異世界で二人の王子に愛されて、俺は女王になる。

篠崎笙

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海瑠の使命

新たな世界での政治について

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二人の美しい王子にエスコートされている麗しい女王の姿は、まるで一幅の絵画のようで。
目にした人々を夢見心地にし、感動させた。

新たに産まれて来る女性のために、立派な女王を演じると覚悟を決めてからの海瑠は、更に見違えるように美しく。
さながら女神のようだと皆は思った。


それにしても。……女の子が生まれるようになる前に、何とかしないといけない問題もあるよな……。
海瑠は避けて通れない問題に、頭を悩ませた。

日本のような世界的に平和とされる国でも、その問題は根深くあった。

DVのような暴力、痴漢、強姦や、差別問題など。
特に、男同士で簡単に子作りが出来てしまうこの世界では、かなりの意識改革が必要だった。

この世界でも、身体を売る男がいたり、乱暴されてしまう事件も少なくないという。
愛が無ければ子は生せないので、望まれない子が産まれる悲劇がないことだけが救いか。


高度な教育を受けているはずの王子たちですら、あれだ。
いくら託宣という理由があっても、無理矢理だったのは事実である。

男の海瑠だって、力づくでこられたら、全く抵抗できなかったのだ。


全員がそうという訳ではないが。
男という生き物は、適度に性欲を発散させてやらないと、爆発してしまう生き物である。

それは暴力衝動であったり、破壊行為に繋がることも多くあり。

死に面した時に性欲が増すことも多いのだ。
戦時中などに痛ましい事件が多発したのも、そういった衝動が原因だろう。


国営で、吉原のような遊郭を作るか? ……後でめちゃくちゃ叩かれそうだけど。
女がいる世界を知ってるだけに、女王の悩みは尽きない。


◆◇◆


「……いっそ、ちんこちょん切る刑にでもするか……?」


『!?』
海瑠の物騒な呟きに、思わずひゅんと縮んでしまった股間を押さえてしまう王子二人がいた。

「あ、いや。女の子が生まれてくる世界になったらさ。最初は大切にされるかもだけど、無理矢理……その、乱暴する男も出てくると思うんだ。そういう奴への罰則はどうしようとか考えてたんだけど……」


クリシュナは、自分の愛娘、シーナを頭に浮かべて考えた。
『我が娘に仇なす者は、極刑に処す』

オーランドも、まだ見ぬ自分の娘を想像していたようだ。
『死刑で良いかと思います!』


「…………」
おまえらおれに何したか覚えてねえのか、というような目で海瑠は二人を見た。

その視線に。
過去、自分たちが海瑠にしてしまった所業を思い出した二人はハッとして、冷や汗をかいた。


『時と場合にもよろう』
『じょ……情状酌量の余地があった場合は、減刑でも、いいですよね?』
二人は不自然に視線を逸らした。

日和ひよりやがった!」


男ってずるい。
すっかり女性側の気持ちになった海瑠だった。


◆◇◆


『あ、女の子が生まれた家には、国から”守り石”を贈るというのは? あの紅い宝石ほどの凄まじい効果はないですが、持つ者を一度だけ守ってくれます。使用されればわかるので、すぐに警備兵を差し向け、暴漢は捕らえられるかと』

「それはいいな!」
オーランドの提案に、海瑠が笑顔を浮かべた。


「じゃ、その前に、戸籍の徹底が必要だな……」

なにせ、その気になれば、ぽこぽこ生まれてくるのだ。面倒くさがって、領主に子の出生を届け出ない民もいた。
女神の加護により、男同士で子が出来なくなれば、変わるのだろうか?

それはそれで、男同士のカップルがかわいそうであるが。


「って、おれもじゃねえか!」
思わず自分で突っ込む。

「新生児が産まれるごとに、祝い金でも……いや、それも祝い金目的での犯罪ってのがあったな……かといって、罰則で縛るのもなあ……」
海瑠は、上に立つ者の苦労を知ったのだった。

新女王の新しい政策。
やるべきことは、山ほどあった。


一年半に及ぶ、ネイディーン国内を周る視察の旅は終わったが。

海瑠は世界の浄化をするために、他、三つの国も巡行することにした。
これはネイディーン国だけの話ではなく、世界の問題でもある。

誰からの反対もなく、視察団はその足で他国へ渡った。


自分は異世界人であるし、女神の加護により、何とか生きていけるのだが。
この世界では、女性は生きていけない。

女神の加護により、自分が歩けば、その後に咲いた花が空気を浄化する。
女性が産まれても生きていける世界にしたい、と説明すると。


エリノア、レティシア、ルクレティア、それぞれの国王は一行を歓迎し。

巡行ための援助や協力を惜しみなくしてくれただけでなく。
女性が生まれた後の政策についても、相談に乗ってくれたのだった。


◆◇◆


もうすぐ、当たり前に女性の産まれる世がやってくる。


麗しい女王と、その伴侶になる王子たちの巡行により、国民の期待が高まっていった。
女王の訪れは、どこでも好意を持って迎えられた。

彼らの訪れは、繁栄と幸福を伴う、という噂はもはや事実だと認識されていた。
実際に、女王一行が訪れた地が発展していったのだから。

一行の通った後には花が咲き、芳しく清浄な空気を残していく。


ネイディーンの麗しき花の女王。

女王を見た全ての国民は皆、海瑠をそう呼んだ。


全国を巡る旅が終わり、ネイディーン城に帰りついた頃。

ニ人の王子は二十歳を迎えていた。
美しさに精悍さを加えた顔立ちとなり、大人の落ち着きも見せた、立派な青年の姿があった。


35になった海瑠は、来たときと全く変わらないどころか、美しさを増しており。
出迎えた海神の神官をたいへん驚かせた。

『やはり、カイル様は救世の女王だったのですね』
神官は感動の涙を流し、喜んだ。


留守を預かっていた元国王も、愛する妃である二人の騎士と共に、一行の帰りを喜び迎えたのだった。
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