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華麗なる少年王の半生

美貌の近衛騎士がいない日々

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おお、我が分身よ。この若さで枯れてしまうとは情けない。


精神年齢はともかく。肉体年齢的には毎日シコってもシコり足りない盛りだろうに。
生前シコりすぎた反動か?

間違いなく、16年間共に過ごした自分の身体である訳だが。
前のと違って、どこもかしこも綺麗なもんだから。何となく、エロいことするのに躊躇するってのはあるかもしれない。


まあ、それは置いといて。


*****


この汚れた寝間着、どうしよう……。

置いておけば、使用人が回収して洗濯してくれるだろうが。
さすがに恥ずかしい。

でも自分で洗うと、最悪、洗濯係の首が吹っ飛ぶからな。リアルで。

平和的に俺の世話役を外したアルベルトは凄いな。
何て言ったんだろう。


仕方ない。そんなモノを回収、洗濯させてしまい、掃除係と洗濯係の使用人には申し訳ないが。
回収して、洗濯してもらおう。

……なにこの羞恥プレイ!


貴族ならではの、貴族あるあるなのか? すげえな貴族!
それが当たり前になっちゃえば平気なのか? 慣れそうにないけど! 俺の心はガラスで出来てるから! 破片が胸へと突き刺さっちゃうし!


まあ、今まで毎朝起こしに来ていたアルベルトに見られるよりはマシだったと思うことにしよう。
知らない人に見られるより、知ってる相手に見られた方が恥ずかしいし。
特にコメントせず、涼しい顔して回収しそうだが。

男なら当然のことですよ? とか。あの完璧なスマイルで慰められたりして。
生殖について説明されちゃったり。

ひい、嫌だそんな羞恥プレイ!


知ってるし! えちえちな知識だけは人一倍豊富ですし!
保健体育はいつでもオール5だったし!


*****


自分で着替えを済ませたら、扉をノックされて。
近衛騎士のヴァルターが来た。


「ご自分で御召替えされたのですか?」
不思議そうに言われたが。

俺には着替え係の使用人、いないし。


ヴァルターは、新たに使用人を増やすかどうかの相談と、今日は自分が着替えを手伝おうと思って早めに来たようだ。

やっべ、セーフ! 今日は早めに目が覚めて良かった……!
危うくヴァルターに夢精を発見される、という黒歴史を作るところだった。

こっちでは黒歴史を作らないよう、日々努力してきたというのに……!
台無しになるところだった。


「アルベルトに頼まれたのか?」

ヴァルターはビシッと背筋を伸ばした。
「いえ、ロイエンタール卿は、陛下はご自分のことは全てご自分でなされるので必要はないと仰られておりました。しかし、ご不便ではないかと思いまして……」

「いや、不便はない。今のままで問題はない」


俺にも羞恥心くらいある。
いくら今の身体は美少年でも、心はヒッキーなままなのだ。

男同士だろうが使用人だろうが、堂々と裸体をさらす勇気はない。
今の肉体に、自信がないわけでもないんだが。魂に染み付いた癖のようなものか。


「で、今日の予定は?」

「は、はいっ、只今確認してまいります!」
ヴァルターは慌てて部屋を飛び出した。

落ち着きのない奴だ。


王様の警護をする近衛騎士が、仕事の予定を調べないでどうするんだ。
全く。


*****


今日も今日とて王様としての職務をこなすが。

何事も滞りなく、とはいかなかったのは。
俺がまだまだ未熟なのが問題か。

はたまた優秀なアルベルトのサポートがないせいか。


ヴァルターもまだ俺に慣れず、ぎくしゃくした態度だし。
いくら俺が花も恥じらう美少年でも、ちょっと目が合っただけで顔を真っ赤にしてあわあわするのはやめて欲しい。慣れろ。

何だか苦労が倍になった気がする。


いなくなって気付いたが。
アルベルトには今まで、かなり苦労をかけていたようだ。

褒章とかは財務大臣の管轄なので、給料はどれくらいなのか知らないが。ボーナスとか、上げてやりたい。


とにかく。
アルベルトが戻ってきたら、今までの礼を言って。労ってやらないとな。


*****


一週間経ったが。
勇者アルベルト一行はまだ帰ってこなかった。


暴竜バルバルスの棲む火山地帯、ズューデン・ヴルカンからは、未だ噴煙が上がり、ドラゴンの鳴き声が聞こえるという。

聖剣ヴァルムントですら一撃で斃せないような強敵だったのだろうか。
楽観的に考えすぎたか?


勇者が生還することは、予言でわかっているのだが。

そういえば、五体満足で帰ってくる、とまでは言及されていなかった。
満身創痍の状態で帰ってくる可能性もあったのか。


リーゼロッテは、毎日教会でアルベルトの無事を祈っている。

俺も一緒に祈りたいところだったが。
俺の仕事は国王であり、勇者が戻ってきたら望みの褒章を与えなければならない。

今俺がすべきことは、お祈りではない。
自分の仕事をして、できるだけ国の利益を上げることだ。

……やべえ、俺かっこいい。仕事ができる男っぽい!


イーラー・マイェステート、お飲み物はいかがでしょうか」
声を掛けられて、きりっとした顔を向ける。

「ああ、ちょうど喉が渇いていたところだ」


いい加減、ヴァルターも学習したか。
タイミングを見計らって飲み物を出したり、手が汚れた時は手を拭うタオルを出すことを覚えたようだ。

まあ騎士の最高峰、近衛騎士になるくらいなので、決して馬鹿じゃないからな。


微笑みかけると、相変わらず動揺するが。
面白いのでよしとする。


そんなこんなで。

最初は違和感があったものの。
ようやくアルベルトのいない生活に、いくらか慣れてきたのだった。
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