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Ⅶ
美しき国王、結婚する
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結婚式を挙げるため。
城の横にある教会……というか、大聖堂みたいな建物に向かう。
十字架やマリア像みたいなものはなく。
天井に太陽の光の入る大きなガラス窓があって、そこから差し込む光が神様の恵みだという考えらしい。
光源やガラスの厚みや角度とか、色々計算されつくされてるんだろうけど。確かに神々しく見える。
この世界での結婚は、立会人の前で結婚を誓うくらいで他に儀式はないシンプルなものだ。
名字が変わったりもしない。
決まりといえば、結婚前に子作りすんな、くらいかな。
俺たちの結婚の立会人には、俺の名付け親である前国王オーレリアンが名乗りを上げた。贅沢な立会人である。アンドレは歯ぎしりして悔しがってた。
手持ち無沙汰なようなので、アンドレに公式用の映像を撮って欲しいと頼んだら、記録用の魔法石を操るのに夢中になってる。
この映像を、国民に中継するそうだけど。
他人の結婚式なんか見て、いったい何が面白いのか俺にはよくわかんない。
*****
俺とロロはそれぞれ別の扉から大聖堂に入って、部屋の真ん中に差し込んだ光の中で合流する。
近衛騎士に扉を開けてもらい、中に入ると。
参列者から、おお、と声が上がった。
こっちを見て、何やら讃えている声が聞こえる。
美貌の王様だからな。
ここは黒が高貴な色なので、結婚式だというのに黒服だ。
でもって俺は細かいレースのベールを被るから、葬式の未亡人みたいになるんじゃないかと思ったけど。
腰までの短めのマントは、青い石のついたブローチで留めてある。
黒一色ではなく、襟や袖などに金糸の刺繍が入っていてゴージャスな感じ。
これ、前世での自分の目と髪の色のつもりなんだろうな……。
そんな俺たち以外、誰にもわからないような仕掛けして。本当に困ったやつだ。
皆、珍しそうに俺の服を見ている。
ロロの希望で、俺の服だけデザインが違うからだろう。
露出はほぼない。胸のあたりだけフリルやレースがいっぱいで、ふわっとしている他は、身体のラインがわかるようなシルエットのパンツスーツっていうのかな?
スカートじゃなくてよかった。
ロロは、長いマントに銀糸の刺繍が入った襟の高い軍服のような、かちっとしたデザインだ。長い革のブーツも格好いい。
こうして真剣な顔をして黙っていれば、クールでストイックな美形なんだけど。
エロエロ大魔神な上、残念なオタク英国紳士だなんて、誰もわからないよな。
俺以外は。
*****
天窓から差し込む光の中、合流する。
眩しいほどの光にも負けないような美貌。立派な体躯。
本当に、この男と結婚するなんて信じられない。
ロロの方も、同じようなことを考えているのが、俺を見ている目でわかった。
「見つめ合うのは、儀式の後でゆっくりと」
コホンと咳払いをした、立会人である前国王オーレリアンに言われて。
二人で並んで、立会人の方を向いた。
「私、アンリ・アントワーヌ・ガブリエル・ド・ジュスタンはローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェと婚姻を結び、伴侶になることを誓う」
宣言に、立会人が鷹揚に頷いてみせる。
「私、ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェは我が最愛のアンリ・アントワーヌ・ガブリエル・ド・ジュスタンを永遠の伴侶とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、彼を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓う」
今のって。
あっちでの誓いの言葉じゃないか。
初めて聞くだろう宣誓に、立会人は驚いたように目を瞬かせたけど。
素晴らしい、と参列者から拍手されて。
改めて、にっこりと笑顔を浮かべて頷いてみせた。
通常なら、このまま手を取り合って退場するんだけど。
ロロは俺の左手を取って、その場で跪いた。
何だろう。
城の横にある教会……というか、大聖堂みたいな建物に向かう。
十字架やマリア像みたいなものはなく。
天井に太陽の光の入る大きなガラス窓があって、そこから差し込む光が神様の恵みだという考えらしい。
光源やガラスの厚みや角度とか、色々計算されつくされてるんだろうけど。確かに神々しく見える。
この世界での結婚は、立会人の前で結婚を誓うくらいで他に儀式はないシンプルなものだ。
名字が変わったりもしない。
決まりといえば、結婚前に子作りすんな、くらいかな。
俺たちの結婚の立会人には、俺の名付け親である前国王オーレリアンが名乗りを上げた。贅沢な立会人である。アンドレは歯ぎしりして悔しがってた。
手持ち無沙汰なようなので、アンドレに公式用の映像を撮って欲しいと頼んだら、記録用の魔法石を操るのに夢中になってる。
この映像を、国民に中継するそうだけど。
他人の結婚式なんか見て、いったい何が面白いのか俺にはよくわかんない。
*****
俺とロロはそれぞれ別の扉から大聖堂に入って、部屋の真ん中に差し込んだ光の中で合流する。
近衛騎士に扉を開けてもらい、中に入ると。
参列者から、おお、と声が上がった。
こっちを見て、何やら讃えている声が聞こえる。
美貌の王様だからな。
ここは黒が高貴な色なので、結婚式だというのに黒服だ。
でもって俺は細かいレースのベールを被るから、葬式の未亡人みたいになるんじゃないかと思ったけど。
腰までの短めのマントは、青い石のついたブローチで留めてある。
黒一色ではなく、襟や袖などに金糸の刺繍が入っていてゴージャスな感じ。
これ、前世での自分の目と髪の色のつもりなんだろうな……。
そんな俺たち以外、誰にもわからないような仕掛けして。本当に困ったやつだ。
皆、珍しそうに俺の服を見ている。
ロロの希望で、俺の服だけデザインが違うからだろう。
露出はほぼない。胸のあたりだけフリルやレースがいっぱいで、ふわっとしている他は、身体のラインがわかるようなシルエットのパンツスーツっていうのかな?
スカートじゃなくてよかった。
ロロは、長いマントに銀糸の刺繍が入った襟の高い軍服のような、かちっとしたデザインだ。長い革のブーツも格好いい。
こうして真剣な顔をして黙っていれば、クールでストイックな美形なんだけど。
エロエロ大魔神な上、残念なオタク英国紳士だなんて、誰もわからないよな。
俺以外は。
*****
天窓から差し込む光の中、合流する。
眩しいほどの光にも負けないような美貌。立派な体躯。
本当に、この男と結婚するなんて信じられない。
ロロの方も、同じようなことを考えているのが、俺を見ている目でわかった。
「見つめ合うのは、儀式の後でゆっくりと」
コホンと咳払いをした、立会人である前国王オーレリアンに言われて。
二人で並んで、立会人の方を向いた。
「私、アンリ・アントワーヌ・ガブリエル・ド・ジュスタンはローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェと婚姻を結び、伴侶になることを誓う」
宣言に、立会人が鷹揚に頷いてみせる。
「私、ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェは我が最愛のアンリ・アントワーヌ・ガブリエル・ド・ジュスタンを永遠の伴侶とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、彼を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓う」
今のって。
あっちでの誓いの言葉じゃないか。
初めて聞くだろう宣誓に、立会人は驚いたように目を瞬かせたけど。
素晴らしい、と参列者から拍手されて。
改めて、にっこりと笑顔を浮かべて頷いてみせた。
通常なら、このまま手を取り合って退場するんだけど。
ロロは俺の左手を取って、その場で跪いた。
何だろう。
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