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華麗なる少年王の半生
麗しき少年王、違和感を覚える
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俺が視線を向けたままなので。
ヴァルターが、見るからにオロオロしはじめた。
あ、そうだった。
喉が渇いたから、飲み物を頼もうと思っていたんだった。
「何か、飲み物を頼む」
「はっ、すぐにご用意を」
と、ヴァルターが使用人に飲み物を持ってくるよう指示しているのを見て。
そういえば、いつもは喉が渇いたな、と思う前には飲み物が運ばれてきていたことを思い出す。
あれってもしかして、アルベルトの指示だったのか?
*****
毒物による暗殺を警戒するためか、飲み物を運ぶ時間とかは、毎日特に決めてはいない。
しかし、今にして思えば。喉が渇いたと思ったことも、腹が減ったこともない。
よく気が利くやつだ、とは思っていたが。
そこまで徹底していたとは恐れ入る。
すごいなあいつ。凄腕の執事みたいだ。
しかし、ヴァルターにアルベルト並みの気配りを要求するのは無理そうだ。
そもそも近衛騎士は王様の世話係じゃない。仕事の範疇外だ。
アルベルトがイレギュラーなだけで。
……あれ?
俺、王様なのに。何で専用の世話係がいないんだ?
アルベルトが全部やっちゃうからか?
じゃあ、新しく何人か、世話係を雇わないといけないのか?
手続きとか顔合わせとか。色々面倒だな。
……それも面倒だが、何かあったらいちいち自分で要求するか。
まだそっちの方が楽そうだ。
書類をチェックし終えて。
手紙には封緘を捺して。大臣に渡した後。
手にインクが付いてしまっているのに気付いた。
考え事をしながらだったせいか、注意が散漫になっていたようだ。
「インクで手が汚れた。拭うものを」
「はっ、」
使用人が持って来た蒸しタオルをヴァルターが受け取り、そのタオルを差し出した。
リレーか。
「どうぞ、」
俺は、インクで汚れた手を出したまま。
ヴァルターは俺にタオルを差し出した恰好のまま。しばし固まった。
「……?」
何でそのタオルで手を拭いてくれないのか、と思ったが。
……ああ、そうか。
そうだった。
あいつ、普通に触るからな。すっかり忘れてた。
*****
王族の身は尊いから、とかいう訳のわからん理由で。
よほどのことがない限りは、近衛騎士だろうがそう気安く俺の身体、というか素肌に触れてはいけない、という決まりがあるんだ。
リーゼロッテは現在もそうらしいが。
俺は10歳くらいまで、下着を履くのすら使用人任せだった。
自分で出来るのに。
かといって、自分で全部やっちゃうと使用人の仕事を奪うことになるというのでまいった。しかも、何か気に障ったのかと思われて、リアルで首が飛ぶことになりかねない。
着替えや身体を洗う際には、使用人は貴族の素肌には絶対に触れないよう扱われる。
洋服の採寸も布越しだ。
貴族の使用人も、色々気を遣って大変だと思う。
俺だって、仕事だろうが、着替えとかの世話をされるのは恥ずかしいし。
布越しなのは、なんかバイキン扱いされてるようで、過去の心の傷が疼くんだよ!
ちょっとくらい触れてもいいじゃんか。
減るもんじゃなし。
アルベルトは、身分的には大貴族になるし。一般の近衛騎士とは立ち位置が違うせいもあるかもな。
子供の頃からの馴染みだし。
外国人スキンシップ多いな、とか思って。触れられるのは気にならなかった。
アルベルトが来てからは、自分でやりたいという俺の気持ちを汲んでくれて。
世話役の使用人を下がらせて、他の職をあてがったんだ。
それで、自分で着替えをしたり、警備のため浴室にはいるが、風呂の世話まではされずに済むようになったんだっけ。
ほんと、貴族は色々面倒だ。
*****
物凄く困った顔をしているヴァルターからタオルを受け取って。
自分で手を拭っていたら。
「申し訳ありません。ロイエンタール卿より決して陛下の御身には触れてはならぬと命、」
すまなそうな顔で何か言いかけて。
いっけね、みたいな顔した。
「いや、大丈夫だ。どうやらアルベルトの過保護に慣れ過ぎていたようだな」
笑ってみせると。
ヴァルターは頬を染めた。
おっと、美少年の微笑みは男も惑わすのか。罪な美貌ですまない。
中身は限界オタクですけどね!
今日はアルベルトという比較対象がいないからか。
普段よりも、やけに周囲から視線を感じる気がする。
称賛の眼差しが痛いくらいだ。
フッ、美少年はつらいぜ。
とか言って。
*****
朝だ。
起きたら、カピカピになっていた股間と内腿に気づいた。なんとも懐かしい感覚である。
実に20年ぶりくらいだろうか?
まさかこれが、この身体になって初めての夢精……というか射精では? と困惑する。
嘘だろ。
16歳になって、初めて射精かよ。遅くね?
でも、今まで、朝起きて寝間着を汚していた記憶なんてないしな。
マジで、初めての射精……?
あらヤダお赤飯炊かなくちゃ! 炊かねえ。
思えば、こっちでは誰かに欲情したこともなかったな。
周囲に妹と母親以外の異性がいなかったからか?
周囲に年頃の女性がいないのは、結婚までは清らかであれって予言のせいで人払いならぬ女払いをされているせいだが。
その上、エロ本も同人誌もないしな……。
しかし、今まで正常なる男の生理現象、モーニングスタンダップすらしなかったとは。
何故だ。
この年齢にして、枯れたか?
