6 / 24
どうやら俺が伝説の僧侶だったようです。
『伝令! 敵襲です! 結界に綻びが……!』
兵士が飛び込んできた。
『すぐ側まで、ゴーストが押し寄せてきています! その数は……千、2千……、ああ、駄目だ、あんなに増えて……!』
兵士の声が、恐怖に震えている。
勇者は、果敢にも立ち上がろうとして。がくりと崩れた。
次元移動というのは、とてつもなく生命力を削るものらしい。
そんな苦労をして、わざわざ異世界へ迎えに行ったというのに。
まさか、勘違いだったとは。
つい、差し出された手を取ってしまった俺が悪い。
連れて来られたはいいが、役に立てないというのが悔しい。
申し訳ない思いでいっぱいになる。
俺が何か、特別な力でも持っていればいくらでも手を貸すのだが。
無力なのが口惜しい。
「波ー、とか言って、悪霊を蹴散らせる力があればよかったのだが。すまない」
と。
”波ー”と言った時点で、何かが出た。
俺の手から、眩いほどの光が溢れ出たのだ。
◆◇◆
……え。
今、何か光ったか? 手から光が出たように見えたが。
いやまさか、人間の手から光が放たれるとか。物理的にありえないだろう。
蛍とかじゃあるまいし、発光体も持っていないんだぞ。ルシフェラーゼ、だったか? 中二心をくすぐるネーミングだったな……。
思わず、自分の手を見る。
何も変わりはない。
普通に俺の手だ。竹刀で出来た、たこがあるくらいで。
『伝令! 一帯にいたゴーストが全て、消滅しました! 全てです!』
兵士が報告に来る。
絶望に打ちひしがれていた先程とはうってかわって、喜びに打ち震えている。
ゴースト全てが消滅したのか。
それは良かった。
……いやいや。
冗談だろう? 何だこの展開。
『先ほどの”清浄なる光”で暗雲が晴れ、光が差してます! 二十日ぶりの日光です!』
喜色満面の兵士たちが飛び込んできた。
”清浄なる光”?
なんだそれは。何かの技の名前か?
『いらっしゃったのですね、救世主が!! 我等がゼンショー様が!』
喜びの声。
まさか。
先程の、眩いほどの光。
あれを。
俺が、やったというのか?
◆◇◆
『は、ははは。……いやはや、冗談を言って驚かすとは、ゼンショー様もお人が悪いですな』
ワルターに、バシンと背中を叩かれた。わりと痛かったのだが。
……嘘だろう?
本当に、俺がやったのか?
『さすがは伝説の僧侶です! ……あんなにやる気のなさそうな覇気のない一撃で、数千ものゴーストを昇天させるとは……!』
レオナルドは頬を染め、キラキラした瞳で俺を見ている。
やる気はなかった。
本当に、なかったのだ。
まさかそんな。
自分の手から、得体の知れない力が出るなどと、思いもしなかったのだから。
テオは。
俺を見て、ほっとしたように笑った。
まあ、安心したなら、良かった、……のだろうか。
納得いかないが。
何だ?
……眩暈がしてきた。
どういうことだか、意識が遠くなっていく。
『……ゼンショー様?』
『ゼンショー殿、いかがなされた!?』
うるさい。
俺の名前は、善正だ。
そんな坊主っぽい名前じゃないと、何度言ったら。
◆◇◆
「……ん、」
ヌチュ、ヌチュ、と。
肉をこねるような音がする。
ああ、そうだった。
今日の夕食はハンバーグだったのだ。
豆腐ではなく、合いびき肉の。
寺だからか、寺子たちの修行に付き合わされて。基本的に我が家は精進料理が多いのだ。
俺はまだまだ育ち盛りだというのに。
久しぶりの肉だったのに。内心、かなり楽しみにしていたのに。
肝試し、などというくだらない遊びで夕食を妨害されて業腹である。
後で卓也には懇々と説教をしてやらねばなるまい。
来年は受験だというのに、大切な高校二年の夏休みを何だと思っているのだ。
宿題は終わったのか?
