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藍川透の回想
偽装じゃない、結婚式のやりなおし
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俺は今。
ベルトラントに戻り、城のお針子さん総勢10名に囲まれている。
多くね? と思ったが。他にもまだレース担当とかヴェール担当とかいるそうだ。さすがに常駐勤務じゃないよな……?
今度こそ、俺が式に着る結婚衣装を作るんだってめちゃくちゃ張り切っている。
ちなみにテオドゥルフ侯爵が着る服は、前に着てたやつで。破れたのを適当に縫い直すそうだ。エコなのは結構だけど、適当ってひどくない?
どうせみんな侯爵の顔しか見ないだろうって? そりゃそうかもしれないけど。
え、冗談? ちゃんと縫う? それなら良かった。
なんか、ひらひらした布を当てられてるんだが。
……まさか、これ、ウエディングドレスじゃないだろうな?
まだラズールの時なら女装しても違和感ない顔だったからいいものの、俺は普通に男子だぞ。
背は、女性ばかりのお針子さんたちより小さいけども。
いや、これは16歳の時の姿だから! まだ成長期だから! さすがに35歳の時はもう少し背も伸びてたし!
スカート状のものが作られているので、何でスラックスじゃなくてドレスなのかお針子さんたちに訊いてみたら。
結婚衣装のデザインは侯爵たっての希望だって。
まあ、侯爵がその服を着た俺の姿が見たいって言うのなら、どんな格好でもいいか。どうせこの一回だけだし。
俺も男だ。覚悟は決めてやろうじゃないか。
……ラズールのウエディングドレスを選んだ時も、肌の露出が少ない服が好みだったみたいだし。変な格好はさせられないだろう、と思う。
「はあ……、」
侯爵が、憂鬱そうな溜め息を吐いている。
「どしたの? マリッジブルー? 式中止する?」
「いや、式は今すぐにでもしたいくらいだ。まだ結婚前なので、トールを抱けないのがつらい……」
心底つらそうな顔をして言った。
大聖堂は結婚式の予定が詰まっていて。そこを無理矢理捻じ込んだけど、式は三日後になったのである。
結婚するまではエッチしちゃいけない決まりなんだっけ?
二、三日くらい、我慢しなよ……。
*****
結婚式当日。
出来上がった衣装は、純白のウエディングドレスだった。
これを自分が着るのかと思うとげんなりしたけど。
指先まで手袋で隠れるし、足元も見えない、首もレースで隠れてて肌の露出は少ないし、ベールで顔も隠れてほとんど見えないから、いいか……。
控え室で着替えてたら。
クラウディア妃殿下がひょこっと顔を出した。
「あら、可愛らしいこと。タキシードじゃなくて、ドレスなのね?」
やっぱりそうか。男同士の結婚式でも、普通はタキシード同士がスタンダードか……。
何と言ったものか、悩んでたら。
お針子さんが裾の微調整をしながら「こちらは侯爵閣下の指示でございます」と呟いた。
フォローありがとう……。
「もう二度と、あの子の笑顔を見ることはないかと思っていたけど。あんな幸せそうな顔、初めて見たわ。全部、トールさんのお陰ね。ありがとう」
顔は素晴らしく良いもんだから、女の子が騙されて寄ってきて、やりたい放題だったけど。
獣の姿にされてからは、誰にも見向きもされなくなって。捻くれた性格になってしまったと言う。
子供の頃から王になるべく教育を受けてきたのに、国王の器ではないと父親に見捨てられたのもショックだったんだろう、と。
手を取られて。
「あの子、ああだから大変でしょうけど。あの子のこと、よろしくお願いね」
「……はい、」
手を握り返した。小さな手だ。
テオドゥルフ侯爵は、割と母親似の顔なんだな、と思った。
「わたくしのことは、どうか本当の母親だと思って。Mama……いえ、Mamiと呼んでちょうだいね」
マミィって。幼児語では?
まあ、本人がそう呼んで欲しいなら、いいか……。
ついでに、テオドゥルフの愛称は何か聞いてみたら、『ティオ』だと……?
