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Schicksalhafte Begegnung (運命的な出会い)
Besucher aus der Andere Welten(異世界からの訪問者)
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仕立屋に着くまでは、ラズールの姿でいてもらうことになった。
トールの姿で一緒に歩いてみたかったが。まだ服も無い状況である。
それに、新婚早々、稚児趣味に走ったかと噂されてしまうだろう。
共に歩けば、愛でずにいられないからな。
狭い路地で馬車は入れぬため、店までは徒歩である。
通行人は、一瞬私の獣の耳や尾に目をやり、驚くが。横を歩くラズールに釘付けになる。
ベルトラント侯爵夫妻であると、すぐに理解できたであろう。
”野獣侯爵”が再び獣にされたという噂は、かなり広まっているようである。
*****
「初心者っぽい人がいる」
トールは、こちらへ向かって歩いて来ている通行人を見て言った。
視線の先を見れば。
その辺に居そうな、一般市民の格好をしている、目立った特徴もない男であった。
「初心者? 普通の町民ではないのか? 見ない顔だが」
男は、私達の目の前で立ち止まった。
「……貴方は誰だ?」
「え?」
男は”ラズール”に向かって言っている。
「そのアバターは、譲渡権限が無いはず。その”ラズール”は、故人の物だ。貴方はそれをどうやって手に入れた? あの子は責任感が強いし、本人からは有り得ない。直前まで使っていたのだから」
無表情で、感情のない平坦な声である。
生きた人間ではなさそうな、不気味な気配。
離れよう、とトールの手を引くが。
トールはその男を、驚いた様子で見、呟いた。
「……もしかして、中の人、飯田先輩? 何でか俺のこと、子供扱いしてた……」
「知り合いか? ……中の人とは?」
「大学……ええと学校の先輩で、上司だった人。最初に会った時も、見学に来た高校生と間違われたんだ。それで、ゲーム同好会に勧誘されたのが馴れ初めっていうか」
「え!? 藍川、……なのか? 本当に!?」
……まずいな。
立ち止まっているせいか、見物人が集まってきた。
我々は、かなり目立つのだ。
呪われ侯爵に、その呪いを解いた、鄙に稀なる美少女である。
異世界の話なら、人の目の無い場所の方がよいだろう。
「どうやら、あちらでの知り合いのようだな。ここは人目があるので、場所を移動しよう」
トールの背を押し。
近場の宿屋に入ることにした。
*****
「藍川の人格を学習させたAIじゃなく、本当に、藍川本人なのか?」
「そうだよ」
あちらの言葉はよくわからないが。
二人の話を総合すると、これはトールの勤めていたゲーム会社の上司で、勉学を励む学校という場所での先輩でもあるイイダという名の男で。
儚くも命を落としたトールの遺品を整理していたようである。
そしてトールの作った”ゲーム”の中に、トールの別の姿である”ラズール”を見つけ。
死んだはずのトールが動かせるはずもないのに何故、と疑問に思い、どういうことなのか確かめに来たようである。
この世界と、異世界の”ゲーム”の中は、”縁”が繋がっているのか?
グレアは、トールの夢の中で繋がっていた、とは言っていたが。
「気がついたら、ここ、アルトポリスにいたんだ。コンラート王子に連れられて見合いさせられたんで、てっきり美女と野獣イベントの夢だと思ってたんだけど。プログラムしてなかった部分も存在してたし。こっちの魔女が言うには、ここと俺の縁が繋がってたから、俺が寝ている間に、魂がこっちへ来たままになったんじゃないかって」
「そうか。そちらはそちらで独立した世界になっているのかね? そういえば、たまに寝ぼけてアルトポリスの夢見た、とか言ってたな」
「え、マジで!?」
上司というが。
トールの取るイイダへの態度は立場が上の者に対するものには見えない。
学校が同じだったと言ったな。その頃から、仲が良かったのだろう。
トールは嬉しそうだが、こちらは少々面白くない。
私達は新婚だというのに、二人の時間を邪魔されているのだから。
「……とにかく、お前ともう一度話が出来て、嬉しいよ。……で、その、どっかで見たような、イヌミミつけた男は何なんだ?」
イイダは、ようやく私について言及した。
私がトールと仲良さそうに歩いていたのが、気になっていたのだろう。
平坦な声であるのに、敵意が伝わってきた。
ふん、貴様がトールに並みならぬ好意を抱いていることは、すでにわかっている。
しかし。
トールはもう、身も心も私の妃である。残念だったな!