ヴァルターが、見るからにオロオロしはじめた。
あ、そうだった。
喉が渇いたから、飲み物を頼もうと思っていたんだった。
「何か、飲み物を頼む」
「はっ、すぐにご用意を」
と、ヴァルターが使用人に飲み物を持ってくるよう指示しているのを見て。
そういえば、いつもは喉が渇いたな、と思う前には飲み物が運ばれてきていたことを思い出す。
あれってもしかして、アルベルトの指示だったのか?
*****
毒物による暗殺を警戒するためか、飲み物を運ぶ時間とかは、毎日特に決めてはいない。
しかし、今にして思えば。喉が渇いたと思ったことも、腹が減ったこともない。
よく気が利くやつだ、とは思っていたが。
そこまで徹底していたとは恐れ入る。
すごいなあいつ。凄腕の執事みたいだ。
しかし、ヴァルターにアルベルト並みの気配りを要求するのは無理そうだ。
そもそも近衛騎士は王様の世話係じゃない。仕事の範疇外だ。
アルベルトがイレギュラーなだけで。
……あれ?
俺、王様なのに。何で専用の世話係がいないんだ?
アルベルトが全部やっちゃうからか?
じゃあ、新しく何人か、世話係を雇わないといけないのか?
手続きとか顔合わせとか。色々面倒だな。
……それも面倒だが、何かあったらいちいち自分で要求するか。
まだそっちの方が楽そうだ。
書類をチェックし終えて。
手紙には封緘を捺して。大臣に渡した後。
手にインクが付いてしまっているのに気付いた。
考え事をしながらだったせいか、注意が散漫になっていたようだ。
「インクで手が汚れた。拭うものを」
「はっ、」
使用人が持って来た蒸しタオルをヴァルターが受け取り、そのタオルを差し出した。
リレーか。
「どうぞ、」
俺は、インクで汚れた手を出したまま。
ヴァルターは俺にタオルを差し出した恰好のまま。しばし固まった。
「……?」
何でそのタオルで手を拭いてくれないのか、と思ったが。
……ああ、そうか。
そうだった。
あいつ、普通に触るからな。すっかり忘れてた。
*****
王族の身は尊いから、とかいう訳のわからん理由で。
よほどのことがない限りは、近衛騎士だろうがそう気安く俺の身体、というか素肌に触れてはいけない、という決まりがあるんだ。
リーゼロッテは現在もそうらしいが。
俺は10歳くらいまで、下着を履くのすら使用人任せだった。
自分で出来るのに。
かといって、自分で全部やっちゃうと使用人の仕事を奪うことになるというのでまいった。しかも、何か気に障ったのかと思われて、リアルで首が飛ぶことになりかねない。
着替えや身体を洗う際には、使用人は貴族の素肌には絶対に触れないよう扱われる。
洋服の採寸も布越しだ。
貴族の使用人も、色々気を遣って大変だと思う。
俺だって、仕事だろうが、着替えとかの世話をされるのは恥ずかしいし。
布越しなのは、なんかバイキン扱いされてるようで、過去の心の傷が疼くんだよ!
ちょっとくらい触れてもいいじゃんか。
減るもんじゃなし。
アルベルトは、身分的には大貴族になるし。一般の近衛騎士とは立ち位置が違うせいもあるかもな。
子供の頃からの馴染みだし。
外国人スキンシップ多いな、とか思って。触れられるのは気にならなかった。
アルベルトが来てからは、自分でやりたいという俺の気持ちを汲んでくれて。
世話役の使用人を下がらせて、他の職をあてがったんだ。
それで、自分で着替えをしたり、警備のため浴室にはいるが、風呂の世話まではされずに済むようになったんだっけ。
ほんと、貴族は色々面倒だ。
*****
物凄く困った顔をしているヴァルターからタオルを受け取って。
自分で手を拭っていたら。
「申し訳ありません。ロイエンタール卿より決して陛下の御身には触れてはならぬと命、」
すまなそうな顔で何か言いかけて。
いっけね、みたいな顔した。
「いや、大丈夫だ。どうやらアルベルトの過保護に慣れ過ぎていたようだな」
笑ってみせると。
ヴァルターは頬を染めた。
おっと、美少年の微笑みは男も惑わすのか。罪な美貌ですまない。
中身は限界オタクですけどね!
今日はアルベルトという比較対象がいないからか。
普段よりも、やけに周囲から視線を感じる気がする。
称賛の眼差しが痛いくらいだ。
フッ、美少年はつらいぜ。
とか言って。
*****
朝だ。
起きたら、カピカピになっていた股間と内腿に気づいた。なんとも懐かしい感覚である。
実に20年ぶりくらいだろうか?
まさかこれが、この身体になって初めての夢精……というか射精では? と困惑する。
嘘だろ。
16歳になって、初めて射精かよ。遅くね?
でも、今まで、朝起きて寝間着を汚していた記憶なんてないしな。
マジで、初めての射精……?
あらヤダお赤飯炊かなくちゃ! 炊かねえ。
思えば、こっちでは誰かに欲情したこともなかったな。
周囲に妹と母親以外の異性がいなかったからか?
周囲に年頃の女性がいないのは、結婚までは清らかであれって予言のせいで人払いならぬ女払いをされているせいだが。
その上、エロ本も同人誌もないしな……。
しかし、今まで正常なる男の生理現象、モーニングスタンダップすらしなかったとは。
何故だ。
この年齢にして、枯れたか?
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