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ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェの人生
Mon amour pour toi s’accroît de jour en jour.(あなたへの恋情は日々強くなるばかり)
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国王退位前、最後の舞踏会の招待状が来た。
次期国王候補であるアンリは、さぞ注目されるだろう。
娘を持つ貴族が本気を出してくるに違いない。拉致されて媚薬などを使われないよう、気を付けなくては。
普段、そんな誘惑は俺を盾にして逃げていたが。
ヴェルソー侯を次期国王にと推す一派も、アンリの命を狙ってくるだろう。
貞操だけでなく、命も狙われるとは、人気者は辛いな。
さすがに今回だけは、俺一人では心許ないと判断したのだろう。
アンドレも魔法で変えていた髪の色を戻し、王子として参加して、アンリの警護につくという。
俺とアンドレに対抗し得る剣士はそういないだろうが。念には念を入れて。
*****
「……や、もう、ここを出ないと……、」
色っぽく身もだえるアンリの尻に、腰を叩きつける。
「まだ、大丈夫だ」
俺の精を、たっぷり注いで。
俺の匂いを刻みつけるように摺り込んでやる。
抱いて色っぽくなったアンリを見せるのは、本当に嫌だが。
もうすでにアンリは俺と身体を重ねる関係になったのだと、知らしめなければならない。
俺がアンリの補佐に回ったことは、すでに広まっているだろう。
よほど鈍感でなければ、察するはずだ。
今は、愛人という認識でもいい。
アンリのこの顔を目にすれば。少なくとも、若い娘は近寄って来ないだろう。
後は、その親達を俺が魔力で威嚇するだけだ。
アンリは俺のものだ。
自分でそうなるように仕向けたというのに。
いざアンリが他人から注目された時、自分でも驚くほど腹が立った。我ながら狭量すぎる。
アンドレが髪の色を戻し、王子の服を着ているのを見て。
アンリがそれに対し、似合うと言っていたのにも、苛々してしまった。俺はそんなこと、一度も言われたことがないからだ。
……俺の正装は、似合っていないのだろうか。
その日、ヴェルソー侯アレクサンドルが自らアンリに挨拶をするのに足を運び、自分は元々国王になる気はなく、アンリを応援しているのだと、申し訳なさそうに言った。
なら、周囲にもはっきり意思を伝えて、勝手に動いてる臣下や親戚を止めろ。
そう言いたいが。無理だろうことはわかっている。
この気弱で善良なだけの無能が野心を抱かなくて、本当に良かったと思う。
本気で王を目指したら、身分からして一番有利だからな。
それに、さすがにこのお人よしの侯爵を行動不能なまでに傷つけたり、暗殺するのは気が咎める。
*****
いつもは無理矢理アンリの手を取り、俺と踊ってもらっているが。
今日は体調不良だという名目で、踊るのは中止だと言うと、
皆残念そうな顔をしていた。
自分がアンリと踊れなくても、踊る姿を見るだけで充分眼福だからな。
「……はぁ、」
アンリが気だるげに溜息を吐いた。
わざと、いいところで中断したので、欲求不満なのだろう。
「回復魔法は掛けたが。疲れたのか?」
「…………」
お前のせいだろう、というような恨めし気な視線を向けられた。
「悪かった。城に戻ったら、すぐ続きをしよう。……あんたが満足するまで、たっぷりとな」
と耳元で囁いたら。
みるみるうちに、アンリの色白の頬が、薔薇色に染まった。
だからそんな可愛くて色っぽい顔を、俺以外に見せるな。
自分でそうさせといて、何を言ってるんだという感じだが。
「アンリ様、飲み物はいかがですか?」
「俺がもう渡した。果物も」
アンドレが近寄ってこようとするのを阻止する。
この男、隙を見てはアンリの世話をしようとするから油断できない。