*****
「私はトールの夫、ベルトラント侯爵テオドゥルフ・アグナールだ」
名乗ってやる。
「ああ、美女と野獣イベの……って、夫ぉ!?」
「うん、そのまま結婚しちゃったんだ」
トールは照れたように言った。イイダも私の名を知っていたようだ。
「え、でもその素体、男だよな!?」
トールを指差す。
「トールは確かに男だが。何か問題が?」
男か女かの問題など、些細なことである。トールは、獣の私を、愛してくれたのだから。
イイダは、しばらく固まっていたが。
「俺のオアシスが狼野郎に……異世界油断ならねえ……」
テーブルを叩いて言った。
相当悔しいのだろう。
しかし、顔は無表情のままなので甚だ不気味である。
「トールはもう、身も心も私のものだぞ?」
「それはともかく。気になってたんだけど、進行は大丈夫だった?」
ともかくではない、重要なことだと言いたかったが。
どうやら仕事の話に入ったようなので、口を挟むのは遠慮しておこう。
ゲームの仕事はトールの生き甲斐であったのだから。
*****
しばらく見守っていたが。
「ごめん、俺が体調管理をちゃんとしなかったせいで……それに、面倒がらずに作業を他の人に教えて割り振ってれば……」
「お前が、謝らないでくれ!」
イイダは、激昂しているようだ。トールに対してではなく、自分自身に。
それはそうだろう。
イイダとやらは、あちらの世界で、大切なトールを永遠に喪ったのだ。
その悲しみはいかほどか。想像するだに、私の胸も痛む。
「いや、無理しているのを知りながら、止めなかった俺が、悪かったんだ。襲ってでも寝かせるべきだった」
……何だと!?
「そういえば、今思ったんだけど。俺の魂って、パソコンの方にあるのかなあ」
トールは、イイダの告白ともいえる発言を見事に無視した。
少々不憫になる。
「ちょ、透君? わざとスルーしたの?」
突然口調が変わった。
女のような。
「え、スルーって何を?」
「今のは江波だ。なんでもないので、続けてどうぞ」
今話に割り込んだのは、エナミという女の先輩だったそうだ。
……この男の中に、何人か居るのか?
いくら見ても、気配も匂いも無い。不気味な人間であるのだが。
「いや、このゲームが消えたら、俺の魂も消えちゃったりするのかな、って」
「……何だと?」
「何だって!?」
皮肉なことに、私とイイダの声が重なった。
「元々存在していた異世界に、夢を通して俺の魂がやって来た、って話だけど。この身体、感覚はあるし、実体は実体なんだろうと思うんだ。でも。……もしかしたら、だけど。身体は借り物状態で、MMORPGゲームのサーバに、俺の魂の本体? があるのかも」
つまり。
あちらの世界のゲームが消えれば、こちらのトールも消えてしまう、という事か?
馬鹿な。
そんなことは。あってはならないことだ。
トールの姿で一緒に歩いてみたかったが。まだ服も無い状況である。
それに、新婚早々、稚児趣味に走ったかと噂されてしまうだろう。
共に歩けば、愛でずにいられないからな。
狭い路地で馬車は入れぬため、店までは徒歩である。
通行人は、一瞬私の獣の耳や尾に目をやり、驚くが。横を歩くラズールに釘付けになる。
ベルトラント侯爵夫妻であると、すぐに理解できたであろう。
”野獣侯爵”が再び獣にされたという噂は、かなり広まっているようである。
*****
「初心者っぽい人がいる」
トールは、こちらへ向かって歩いて来ている通行人を見て言った。
視線の先を見れば。
その辺に居そうな、一般市民の格好をしている、目立った特徴もない男であった。
「初心者? 普通の町民ではないのか? 見ない顔だが」
男は、私達の目の前で立ち止まった。
「……貴方は誰だ?」
「え?」
男は”ラズール”に向かって言っている。
「そのアバターは、譲渡権限が無いはず。その”ラズール”は、故人の物だ。貴方はそれをどうやって手に入れた? あの子は責任感が強いし、本人からは有り得ない。直前まで使っていたのだから」
無表情で、感情のない平坦な声である。
生きた人間ではなさそうな、不気味な気配。
離れよう、とトールの手を引くが。
トールはその男を、驚いた様子で見、呟いた。
「……もしかして、中の人、飯田先輩? 何でか俺のこと、子供扱いしてた……」
「知り合いか? ……中の人とは?」
「大学……ええと学校の先輩で、上司だった人。最初に会った時も、見学に来た高校生と間違われたんだ。それで、ゲーム同好会に勧誘されたのが馴れ初めっていうか」
「え!? 藍川、……なのか? 本当に!?」
……まずいな。
立ち止まっているせいか、見物人が集まってきた。
我々は、かなり目立つのだ。
呪われ侯爵に、その呪いを解いた、鄙に稀なる美少女である。
異世界の話なら、人の目の無い場所の方がよいだろう。
「どうやら、あちらでの知り合いのようだな。ここは人目があるので、場所を移動しよう」
トールの背を押し。
近場の宿屋に入ることにした。
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「藍川の人格を学習させたAIじゃなく、本当に、藍川本人なのか?」
「そうだよ」
あちらの言葉はよくわからないが。
二人の話を総合すると、これはトールの勤めていたゲーム会社の上司で、勉学を励む学校という場所での先輩でもあるイイダという名の男で。
儚くも命を落としたトールの遺品を整理していたようである。
そしてトールの作った”ゲーム”の中に、トールの別の姿である”ラズール”を見つけ。
死んだはずのトールが動かせるはずもないのに何故、と疑問に思い、どういうことなのか確かめに来たようである。
この世界と、異世界の”ゲーム”の中は、”縁”が繋がっているのか?
