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身代わりかもしれません。

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もしかして。
誰かの身代わりにされてる?


いくら昔、知り合いだったからって。超がつくほどの大金持ちだからって。

多少の顔見知り程度の相手の葬式を取り仕切って、墓に入れるまで見届けるなんて。
どう考えても、おかしいじゃないか。

かなりの大金を使っただけじゃない。

この人がとても忙しい身だというのは、すぐにわかった。
それなのに、関係者を調べ上げたり、人を使って、労力もかけて。


思い返せば。
母さんに用事があって来た、って言ってたっけ。

アパートを訊ねたら、町内会の会議所で通夜だったから、慌てて来た感じだった。
来たばかりだから持ち合わせがない、みたいなことも。


……は、母さんだった?


*****


ヴィットーリオの初恋の相手、とかだったりして。
それで。

せっかく立派になって会いに来たのに、死んじゃってたから。
僕を、身代わりにした、とか?

たった一人の息子なのに。

遺体を棺にも入れないで、布団に寝かせただけで。
町内会の会議所で仮通夜とか、満足に葬式もあげられそうになかった。
そんな無能な僕に、お仕置きしようと思った、とか?

それとも、僕のせいで母さんを死なせてしまったから。
仕返しに、こんなことをしたのか。


だったら。
……好きなだけ、犯せばいい。

母さんに無理をさせて、死なせてしまったのは僕が悪い。
償いにもならないけど。


きっとこれは、僕に与えられた”罰”なんだ。


「ふ、無駄な力が抜けてきたな。が気に入ったか?」

腰を動かされると。
ぐちゅぐちゅと生々しい音がして。

男に犯されていることを思い知らされる。


「あ、……あっ、」

揺さぶられて。
精液が、ぱたぱたとシーツに落ちる。


「う、……っく、」
涙があふれて止まらない。


*****


どんなに罰を与えられたって。

母さんは帰ってこない。
それなのに。


僕はこんな、暖かい、豪華な部屋で。

監禁されて、拘束されてはいる状況だけど。痛い目にも遭わされてない。

働きもしてないのに、綺麗な服を与えられて。
美味しいご飯も食べてた。


身体を弄られて、気持ち良くなっちゃって。

今だって。
痛みよりもむしろ、快感を覚えている。

ローションを使って、丁寧に慣らしたりして。
傷つかないように気を使われて。

こんなの、罰でもなんでもないじゃないか。


「そこまで。……泣くほど、私に抱かれるのは嫌か?」
ぐい、と腰を引き上げられて。

「あぐ、……ひ、ああっ!?」
お腹の中を、抉られるみたいに強く、突き上げられた。

それなのに。痛みは感じない。
気持ちいい場所を擦られて、イってしまったくらいだ。


「っ、……自分から寵愛をねだり、なしでは、夜も眠れない身体にしてやる……!」
めちゃくちゃにかき回されて。

中に出されたのがわかった。


そこから、記憶がないので。
気を失っていたのかもしれない。


*****


優しく、頭を撫でられているような感触。


「……愛しているのに。何故、こうなってしまったのか……」
囁くような声が聞こえた。

「元々、報われぬ恋だったということか」

それは。
こっちの胸が痛くなりそうなほど、つらそうな声だった。


Ancheアンケ cosìコズィNon possoノンポッソ fare a ファレ アmeno diメノ ディ amartiアマーティ.」
額に、唇の感触。

……それでも、君を愛さずにはいられない。


そんな想いを、母さんに持っていたのか。
それほどまで、強烈な感情を。

そこまで好きだったのなら。
僕のことなんて、憎いだけだろうに。

殴るとかの暴力をふるわれないのは。
僕の顔が、母さんに似てるから?


強姦だって、立派な暴力だけど。

僕はそんなに人を好きになったことがないから。
そういった、激しい衝動というものがわからない。

特定の誰かに対して興奮して、発情したこともないし。

大好き、って心から言えたのは。
母さんと、鷹ちゃんくらいだった。


シングルマザーってだけで敬遠する親とかもいて。

あの子と遊ぶなって注意されたとか言われて、疎遠になって。
それで、友達を作るのも諦めた。

話が合うような遊び道具も持ってなかったし。


近所の人は、親切にしてくれたけど。
それは、僕達が自分より恵まれてない、哀れな存在だと思ってたからだろうな。

僕が国立大の法学部に受かって、司法試験も現役合格したって聞いて。
態度が冷たくなった人もいた。

逆に、手のひらを返したように親切になった人もいたけど。


もし自由になったら。
弁護士じゃなくて検察になって、クリスティアーニの悪事の証拠を突き上げてやる……なんて仕返しをしようとも思わない。

頑張る目的も、なくなってしまった。


もう、何もかも、どうでもいいや。


*****


目が覚めたら、腕に違和感があって。

見てみたら。
左腕に、点滴のような針とチューブが刺さっていた。

そのチューブの先は、ヴィットーリオの腕に伸びていた。


「……え?」
どういうことだろう、これは。

どうやらチューブの中は、血みたいだけど。
まさか、輸血?


ヴィットーリオはベッドの横に椅子を置いて。
こちらを見下ろす感じで座っていた。

きちんと服を身に着けてるけど、左腕は肘の上まで袖をまくっている。
着やせして見えるけど、筋肉質だ。

僕の事を軽く持ち上げていたし。


「全てを入れ替えたかったが、しばらく様子を見たほうが良いらしい。幸い血液型も同じで、輸血しあっても抗体などに問題はないそうだが……」

ああ、A型なんだ。
イタリア人には珍しい……んだっけ?

ラテン系にはB型が多かったような気がする。

ヴィットーリオはラテン系っぽくないけど。
気難しいドイツ人、って言われた方が納得な感じだ。


*****


「何で、輸血なんて……?」

これ、輸血をしてるのか。
ヴィットーリオの血を、僕に?

何で? 健康診断の検査でも貧血だとか診断されたことは一度もないんだけど。


起き上がろうとしたら、横になっているように言われて。
お尻の中に、また、あの棒状のものが突っ込まれていることに気付いた。


「何度か、こうして互いに血を入れ替えていれば、血が混ざり合って、何もかもになるだろう?」

ヴィットーリオは、自分の腕に刺さっているチューブを愛おしそうに撫でながら言った。

いや、肝臓とか違うし。別人だし。
完全には同じにならないんじゃないか、とは言えない雰囲気だった。

目がどっか行っちゃってて怖かったし。


鮮やかすぎる血の色からして、動脈に針を刺してるっぽいんだけど。
大丈夫なのかな……。
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