世話係なので、当たり前と言えば当たり前なのだが。
今日は第七王子として参加しているのだ。
王子なら、王子らしく凛とした佇まいで立ってろ。給仕係が困惑しているだろうが。人のことは言えないが。
次期国王候補であるアンリは、さぞ注目されるだろう。
娘を持つ貴族が本気を出してくるに違いない。拉致されて媚薬などを使われないよう、気を付けなくては。
普段、そんな誘惑は俺を盾にして逃げていたが。
ヴェルソー侯を次期国王にと推す一派も、アンリの命を狙ってくるだろう。
貞操だけでなく、命も狙われるとは、人気者は辛いな。
さすがに今回だけは、俺一人では心許ないと判断したのだろう。
アンドレも魔法で変えていた髪の色を戻し、王子として参加して、アンリの警護につくという。
俺とアンドレに対抗し得る剣士はそういないだろうが。念には念を入れて。
*****
「……や、もう、ここを出ないと……、」
色っぽく身もだえるアンリの尻に、腰を叩きつける。
「まだ、大丈夫だ」
俺の精を、たっぷり注いで。
俺の匂いを刻みつけるように摺り込んでやる。
抱いて色っぽくなったアンリを見せるのは、本当に嫌だが。
もうすでにアンリは俺と身体を重ねる関係になったのだと、知らしめなければならない。
俺がアンリの補佐に回ったことは、すでに広まっているだろう。
よほど鈍感でなければ、察するはずだ。
今は、愛人という認識でもいい。
アンリのこの顔を目にすれば。少なくとも、若い娘は近寄って来ないだろう。
後は、その親達を俺が魔力で威嚇するだけだ。
アンリは俺のものだ。
自分でそうなるように仕向けたというのに。
いざアンリが他人から注目された時、自分でも驚くほど腹が立った。我ながら狭量すぎる。
アンドレが髪の色を戻し、王子の服を着ているのを見て。
アンリがそれに対し、似合うと言っていたのにも、苛々してしまった。俺はそんなこと、一度も言われたことがないからだ。
……俺の正装は、似合っていないのだろうか。
その日、ヴェルソー侯アレクサンドルが自らアンリに挨拶をするのに足を運び、自分は元々国王になる気はなく、アンリを応援しているのだと、申し訳なさそうに言った。
なら、周囲にもはっきり意思を伝えて、勝手に動いてる臣下や親戚を止めろ。
そう言いたいが。無理だろうことはわかっている。
この気弱で善良なだけの無能が野心を抱かなくて、本当に良かったと思う。
本気で王を目指したら、身分からして一番有利だからな。
それに、さすがにこのお人よしの侯爵を行動不能なまでに傷つけたり、暗殺するのは気が咎める。
*****
いつもは無理矢理アンリの手を取り、俺と踊ってもらっているが。
今日は体調不良だという名目で、踊るのは中止だと言うと、
皆残念そうな顔をしていた。
自分がアンリと踊れなくても、踊る姿を見るだけで充分眼福だからな。
「……はぁ、」
アンリが気だるげに溜息を吐いた。
わざと、いいところで中断したので、欲求不満なのだろう。
「回復魔法は掛けたが。疲れたのか?」
「…………」
お前のせいだろう、というような恨めし気な視線を向けられた。
「悪かった。城に戻ったら、すぐ続きをしよう。……あんたが満足するまで、たっぷりとな」
と耳元で囁いたら。
みるみるうちに、アンリの色白の頬が、薔薇色に染まった。
だからそんな可愛くて色っぽい顔を、俺以外に見せるな。
自分でそうさせといて、何を言ってるんだという感じだが。
「アンリ様、飲み物はいかがですか?」
「俺がもう渡した。果物も」
アンドレが近寄ってこようとするのを阻止する。
この男、隙を見てはアンリの世話をしようとするから油断できない。
世話係なので、当たり前と言えば当たり前なのだが。
今日は第七王子として参加しているのだ。
王子なら、王子らしく凛とした佇まいで立ってろ。給仕係が困惑しているだろうが。人のことは言えないが。
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