グレアは、トールの夢の中で繋がっていた、とは言っていたが。
「気がついたら、ここ、アルトポリスにいたんだ。コンラート王子に連れられて見合いさせられたんで、てっきり美女と野獣イベントの夢だと思ってたんだけど。プログラムしてなかった部分も存在してたし。こっちの魔女が言うには、ここと俺の縁が繋がってたから、俺が寝ている間に、魂がこっちへ来たままになったんじゃないかって」
「そうか。そちらはそちらで独立した世界になっているのかね? そういえば、たまに寝ぼけてアルトポリスの夢見た、とか言ってたな」
「え、マジで!?」
上司というが。
トールの取るイイダへの態度は立場が上の者に対するものには見えない。
学校が同じだったと言ったな。その頃から、仲が良かったのだろう。
トールは嬉しそうだが、こちらは少々面白くない。
私達は新婚だというのに、二人の時間を邪魔されているのだから。
「……とにかく、お前ともう一度話が出来て、嬉しいよ。……で、その、どっかで見たような、イヌミミつけた男は何なんだ?」
イイダは、ようやく私について言及した。
私がトールと仲良さそうに歩いていたのが、気になっていたのだろう。
平坦な声であるのに、敵意が伝わってきた。
ふん、貴様がトールに並みならぬ好意を抱いていることは、すでにわかっている。
しかし。
トールはもう、身も心も私の妃である。残念だったな!
*****
「私はトールの夫、ベルトラント侯爵テオドゥルフ・アグナールだ」
名乗ってやる。
「ああ、美女と野獣イベの……って、夫ぉ!?」
「うん、そのまま結婚しちゃったんだ」
トールは照れたように言った。イイダも私の名を知っていたようだ。
「え、でもその素体、男だよな!?」
トールを指差す。
「トールは確かに男だが。何か問題が?」
男か女かの問題など、些細なことである。トールは、獣の私を、愛してくれたのだから。
イイダは、しばらく固まっていたが。
「俺のオアシスが狼野郎に……異世界油断ならねえ……」
テーブルを叩いて言った。
相当悔しいのだろう。
しかし、顔は無表情のままなので甚だ不気味である。
「トールはもう、身も心も私のものだぞ?」
「それはともかく。気になってたんだけど、進行は大丈夫だった?」
ともかくではない、重要なことだと言いたかったが。
どうやら仕事の話に入ったようなので、口を挟むのは遠慮しておこう。
ゲームの仕事はトールの生き甲斐であったのだから。
*****
しばらく見守っていたが。
「ごめん、俺が体調管理をちゃんとしなかったせいで……それに、面倒がらずに作業を他の人に教えて割り振ってれば……」
「お前が、謝らないでくれ!」
イイダは、激昂しているようだ。トールに対してではなく、自分自身に。
それはそうだろう。
イイダとやらは、あちらの世界で、大切なトールを永遠に喪ったのだ。
その悲しみはいかほどか。想像するだに、私の胸も痛む。
「いや、無理しているのを知りながら、止めなかった俺が、悪かったんだ。襲ってでも寝かせるべきだった」
……何だと!?
「そういえば、今思ったんだけど。俺の魂って、パソコンの方にあるのかなあ」
トールは、イイダの告白ともいえる発言を見事に無視した。
少々不憫になる。
「ちょ、透君? わざとスルーしたの?」
突然口調が変わった。
女のような。
「え、スルーって何を?」
「今のは江波だ。なんでもないので、続けてどうぞ」
今話に割り込んだのは、エナミという女の先輩だったそうだ。
……この男の中に、何人か居るのか?
いくら見ても、気配も匂いも無い。不気味な人間であるのだが。
「いや、このゲームが消えたら、俺の魂も消えちゃったりするのかな、って」
「……何だと?」
「何だって!?」
皮肉なことに、私とイイダの声が重なった。
「元々存在していた異世界に、夢を通して俺の魂がやって来た、って話だけど。この身体、感覚はあるし、実体は実体なんだろうと思うんだ。でも。……もしかしたら、だけど。身体は借り物状態で、MMORPGゲームのサーバに、俺の魂の本体? があるのかも」
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あちらの世界のゲームが消えれば、こちらのトールも消えてしまう、という事か?
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