限界オタクだった俺が異世界に転生して王様になったら、何故か聖剣を抜いて勇者にクラスチェンジした元近衛騎士に娶られました。

篠崎笙

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近衛騎士、勇者になる

自覚した想い

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何故、マルセルとクラウスのように、その場で治療されなかったのですか?

何故、私の部屋で。近衛騎士をも追い出し、二人きりになさったのですか?

何故、他の者にさせず、御自らの手で治療されたのですか?


その肩を掴み。
問い詰めたい気持ちを堪えた。

もしかすると。陛下ご自身すら、ご自分の気持ちを自覚されておられないのかもしれない。


私は。
今更ながら、ようやく気付いた。

自分が心の内でずっと抱いていた、自覚していなかった、本当の気持ちに。


私が陛下に抱いているのは。
生涯お仕えする対象への敬意だけではないことを。


*****


何故、一度会ったきりの3歳の子供に、あれほどまで心惹かれたのか。

何故、他の候補を蹴落としてでも近衛騎士になりたいと願ったのか。

何故、休みを返上しても、お傍に居たかったのか。

何故、精通されたことを隠そうとしたのか。

何故、毎日寝室へ通い、子種を奪っていたのか。


眠っておられる愛らしいそのお顔に口づけをしたのは一度や二度ではなかった。
額や頬だけではなく、唇にまで。

あの行為に、全く下心が無かったとは言えない。


何故、自分以外が陛下の御身に触れることを、あれだけ腹立たしく思ったのか。

何故、陛下と二人きりで暮らしたいという願いを持ったのか。


それは。
私はクリスティアン陛下を、身の程知らずにも。

敬愛だけではなく。
性の対象として見ているからだ。


私は陛下を。
一人の人間として、どうしようもなく愛している。


その肌に触れたい。全身余すところなく口づけたい。
抱き締めて。愛撫して。体内を暴き、貫いて。滅茶苦茶に犯し尽くしたい。

気が狂うほどに、愛している。

否。
私はもうすでに狂っているのだろう。


陛下に、異常なほど執着しているのだから。


*****


陛下はそっと、私の顔を覆っていた包帯を外され。

私の顔を覗き込み。
安堵したような顔をされた。


「……少々傷が残ってしまったが。元より男前が上がったかもしれんな?」
まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべられた。

自分の顔に触れ、傷を確かめてみる。
手触りからすると、額から眉にかけて、後は頬に爪痕が残っているようだ。


陛下の神聖魔法は素晴らしい。
不治のはずの傷が、ここまで回復するとは。

しかし。
「近衛騎士に戻れるくらいの傷でしょうか……」

近衛騎士は、ある程度の家柄も必要だが。
見た目の良さも必要とされる。

「そのくらい、容易だろう。しかし、お前はもはや救世の勇者となったのだから。今更、私の近衛騎士に戻る必要はないだろう」


”私の騎士”と仰ってくれた。

それなのに。
騎士に戻れとは言ってくださらないのか。


「このような怪我を負ってまで、叶えたい望みとは……、」
憂い顔で問われる。


叶えたい望みがあったから、竜を斃しに行ったのではない。
竜や、貴方を狙う輩からの脅威より、貴方をお護りしたかったからだ。

私のせいでそのように、憂いた表情などさせたくなかった。


「それは……、」
起き上がろうとしたのを、手で制された。

「ああ、今は言わなくて良い。望みは明日の褒章授与式で聞かせてもらおう。……竜との戦闘の上、転移魔法を使って疲れただろう。今日はゆっくり休め」

そのまま寝ているよう、申し付けられた。


疲れてはいなかった。
むしろ、興奮を覚えているくらいだが。

私は仰せの通り、しばらく寝台で身体を休めることにした。


*****


私の望み。

再び陛下の近衛騎士に戻るよう、お願いするか?
しかし。

近衛騎士に戻れ、と言って下さらなかったのは。
もしや、私の行っていたことに気づかれたのではないだろうか。


竜の討伐に出て、十日以上経過していた。
私がいない間、何事もなく過ごされただろうか?

正常な男子であれば、精が溜まっているだろう。
さすがに今まで床を汚さなかったのはおかしい、とお気づきになっても不思議はない。

思えば、私に対する態度が。以前と違ってはいなかったか?


起き上がり。
洗濯専門の使用人のところへ足を運び、訊いてみた。

一度だけ、お床を汚されたという。

精通されたことを報告するべきか悩んだが。
報告する相手が思いつかなかったので、黙っていたそうだ。

本来報告をする相手である先王も亡くなられたし。
どのみち結婚までは清い身体でいなければならない。なので特に騒ぐほどのことでもない、という判断をしたのか。


それ以降は無かったようだが。

まさか、ご自分で処理されたか?
ヴァルターに教わったりされてはいないだろうな。


*****


警護をしていたヴァルターを呼び出した。

「ロイエンタール卿、もうお怪我はよろしいので?」
私が大怪我を負った聞いて、職務が終わったら直ちに見舞いに来ようとしていたそうだ。

「ああ。陛下の神聖魔法で回復したのだ。で、留守の間、陛下のご様子は?」

陛下はお着替えなどの支度もご自分で済まされた。
特にお変わりなく過ごされたという。


「そうか。そろそろ陛下がお茶を望まれる頃だ。ご用意して差し上げろ」
「はっ、」

勇者は、近衛騎士よりも立場が上である。
それに、陛下に剣をお返ししていないので、まだ私は近衛騎士筆頭の身分を返上していないのだ。


明日の授与式の段取りなど。
ヴァルター以下、騎士たちに指示しておく。

自分の授与式だというのに、自分で準備をするとはおかしなものだろうが、いつものことである。


騎士たちだけでなく、大臣たちも私が戻ってきたことを喜んでいた。
ヴァルターでは頼りにならなかったのだと。

陛下のことだけを考えて生きてきた私と、ただの近衛騎士を比べる方が間違っているのだが。


ヴァルターも、あれはあれで役に立つのに。
少々憐れに思った。


*****


翌日。
褒章授与式があるので、新調して頂いた勇者の鎧を身につける。赤い外套も新品だ。

鏡で顔を確認してみたが。
爪痕はなかなか目立つものの、勇者の鎧には合うかもしれない。


陛下が、男前が上がったと仰ったのだ。
この傷を隠すつもりなどない。

勇者には褒美として、陛下が実現可能なことならば、何でも望みを言っていいとのことだが。
望みはもうすでに決まっている。


私の望みを申し上げた時。
陛下はどのような表情をされるだろうか?


今から楽しみだ。
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