夏休みの宿題というのはだいたい7月中に終わらせておき、後は予習をするものだろう。
いいか? 勉強というのは、毎日の積み重ねがだな。
……それにしても、おかしな夢を見たものだ。
西洋の甲冑を身に着けた、俳優かと思うような美貌の男に手を差し出され。
異世界に召喚されて。
美貌の騎士や精悍な剣士にも頼られる、伝説のヒーロー扱いされるという展開だった。
女性のやるゲームか何かのような設定だ。
この俺に、悪霊を祓う力があるなど、滑稽な。
幽霊など、存在するわけがないだろう。
ラノベ好きな鈴木にでも影響されたか? それともゲーマーな前田か?
しかし奴らなら、美貌の男たちに囲まれるのではなく、肌もあらわな美女軍団に囲まれたい、と願いそうである。
若い男なら、それが当然だろう。
◆◇◆
「ぁう、……っ、う、っく、」
何故、身体がぐらぐらと揺れている感覚があるのだろうか。
荒れた海の船にでも乗っているのか?
とても、眠い。
身体が、鉛のように重い。
脱力するような。
とても疲れているような、そんな感じだ。
前に、自分の体力の限界を知るために、倒れる寸前まで練習をしたことがある。その時と似ている。
瞼も開かない。
指先一つ、動かすことすら。
……俺は眠いんだ。
まだ、寝ていたいのだが。何故、そうも身体を揺らすのか。
いい加減、揺するのをやめろ。
兵士が飛び込んできた。
『すぐ側まで、ゴーストが押し寄せてきています! その数は……千、2千……、ああ、駄目だ、あんなに増えて……!』
兵士の声が、恐怖に震えている。
勇者は、果敢にも立ち上がろうとして。がくりと崩れた。
次元移動というのは、とてつもなく生命力を削るものらしい。
そんな苦労をして、わざわざ異世界へ迎えに行ったというのに。
まさか、勘違いだったとは。
つい、差し出された手を取ってしまった俺が悪い。
連れて来られたはいいが、役に立てないというのが悔しい。
申し訳ない思いでいっぱいになる。
俺が何か、特別な力でも持っていればいくらでも手を貸すのだが。
無力なのが口惜しい。
「波ー、とか言って、悪霊を蹴散らせる力があればよかったのだが。すまない」
と。
”波ー”と言った時点で、何かが出た。
俺の手から、眩いほどの光が溢れ出たのだ。
◆◇◆
……え。
今、何か光ったか? 手から光が出たように見えたが。
いやまさか、人間の手から光が放たれるとか。物理的にありえないだろう。
蛍とかじゃあるまいし、発光体も持っていないんだぞ。ルシフェラーゼ、だったか? 中二心をくすぐるネーミングだったな……。
思わず、自分の手を見る。
何も変わりはない。
普通に俺の手だ。竹刀で出来た、たこがあるくらいで。
『伝令! 一帯にいたゴーストが全て、消滅しました! 全てです!』
兵士が報告に来る。
絶望に打ちひしがれていた先程とはうってかわって、喜びに打ち震えている。
ゴースト全てが消滅したのか。
それは良かった。
……いやいや。
冗談だろう? 何だこの展開。
『先ほどの”清浄なる光”で暗雲が晴れ、光が差してます! 二十日ぶりの日光です!』
喜色満面の兵士たちが飛び込んできた。
”清浄なる光”?
なんだそれは。何かの技の名前か?
『いらっしゃったのですね、救世主が!! 我等がゼンショー様が!』
喜びの声。
まさか。
先程の、眩いほどの光。
あれを。
俺が、やったというのか?
◆◇◆
『は、ははは。……いやはや、冗談を言って驚かすとは、ゼンショー様もお人が悪いですな』
ワルターに、バシンと背中を叩かれた。わりと痛かったのだが。
……嘘だろう?
本当に、俺がやったのか?
