底辺オタクがチート性能ガチ盛りなフタナリ美形に転生~魔法王国の王様に俺はなる!

篠崎笙

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美しき伯爵の野望

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次期国王の座を巡って、こうして命を狙われる羽目になるとはな。

俺がいた、三階にある寝室のベランダの手すりには、体重をかけると崩れる魔法がかけられていたんだ。下は石畳。天井が高いため、普通の三階よりもずっと高い。
運が悪ければ、即死していてもおかしくなかった。


猫足の、広めなバスタブに魔法で湯を張り、ぬるめの温度にした風呂に浸かりながら食事を摂った。
血でお湯がピンク色に染まったので、アンドレがまた涙目になっていたが。

二度ほど洗い流し、新しく綺麗な湯を張ってもらったので快適だ。


*****


林檎の搾り汁ジュドゥポムのおかわりはいかがですか?」

キラキラした笑顔でジュースを勧められる。
全てアンドレの生絞り、手作りである。


「いや、もういい。……いつもありがとう。アンドレ」
空になったグラスを渡す。

気分は「いつもすまないねえ、」と孫に言う爺さんである。
さすがにそこまでの年齢差じゃない……よな? 頑張れば今の俺くらいの孫ならいてもおかしくないか? やっべ。シャレになんない。


アンドレは、驚いたように目を瞠った。

「どどど何処を強打されたのですか!?」

泡を食ったように、頭に傷が残ってないか、入念に確かめられてしまった。
失礼な。

実際に、頭を打ったというか割ったせいで前世の記憶を思い出してしまったんだが。
といって、アンリとしての記憶を失ったわけでもないので、妙な感じだ。


アンドレが驚くのも無理はなかったりする。

今までは、お礼を言うどころか、ろくに目も合わさず、挨拶すらしなかったからな。
恵まれきった環境にもかかわらず。自分は親から捨てられた子なんだ、とうじうじ悩んで。自分の殻に閉じこもって。
我ながら愛想のかけらもない、陰気な子だったと思う。

それを、仕事とはいえ。献身的に世話してくれていたのだ。

俺が産まれてすぐ世話係に任命されたらしいので、5年もの間。
お礼のひとつくらい言わねば罰が当たるってもんだ。


「そうだな。頭を打って、逆にすっきりした」
にやりと笑ってみせたら。

アンドレは、何故か赤面していた。


*****


その日から、俺はそれこそ生まれ変わったように活動を始めた。
この世界で生き抜くための活動だ。


まず、ベランダの手すりに残っていた魔法の痕跡から、犯人を割り出した。
俺の命を狙っていたのは、現国王の甥、ヴェルソー領の侯爵アレクサンドル=ルイ=ウォルテール派の者だった。

この国は、王が退位した場合、伯爵以上の身分をもつ貴族の中から魔素と魔力、そして政治力の高い者が次の王になることが決められている。

生まれた時点で爵位を与えるのも、領主としての才能を見て、国王に相応しいかどうかを見極める目的もある。
とはいっても、王になるのはやっぱり王の血統が多いんだけどな。血も濃いだろうし。

つまり、先祖代々お貴族様な連中から見れば、ぽっと出なくせに黒色が多くて魔力の高いこの俺は、それこそ目の上の瘤だったわけで。
アレクサンドルを次の王にして甘い汁を吸いたい奴らが、最大のライバルであろう俺の暗殺を狙ったのだ。


この暗殺未遂事件を知った俺の名付け親、現国王オーレリアン・サン=ブランさん、もう激おこ。
手すりに細工をした実行犯と、その命令を下した貴族を魔法で探知し、極刑を下した。その遺体はもう、お子様には見せられない惨状だったらしい。
かわいいって罪ね。とか言って。

当のアレクサンドル本人は、人懐っこくて優しげな坊ちゃんなんだけどな。
周囲が腐ってやがる。


これまで、俺ちゃんは国王になりたい、という意思表明などしたことはなかったが。

ここは、ちょいと異世界の記憶を取り戻した俺が本気を出して、この国の王に君臨するべきじゃないか? んでもって、王宮にはびこる膿を一掃して、新たなる腐海を……じゃなくて。
異世界に、ジャパニーズ・オタクカルチャーを広めるのだ。


だってこの世界、そういう娯楽、一切無いんだもん!
漫画もアニメもない世界なんて物足りないよう! 薄い本を読ませろ!
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