限界オタクだった俺が異世界に転生して王様になったら、何故か聖剣を抜いて勇者にクラスチェンジした元近衛騎士に娶られました。

篠崎笙

文字の大きさ
14 / 61
華麗なる少年王の半生

褒章授与式にて、美貌の勇者が望むもの

しおりを挟む
「勇者アルベルト・フォン・ロイエンタール、前へ」


盛大な拍手と歓声が湧き上がる中。
アルベルトは深紅のマントを翻し、王座の前に足を進めた。

着ていた鎧はボロボロだったので、新しく誂えたピカピカの鎧を身に着けて。
腰には聖剣ヴァルムントを佩いている。

だが、アルベルトの顔に残ってしまった傷跡を見て。
あちこちから嘆いたり、残念がる声が聞こえた。


傷があっても、かっこいいと思うけどなあ。
主人公の顔に傷って、少年漫画ではよく見るし。

……いや、俺の人生は俺が主人公だよな!?


アルベルト自身は、観衆の嘆きもなんのその。
涼しい顔で跪いている。

凄いよな。
俺なんか心臓バックバクだ。

世界中の人が見てるんだぞ、これ。


*****


ドラゴン退治のMVPである勇者アルベルトには、我が国最高の勲章である、特級勲章が与えられる。
宝石がキラキラして綺麗だ。

国王自らの手で、勇者のマントを留めている肩飾りの下に、勲章をつけてやる。
そして、予言により決められている台詞を言う。

「救国の勇者、アルベルト・フォン・ロイエンタール。そなたは我が国だけでなく、この世界をも救った英雄である。何なりと褒美を望むがいい。私が実現可能な望みであれば、叶えよう」


我が妹姫でありディートヘルムの花の妖精、リーゼロッテを花嫁に望むんだろ?
うんうん、知ってた。

もちろん、リーゼロッテの意思も確認するつもりだが。
どうせ両思いだし、何の問題もないだろう。


長年両片思いを持て余してた二人だ。
思わず盛り上がっちゃって、この場でチューとかしちゃったりして。

ヒューヒュー。
世界中継だぞ自重しろ。お幸せに!

兄ちゃん、晴れ晴れとした気持ちでリーゼロッテをお嫁に出すぞ。
でも、たぶん泣いちゃう。だって俺ロリコ……じゃなかった、シスコンだもの。


王座の前で跪いていたアルベルトは、立ち上がって。
凄い速さで俺の目の前に来たと思ったら。

俺の手を、がしっと掴んだ。


……え?
何で俺の腰に手を回してるんだ、お前。

何だか女性をエスコートしてるみたいな感じだな、と困惑していると。

アルベルトは、今まで見たことがないような、何ともいえない表情をして、俺を見て。
それから、皆の方を向いて。

王の間全体によく通る美声で、高らかに告げたのだった。


「私の願いはただ一つ。我が主マインヘア、クリスティアン・フォン・ローエンシュタイン=ディートヘルム陛下をに望みます」


*****


……はい?

誰が。
誰を、花嫁に望むって?


何だか、リーゼロッテじゃない他の誰かの名前が聞こえたような気がするけど。
俺の名前に似てたような気がするけど。

気のせいかな?
うん、多分気のせいだ。

幻聴に決まってる。
だって。いくら俺が美少年でも、男同士ですし。そんな恋愛フラグとか立てた覚えもないですし。
今までお前、そういった態度も取ってなかった、よな?


やはり気のせいだったんだ。そうに違いない。
王様稼業が忙しくて、今頃疲れが出て来たのかな?


辺りはしん、と静まり返っている。

視線だけで周りを見回したら。
皆、あんぐりと口を開けて驚愕していた。

まあ、当たり前だよね!
俺も危うく変顔してしまうところだったよ!


「貴方ですよ、イーラー・マイェステート。どうか、私の花嫁になってください」
「わ、」

手をぐいっと引かれ。
更に腰を引き寄せられて。

アルベルトの顔が、ドアップになる。
傷跡で美貌が損なわれるどころか。むしろ何だか凄みを増して、男前が上がった気がする。


やっぱり綺麗な目してるよなあ、などと感心している場合ではなかった。


*****


「んむ、」
いきなり、むにゅっとやわらかいもので口を塞がれた。


それがアルベルトの唇だということは。
視界いっぱいに接近しているアルベルトの顔で理解できた。

アルベルトは目を閉じているので、綺麗な青藤色の目は見えない。

あ、睫毛長い。
ほんとどこもかしこも完璧に綺麗でムカつくわこいつ。


混乱しつつ、頭の片隅で。
案外男の唇ってやわらかいんだな、と思った。


父上や母上、リーゼロッテから頬にキスをされたことはあった。
騎士から、手袋越しに手の甲にキスをされたことも。

でもそれは、触れるだけの軽いやつで。
あくまでも挨拶、儀礼または親愛の情を伝えるためのものである。


前世から現在まで、口にチューされたことは一度たりともない。
しかも、こんなにガッツリと。

いくらアルベルトが見惚れるほどの美形といえど。
性別は、自分と同じ男である。

まさか自分が美少年に転生したからといって、ちんこついた相手にこんなことをされるとは予想外過ぎた。

同じ日曜日だけど、ジャンルが違うよ! ってコミケちゃうわ!


ああ、魅力過ぎる俺が罪深いのか……って。
ないわ!

最高権力者だぞ、俺!
不敬罪じゃないのこれ!?

何でこんなことになったんだ!? 誰もストップかけないし!


冗談だよな?
どっきりか何かだって言ってよ!


*****


かくして。
全世界のご家庭の鏡にこの授与式が映し出されている、いわば世界中継だというのに。

長年俺の近衛騎士を務めてきた、いわば元部下である救世の勇者アルベルトによって。

衆人環視の中。王様である俺は。
易々とファーストキスを奪われてしまったのだった。


何だこの羞恥プレイ!?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】白豚王子に転生したら、前世の恋人が敵国の皇帝となって病んでました

志麻友紀
BL
「聖女アンジェラよ。お前との婚約は破棄だ!」 そう叫んだとたん、白豚王子ことリシェリード・オ・ルラ・ラルランドの前世の記憶とそして聖女の仮面を被った“魔女”によって破滅する未来が視えた。 その三ヶ月後、民の怒声のなか、リシェリードは処刑台に引き出されていた。 罪人をあらわす顔を覆うずた袋が取り払われたとき、人々は大きくどよめいた。 無様に太っていた白豚王子は、ほっそりとした白鳥のような美少年になっていたのだ。 そして、リシェリードは宣言する。 「この死刑執行は中止だ!」 その瞬間、空に雷鳴がとどろき、処刑台は粉々となった。 白豚王子様が前世の記憶を思い出した上に、白鳥王子へと転身して無双するお話です。ざまぁエンドはなしよwハッピーエンドです。  ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

処理中です...