


アルベルトの両肩に剣を当て。
再び呪文を唱えて。

剣とアルベルトに”神のデウス加護プレズィディウム”を付与する。


アルベルトの全身が、ぼんやりとした光の膜に包まれた。
それを見て、周囲から感嘆の声が上がった。

魔力の高い王族と、一部の高僧しか使えないという奇跡の御業、神聖魔法である。


必要ないから、と攻撃系の魔法は教えてもらえなかったが。
こういう儀式用の魔法は一通り覚えたんだよな。

だって、魔法がある異世界に来たからには、魔法、使いたいじゃん?
覚えなきゃ損じゃん?

初めてやるので緊張したが。上手くいったようで良かった。


「勇者アルベルトよ。聖剣ヴァルムントにて、暴竜バルバルスを打ち倒し、この世に平和を取り戻してみせよ」

よし!
ひそかに練習した甲斐あって、噛まずに言えたぜ!

アルベルトは心の中でガッツポーズをしている俺の手から聖剣を受け取り。
再び捧げ持った。

「御意、必ずや勝利を御前に」


そうして勇者アルベルトは聖剣を携え。
深紅のマントを翻し、颯爽と旅立って行ったのだった。

魔法使いや僧侶、戦士などの仲間を引き連れて。


……おい。
旅の仲間には”神の加護”かけなくていいのか!?


*****


世界を滅ぼす災厄、暴竜バルバルスの棲まうズューデン・ヴルカンへ討伐の旅に征く、勇者アルベルトと仲間たち。

それを見送る我が妹、リーゼロッテは。恋する乙女のような視線を旅立つ勇者の横顔に向けていた。
いや、”よう”ではなく、恋する乙女そのものか。


アルベルトと出逢ってから、かれこれもう、9年くらいになるのか?

騎士になったばかりのアルベルトが俺の警護についた時。
三人でカードゲームをして遊んだ記憶がある。

思えば、リーゼロッテは初めて会ったその時から、アルベルトに対して憧れの眼差しを向けていたような気がする。
アルベルトはその頃からもう、王子様みたいな美少年だったもんな。

それが、美貌の騎士になって。
現在は選ばれし救世の勇者にクラスチェンジした訳で。

こりゃもう惚れるっきゃナイト!


しかし、そんなに長い間、一人の相手を想っていられるものなのか。
我が妹ながら一途である。

立場が逆なら、変質者とかストーカー扱いされるんだろうけど。
リーゼロッテは美少女だからセフセフ!


認めるのは悔しいが。
アルベルトのやつ、文句なしに格好良いからな。

つい嫉妬して、いっそ実は誰もがドン引きするレベルの変態趣味であれ、などと願ってしまうくらい、非の打ち所がない完璧超人だし。


勇者の鎧姿も凛々しかった。
深紅のマントがあそこまでリアルで似合うのってすごい。

日本人のコスプレだと、どうしても全体的に残念感漂う仕上がりになるからな。
上背と身体の厚みがあるからか? やっぱ体型か……。

八頭身ないと、きついよな……。もうナイトじゃないけど!


*****


城門のところで、アルベルトの姿が見えなくなるまで見送っているリーゼロッテを見て。
ふと、ある可能性に気付いた。


……あれ? もしかして。

アルベルトが、今まで俺の近衛騎士を勤め続けていて、嫁も貰わなかったのは。
他でもない、王女リーゼロッテに惚れていたからだったんじゃないか?

その可能性は、非常に高いな。

俺が王座を継いでからはしばらくずっと忙しくて。最近はなかなか会う時間が取れなかったが。俺の傍にいれば、自然とリーゼロッテにも会えるもんな。
リーゼロッテとはよく一緒にお茶を飲んだり、中庭で軽食とったりもしてたし。

リーゼロッテ付きの近衛騎士は女騎士と決まっているので、一番近くにいるためには、俺の近衛騎士でいたほうが都合がいい。
女騎士の方に惚れてる可能性……は、ないだろうな。

照れてるのか知らないが、女騎士は皆、アルベルトの前ではいつもヘルメットで顔を隠しているから、俺も顔を見たことがない。

素顔を見られた男は殺すか惚れるかの二択しかなかったりして。
って女聖闘士か。


だいたい、あんな可憐な美少女が自分に恋心を向けてるんだぞ?
その気にならない男なんか、この世にいるわけない。

血が繋がった実の妹じゃなければ俺だって……。


いや、ないな。
さすがに赤ん坊の頃から見てる妹に欲情しねえわ。

リアル姉妹がいると、妹萌えはあっても近親相姦モノには食指が伸びなくなるもんなんだな。
なまじ腹から出て来たという生々しい記憶があるせいか、今は喪に服して教会に通っている麗しの未亡人……母上にもピクリともしない。


生前は筋金入りのリョナラーでオタクの中でも最底辺呼ばわりされていた俺にも、まだ人間らしい理性というものが存在していたとはな……。

そういえば、バブみを感じたりオギャりたいのは二次元の相手だけだったし。
死んだり可哀想すぎると萎えるし。

フッ、俺もまだまだリョナラーとしては甘ちゃんだったってわけか。


実際、リアルで血を見たらドン引きするしな! ていうかした。
貧血起こしてアルベルトに介抱された苦い思い出ががが。


妄想と現実をごっちゃにしてはいかんのです。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

【完結】白豚王子に転生したら、前世の恋人が敵国の皇帝となって病んでました

志麻友紀
BL
「聖女アンジェラよ。お前との婚約は破棄だ!」 そう叫んだとたん、白豚王子ことリシェリード・オ・ルラ・ラルランドの前世の記憶とそして聖女の仮面を被った“魔女”によって破滅する未来が視えた。 その三ヶ月後、民の怒声のなか、リシェリードは処刑台に引き出されていた。 罪人をあらわす顔を覆うずた袋が取り払われたとき、人々は大きくどよめいた。 無様に太っていた白豚王子は、ほっそりとした白鳥のような美少年になっていたのだ。 そして、リシェリードは宣言する。 「この死刑執行は中止だ!」 その瞬間、空に雷鳴がとどろき、処刑台は粉々となった。 白豚王子様が前世の記憶を思い出した上に、白鳥王子へと転身して無双するお話です。ざまぁエンドはなしよwハッピーエンドです。  ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

処理中です...