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秋の国

鈴の音は当分聞きたくない。

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『言い伝えが、まことであったとは。后妃様には大変な失礼を……』
と、土下座するみたいに伏せてるので、起きてもらう。

「皇帝は知らないようだから。知らないなら、そのままでいた方がいいと思う」

あまり事情をわかりすぎてると、のちのち困る場合もあるからなあ。
と、ザラームの時のことを思う。


皇帝が授かった印は、青だったらしい。
黒とか紫とか赤とか、自分より上位の印があることを知らないという。

まあ、自分が一番じゃないと、ブチ切れそうな人ではあるよな。イメージ的に。


ああ、だから、俺の手や胸のこれも”印”だとは思わなかったんだ。
この先の未来で、更に紫もつけられるんだよって言ったら、腰抜かしそうだな。


◆◇◆


この国、というか。
この世界の人は、15歳になればみんな、あの”儀式”をするそうだ。

あの洞窟は、儀式を行うための聖なる場所だって。


弟の儀式は、”白”。
つまり、印を授からなかったらしい。

”印持ち”自体が滅多に現れない稀少な存在だから、仕方ないというけど。

……そう考えると、”夏の国”は、とんでもないとこだったんだな。
黒と赤以外、全色いたわけだし。


でもって。
ここはやっぱり”秋の国”だった。

エセル皇帝が勝手に変な国名を名乗らせてるだけで。
人騒がせな皇帝サマだよ。


『おお、似合うぞ。イチ』

神官に、着替えを借りるという名目で、話をしていたんだけど。
だから、神官に服を借りたわけだ。

でも。
この服、なんかピンク色で、透けてるんだけど。

印は隠れてるから、いいか。
いや、良くない。

普通の男子高校生が着ていい服じゃないよこれ!? 踊り子だよ?

伊豆の踊り子じゃなくて。
ええと、アラブ? というかベリーダンスとか踊りそうな、半裸っぽいほうの踊り子。

中指に指輪っぽいので薄い布を留めてあって、肩でも留まってる。
動くと透けた布がまとわりついてくる。

上着はチョッキみたいなやつで。金の細い首飾りをいっぱいつけて。

腰から垂れてる布で股間は隠れてるけど、足は透けて見えてるし。
足首に鈴がついてるし。

動くたび、シャラシャラリンリンうるさいんですけど!


皇帝は、ローブ姿から、なんか立派な服に着替えてた。ずるい。
ルークも制服みたいなの着てる。

ああいうのが良かったんだけどな。


◆◇◆


『……おお、なんと愛らしい……』
むぎゅっと抱き締められた。

しゃらん、と音がする。

あ、皇帝も耳尖ってる。ルークも。
そういう種族なのかな?


『花嫁が初夜に身に着ける衣装を身にまとってきたということは。……いいのだな?』
エセルさん、鼻息荒いです……。

え?
花嫁が初夜に? これが? 何で?


『ああ、夜までなど待っていられるか。今すぐ私のものにする!』
抱き上げられた。

エセルは、動く床みたいのに飛び乗って。
床が、すごい勢いで動き出した。

あ、これ、もしかして魔動ボードってやつ? ラグナルの発明品の。
魔法の絨毯じならぬ魔法のタイルみたいだ。

『ちょ、お待ち下さ、兄上えええええ』

ルークの声が、遠くなっていく。
兄上、聞いちゃいねえよ。


ベッドに寝かされて。
エセルが覆いかぶさってきた。

『このように、胸が高鳴るのは初めてだ……』
長い手足で逃げ道を塞がれてしまう。


出逢ってすぐに押し倒してくる人、俺も初めてだよ!


◆◇◆


……綺麗な目だなあ。きらきらして。

色んな超絶美形見てるけど。やっぱ全然慣れないよ。
ドキドキしちゃうや。

触られても、嫌な感じはしない。なんなんだろうな、この違いは。


『っく、……そのような無垢な瞳で見詰めるな……私は今から、お前を穢そうとしているのだぞ』
「エセルは穢れてんの?」

『え、』
きょとんとした顔をして。


『いや、そうだな。……今からするのは、お互いに、愛を確かめる行為だ』
微笑んだ。

おお、こんな表情もするんだ。


額に、頬に、唇に。キスを落とされる。
くすぐったいくらい、そっと。

『我が寵愛を、最愛の后に贈る』
囁かれて。
耳たぶが、熱くなる。


『……これが、我が后妃の”印”か……』

嬉しそうに見てるけど。
え、どこ? 見えないんですけど!


「ひゃ、」
するり、と腰のスリットから手を入れられて。お尻を撫でられる。

「んん、」
うわ、もう指入ってるし。手が早いな!


指を動かされるたびに、足首の鈴の音が鳴って。

この音を、一晩中鳴らしたいとか言ってるんだけど。
嘘だろ。


そういう、エッチな感じの服だったの、これ!?


◆◇◆


散々鈴の音を響かせて。

『イチ、もう、……いいか?』
こくこく頷いたら。

足首を掴まれて。
エセルの肩に、足を乗せた格好で。


鈴が、しゃりん、と鳴った。

「ひ、……ああっ、」

嘘。
おっきい。

めりめりと、肉を引き裂かれるみたいに。入ってくる。


『く……っ、きつい、』
小刻みに腰を揺すられて。リンリンと鈴が鳴る。

『なんと、素晴らしい……、ねっとりと吸い付いて、絡みつく』

「ひぁ、あ、あっ、」
腰をがっしり掴まれて。ぐいぐいと押し込まれる。

「だ、だめ、お腹、裂けちゃう……、それ以上、入んないよ……」

『ふふ、かわいいことを』
エセルはうっとりと目を細めた。

『この小さな腹がいっぱいになるまで、精を注ぎ込んでやろう』
おそろしいことを言って。


一晩中、鈴の音を鳴り響かせたのだった。
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