本当にみんな自由に呼んでるな。
アドルフは『アディ』だって。どんな法則性だ。
自由すぎる。
*****
「あら、リップは赤よりピンクのほうが可愛らしくないかしら?」
お義母さんは、用意されていた化粧道具を見てダメ出しした。
「せっかく綺麗な肌なのに、べったり塗ってしまったら台無しだわ」
「睫毛をブロウして、軽くパウダーとチークだけでよろしいでしょうか」
メイク係の人と、何やら話し合っている。
何語だろう。遠い目になる。
顔をわちゃわちゃと触られて。
メイクが済んだ顔を鏡で見たら、遠目なら女の子に見えるかもしれない、って感じだった。
化粧ってすごい。そりゃ騙される男が続出するはずだ。
髪の毛はオールバック状態で、後はヴェールを被せるだけだ。
そして、花嫁にヴェールを被せるのは花嫁の母親の役目なんだと言って。
「ふふ、とても可愛いわ」
お義母さんは俺の頭に、ふわりとベールを被せた。
「ありがとう……マミィ、」
「はう……!」
胸を押さえて屈みこんだ。
え、何かの発作か!?
「くっ……、こんな素直で可愛らしい子を、息子の毒牙にかけていいのかしら……」
ちょっとお義母さん? 大丈夫!?
バージンロードを花婿の元までエスコートしてくれるのは、モンテリオ国王、ハインリッヒ陛下だった。
もうバージンじゃないとかは言いっこなしだ。
それにしてもお義父さんが国王陛下、ってなんかすごいな。
考えてみれば、テオドゥルフ侯爵と結婚すること自体とんでもないんだけど。だって平民ですよ、俺。
あ、ドラゴンスレイヤーな勇者だから別にいいのか。
前回は、こういうの色々すっ飛ばして式を挙げた気がする。
時間もあんまり無かったもんな。服にかけた魔法が切れるからって。
あれから、もう何ヶ月も経ったような気がするけど。
実際は、そんなに経ってないんだよな。
一日一日が濃過ぎるよ……。
「私のこともVati、もしくはPapiと呼んでくれていいのだよ」
すごいキメ顔だった。
何だか照れるけど。
俺が異世界から来て、この世界には家族が居ないのを知ってるから、そう言ってくれてるんだろう。
いい人たちだなあ。
「ありがとう、パピィ」
「ぐふう……!」
胸を押さえてよろめいた。
おいおい、夫婦揃ってどうした!?
ベルトラントに戻り、城のお針子さん総勢10名に囲まれている。
多くね? と思ったが。他にもまだレース担当とかヴェール担当とかいるそうだ。さすがに常駐勤務じゃないよな……?
今度こそ、俺が式に着る結婚衣装を作るんだってめちゃくちゃ張り切っている。
ちなみにテオドゥルフ侯爵が着る服は、前に着てたやつで。破れたのを適当に縫い直すそうだ。エコなのは結構だけど、適当ってひどくない?
どうせみんな侯爵の顔しか見ないだろうって? そりゃそうかもしれないけど。
え、冗談? ちゃんと縫う? それなら良かった。
なんか、ひらひらした布を当てられてるんだが。
……まさか、これ、ウエディングドレスじゃないだろうな?
まだラズールの時なら女装しても違和感ない顔だったからいいものの、俺は普通に男子だぞ。
背は、女性ばかりのお針子さんたちより小さいけども。
いや、これは16歳の時の姿だから! まだ成長期だから! さすがに35歳の時はもう少し背も伸びてたし!
スカート状のものが作られているので、何でスラックスじゃなくてドレスなのかお針子さんたちに訊いてみたら。
結婚衣装のデザインは侯爵たっての希望だって。
まあ、侯爵がその服を着た俺の姿が見たいって言うのなら、どんな格好でもいいか。どうせこの一回だけだし。
俺も男だ。覚悟は決めてやろうじゃないか。
……ラズールのウエディングドレスを選んだ時も、肌の露出が少ない服が好みだったみたいだし。変な格好はさせられないだろう、と思う。
「はあ……、」
侯爵が、憂鬱そうな溜め息を吐いている。
「どしたの? マリッジブルー? 式中止する?」
「いや、式は今すぐにでもしたいくらいだ。まだ結婚前なので、トールを抱けないのがつらい……」
心底つらそうな顔をして言った。
大聖堂は結婚式の予定が詰まっていて。そこを無理矢理捻じ込んだけど、式は三日後になったのである。
結婚するまではエッチしちゃいけない決まりなんだっけ?
