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異世界で、もう一軒家を建てる

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「し、神獣って、何を食べるの?」
「いや、私に訊かれても。……ん? 何かな?」

子犬は、ウィリアムが手にしているグラス……リンゴジュースをじっと見て、きゅんきゅん鳴いた。


「もしかして、あれが飲みたいの?」
ジュースを指すと。

嬉しそうにしっぽをぶんぶん振った。
もしかして、言葉がわかってる? あれ、100%ジュースだけど。大丈夫かな?

「神獣だからね。何を飲ませても問題はないだろう。毒でも平気で飲むよ」
いや、毒は駄目だよ……。

「あ、ちょっと待って。……ชาม
子犬が飲みやすいような皿を作って、そこにジュースを注いだ。


デッキに子犬を下ろして、皿を出すと。
子犬はしっぽを振りながら、嬉しそうに舐めている。

「……可愛いなあ」
「ああ。とても可愛いね」


それ、犬の方見て言って。


*****


「名前は、まだないようだね。君がつけてあげるといい」

ウィリアムが”鑑定”で調べてみたところ、名前はまだなかったようだ。
名前か。うーん。

「雪みたいに真っ白だから、シロ!」

「キュン」
嬉しそうに鳴いた。


ウィリアムには安直だって思われただろうけど。いいんだ。白い犬の名前はシロに決まってる。
でも、犬みたいに見えるけど、犬じゃない生き物なのかもしれない。神獣だし。


色々な食材を出してシロの好物を調べてみたり、毛皮をもふもふしている間に、もうお昼近くになってしまっていた。

そういえば、お昼ごろにお客さんが来る予定だった。
リズリーの森の管理人夫婦。


「いけない、管理人小屋作らないと!」
慌ててウッドデッキからキッチンへ行く。後ろから、ぽてぽてとシロが走ってくる。かわいい。

「来るのは昼過ぎだ。急がなくても大丈夫だよ?」
「ウィルも昼ご飯、食べるでしょ?」

十中八九、プレストンも顔を出すだろうし。
オズワルドとオーソンも、昼食を抜いて来そう。食べてても更に食べそう。

「ロールサンドはどうかな? それなら手伝える」
「うん。じゃあお願い」


あまり時間がないし。ありがたく次期王様の手を借りてしまおう。

お昼ご飯にはサンドイッチの他にカリフォルニアロール、唐揚げとか卵焼き、ウィンナーなどのおかずも大量に用意しておいた。

ロールサンドは、ラップなどでキャンディみたいにパンをロール状に巻いたものだ。
見た目も可愛らしいし、転がすだけで出来るので簡単だ。
カリフォルニアロールもラップにご飯を敷いて真ん中に具を置いて巻くだけ。

桜でんぶやそぼろで模様を作ったりするのも楽しい。


*****


お弁当を作り終わって、家から出たら。

道の向かい側には、教会の建物が半分くらい作られていた。
何だか大工さんらしき人たちが、死に物狂いで仕事をしている……。


ウィリアムもついてきて、管理人小屋を作るならこの辺が良いだろう、と。場所の指定をしてくれた。
前に家があったあたりの方がいいだろうし。

「ほら、そこにいたら危ないよ。おいで、」
ウィリアムが草むらをぴょこぴょこ走り回っていたシロを抱き上げた。

「それじゃ、作るよ。……สร้าง 建築


昨日描いてくれたイメージ図通りの建物ができた。
シロはそれを見て、大喜びで鳴いてる。……お前の家ではないよ?

「お見事。図面通りだ。料理だけでなく、建築にも造詣が深いのだね。実に多才だ」
そんなに褒められると、照れる。

「ウィルが絵を描いてくれたからだよ。うちは、ずっと不動産のチラシとかの間取りをみて、理想の家をイメージしてたから作れたけど」

「ふふ、謙遜しなくていいのに」
頭を撫でられた。

もう本来の年齢を知ってるのに。どっちみち、年上なんだけど。


*****


「ウィリアム様、」
出来上がった管理人小屋を見上げてたら、人の声がして。

振り返ると、朴訥そうな中年くらいの男性と、その人よりは少し若い女性がいた。
服装は、二人とも昨日俺が着ていたみたいなシンプルなシャツとジーンズみたいなズボンだ。
後ろには、荷物の乗った幌馬車。


この人達が、管理人夫婦なのかな?
蘇った森を、信じられないといった様子で見てる。

ウィリアムは俺の背に手を当てて。
「ああ、早速だが、紹介しよう。彼がここ、リズリーの主となった、リンだ。姓は訳あって今は言えない。見た目は子供だが、子供だと思って構い過ぎないように」


あんたが言うか! と思ったけど。
まあいいか。
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