『さすがは伝説の僧侶です! ……あんなにやる気のなさそうな覇気のない一撃で、数千ものゴーストを昇天させるとは……!』
レオナルドは頬を染め、キラキラした瞳で俺を見ている。
やる気はなかった。
本当に、なかったのだ。
まさかそんな。
自分の手から、得体の知れない力が出るなどと、思いもしなかったのだから。
テオは。
俺を見て、ほっとしたように笑った。
まあ、安心したなら、良かった、……のだろうか。
納得いかないが。
何だ?
……眩暈がしてきた。
どういうことだか、意識が遠くなっていく。
『……ゼンショー様?』
『ゼンショー殿、いかがなされた!?』
うるさい。
俺の名前は、善正だ。
そんな坊主っぽい名前じゃないと、何度言ったら。
◆◇◆
「……ん、」
ヌチュ、ヌチュ、と。
肉をこねるような音がする。
ああ、そうだった。
今日の夕食はハンバーグだったのだ。
豆腐ではなく、合いびき肉の。
寺だからか、寺子たちの修行に付き合わされて。基本的に我が家は精進料理が多いのだ。
俺はまだまだ育ち盛りだというのに。
久しぶりの肉だったのに。内心、かなり楽しみにしていたのに。
肝試し、などというくだらない遊びで夕食を妨害されて業腹である。
後で卓也には懇々と説教をしてやらねばなるまい。
来年は受験だというのに、大切な高校二年の夏休みを何だと思っているのだ。
宿題は終わったのか?
夏休みの宿題というのはだいたい7月中に終わらせておき、後は予習をするものだろう。
いいか? 勉強というのは、毎日の積み重ねがだな。
……それにしても、おかしな夢を見たものだ。
西洋の甲冑を身に着けた、俳優かと思うような美貌の男に手を差し出され。
異世界に召喚されて。
美貌の騎士や精悍な剣士にも頼られる、伝説のヒーロー扱いされるという展開だった。
女性のやるゲームか何かのような設定だ。
この俺に、悪霊を祓う力があるなど、滑稽な。
幽霊など、存在するわけがないだろう。
ラノベ好きな鈴木にでも影響されたか? それともゲーマーな前田か?
しかし奴らなら、美貌の男たちに囲まれるのではなく、肌もあらわな美女軍団に囲まれたい、と願いそうである。
若い男なら、それが当然だろう。
◆◇◆
「ぁう、……っ、う、っく、」
何故、身体がぐらぐらと揺れている感覚があるのだろうか。
荒れた海の船にでも乗っているのか?
とても、眠い。
身体が、鉛のように重い。
脱力するような。
とても疲れているような、そんな感じだ。
前に、自分の体力の限界を知るために、倒れる寸前まで練習をしたことがある。その時と似ている。
瞼も開かない。
指先一つ、動かすことすら。
……俺は眠いんだ。
まだ、寝ていたいのだが。何故、そうも身体を揺らすのか。
いい加減、揺するのをやめろ。
あなたにおすすめの小説
家に帰ったら、妻は冷たくなっていた。突然シングルファザーになった勇者パーティーの治癒師は家族を修復したい
八朔バニラ
ファンタジー
勇者パーティーに所属し、魔王討伐した治癒師(ヒーラー)のゼノスは街の人々の歓声に包まれながら、3年ぶりに家に帰った。家族が出迎えてくれると思ったが、誰も出迎えてくれない。ゼノスは不満に思いながら家に入ると、妻の身体は冷たくなっていた。15歳の長男ルミナスはゼノスの代わりに一家の柱として妹を守り抜き、父に深い拒絶のこもった瞳を向けていた。そして、8歳の長女ミリアは父の顔も忘れていた。
ゼノスは決意する。英雄の肩書きを捨て、一人の不器用な父親として、バラバラになった家族の心を繋ぎ合わせることを。
これは世界最強の治癒師が家族を修復する物語である。
陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)
ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。
僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。
隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。
僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。
でも、実はこれには訳がある。
知らないのは、アイルだけ………。
さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!