二、三日くらい、我慢しなよ……。
*****
結婚式当日。
出来上がった衣装は、純白のウエディングドレスだった。
これを自分が着るのかと思うとげんなりしたけど。
指先まで手袋で隠れるし、足元も見えない、首もレースで隠れてて肌の露出は少ないし、ベールで顔も隠れてほとんど見えないから、いいか……。
控え室で着替えてたら。
クラウディア妃殿下がひょこっと顔を出した。
「あら、可愛らしいこと。タキシードじゃなくて、ドレスなのね?」
やっぱりそうか。男同士の結婚式でも、普通はタキシード同士がスタンダードか……。
何と言ったものか、悩んでたら。
お針子さんが裾の微調整をしながら「こちらは侯爵閣下の指示でございます」と呟いた。
フォローありがとう……。
「もう二度と、あの子の笑顔を見ることはないかと思っていたけど。あんな幸せそうな顔、初めて見たわ。全部、トールさんのお陰ね。ありがとう」
顔は素晴らしく良いもんだから、女の子が騙されて寄ってきて、やりたい放題だったけど。
獣の姿にされてからは、誰にも見向きもされなくなって。捻くれた性格になってしまったと言う。
子供の頃から王になるべく教育を受けてきたのに、国王の器ではないと父親に見捨てられたのもショックだったんだろう、と。
手を取られて。
「あの子、ああだから大変でしょうけど。あの子のこと、よろしくお願いね」
「……はい、」
手を握り返した。小さな手だ。
テオドゥルフ侯爵は、割と母親似の顔なんだな、と思った。
「わたくしのことは、どうか本当の母親だと思って。Mama……いえ、Mamiと呼んでちょうだいね」
マミィって。幼児語では?
まあ、本人がそう呼んで欲しいなら、いいか……。
ついでに、テオドゥルフの愛称は何か聞いてみたら、『ティオ』だと……?
本当にみんな自由に呼んでるな。
アドルフは『アディ』だって。どんな法則性だ。
自由すぎる。
*****
「あら、リップは赤よりピンクのほうが可愛らしくないかしら?」
お義母さんは、用意されていた化粧道具を見てダメ出しした。
「せっかく綺麗な肌なのに、べったり塗ってしまったら台無しだわ」
「睫毛をブロウして、軽くパウダーとチークだけでよろしいでしょうか」
メイク係の人と、何やら話し合っている。
何語だろう。遠い目になる。
顔をわちゃわちゃと触られて。
メイクが済んだ顔を鏡で見たら、遠目なら女の子に見えるかもしれない、って感じだった。
化粧ってすごい。そりゃ騙される男が続出するはずだ。
髪の毛はオールバック状態で、後はヴェールを被せるだけだ。
そして、花嫁にヴェールを被せるのは花嫁の母親の役目なんだと言って。
「ふふ、とても可愛いわ」
お義母さんは俺の頭に、ふわりとベールを被せた。
「ありがとう……マミィ、」
「はう……!」
胸を押さえて屈みこんだ。
え、何かの発作か!?
「くっ……、こんな素直で可愛らしい子を、息子の毒牙にかけていいのかしら……」
ちょっとお義母さん? 大丈夫!?
バージンロードを花婿の元までエスコートしてくれるのは、モンテリオ国王、ハインリッヒ陛下だった。
もうバージンじゃないとかは言いっこなしだ。
それにしてもお義父さんが国王陛下、ってなんかすごいな。
考えてみれば、テオドゥルフ侯爵と結婚すること自体とんでもないんだけど。だって平民ですよ、俺。
あ、ドラゴンスレイヤーな勇者だから別にいいのか。
前回は、こういうの色々すっ飛ばして式を挙げた気がする。
時間もあんまり無かったもんな。服にかけた魔法が切れるからって。
あれから、もう何ヶ月も経ったような気がするけど。
実際は、そんなに経ってないんだよな。
一日一日が濃過ぎるよ……。
「私のこともVati、もしくはPapiと呼んでくれていいのだよ」
すごいキメ顔だった。
何だか照れるけど。
俺が異世界から来て、この世界には家族が居ないのを知ってるから、そう言ってくれてるんだろう。
いい人たちだなあ。
「ありがとう、パピィ」
「ぐふう……!」
胸を押さえてよろめいた。
おいおい、夫婦揃ってどうした!?
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