神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

文字の大きさ
39 / 71

異世界で、もう一軒家を建てる

しおりを挟む
「し、神獣って、何を食べるの?」
「いや、私に訊かれても。……ん? 何かな?」

子犬は、ウィリアムが手にしているグラス……リンゴジュースをじっと見て、きゅんきゅん鳴いた。


「もしかして、あれが飲みたいの?」
ジュースを指すと。

嬉しそうにしっぽをぶんぶん振った。
もしかして、言葉がわかってる? あれ、100%ジュースだけど。大丈夫かな?

「神獣だからね。何を飲ませても問題はないだろう。毒でも平気で飲むよ」
いや、毒は駄目だよ……。

「あ、ちょっと待って。……ชาม
子犬が飲みやすいような皿を作って、そこにジュースを注いだ。


デッキに子犬を下ろして、皿を出すと。
子犬はしっぽを振りながら、嬉しそうに舐めている。

「……可愛いなあ」
「ああ。とても可愛いね」


それ、犬の方見て言って。


*****


「名前は、まだないようだね。君がつけてあげるといい」

ウィリアムが”鑑定”で調べてみたところ、名前はまだなかったようだ。
名前か。うーん。

「雪みたいに真っ白だから、シロ!」

「キュン」
嬉しそうに鳴いた。


ウィリアムには安直だって思われただろうけど。いいんだ。白い犬の名前はシロに決まってる。
でも、犬みたいに見えるけど、犬じゃない生き物なのかもしれない。神獣だし。


色々な食材を出してシロの好物を調べてみたり、毛皮をもふもふしている間に、もうお昼近くになってしまっていた。

そういえば、お昼ごろにお客さんが来る予定だった。
リズリーの森の管理人夫婦。


「いけない、管理人小屋作らないと!」
慌ててウッドデッキからキッチンへ行く。後ろから、ぽてぽてとシロが走ってくる。かわいい。

「来るのは昼過ぎだ。急がなくても大丈夫だよ?」
「ウィルも昼ご飯、食べるでしょ?」

十中八九、プレストンも顔を出すだろうし。
オズワルドとオーソンも、昼食を抜いて来そう。食べてても更に食べそう。

「ロールサンドはどうかな? それなら手伝える」
「うん。じゃあお願い」


あまり時間がないし。ありがたく次期王様の手を借りてしまおう。

お昼ご飯にはサンドイッチの他にカリフォルニアロール、唐揚げとか卵焼き、ウィンナーなどのおかずも大量に用意しておいた。

ロールサンドは、ラップなどでキャンディみたいにパンをロール状に巻いたものだ。
見た目も可愛らしいし、転がすだけで出来るので簡単だ。
カリフォルニアロールもラップにご飯を敷いて真ん中に具を置いて巻くだけ。

桜でんぶやそぼろで模様を作ったりするのも楽しい。


*****


お弁当を作り終わって、家から出たら。

道の向かい側には、教会の建物が半分くらい作られていた。
何だか大工さんらしき人たちが、死に物狂いで仕事をしている……。


ウィリアムもついてきて、管理人小屋を作るならこの辺が良いだろう、と。場所の指定をしてくれた。
前に家があったあたりの方がいいだろうし。

「ほら、そこにいたら危ないよ。おいで、」
ウィリアムが草むらをぴょこぴょこ走り回っていたシロを抱き上げた。

「それじゃ、作るよ。……สร้าง 建築


昨日描いてくれたイメージ図通りの建物ができた。
シロはそれを見て、大喜びで鳴いてる。……お前の家ではないよ?

「お見事。図面通りだ。料理だけでなく、建築にも造詣が深いのだね。実に多才だ」
そんなに褒められると、照れる。

「ウィルが絵を描いてくれたからだよ。うちは、ずっと不動産のチラシとかの間取りをみて、理想の家をイメージしてたから作れたけど」

「ふふ、謙遜しなくていいのに」
頭を撫でられた。

もう本来の年齢を知ってるのに。どっちみち、年上なんだけど。


*****


「ウィリアム様、」
出来上がった管理人小屋を見上げてたら、人の声がして。

振り返ると、朴訥そうな中年くらいの男性と、その人よりは少し若い女性がいた。
服装は、二人とも昨日俺が着ていたみたいなシンプルなシャツとジーンズみたいなズボンだ。
後ろには、荷物の乗った幌馬車。


この人達が、管理人夫婦なのかな?
蘇った森を、信じられないといった様子で見てる。

ウィリアムは俺の背に手を当てて。
「ああ、早速だが、紹介しよう。彼がここ、リズリーの主となった、リンだ。姓は訳あって今は言えない。見た目は子供だが、子供だと思って構い過ぎないように」


あんたが言うか! と思ったけど。
まあいいか。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

嫁がされたと思ったら放置されたので、好きに暮らします。だから今さら構わないでください、辺境伯さま

中洲める
BL
錬金術をこよなく愛する転生者アッシュ・クロイツ。 両親の死をきっかけにクロイツ男爵領を乗っ取った叔父は、正統な後継者の僕を邪魔に思い取引相手の辺境伯へ婚約者として押し付けた。 故郷を追い出された僕が向かった先辺境グラフィカ領は、なんと薬草の楽園!!! 様々な種類の薬草が植えられた広い畑に、たくさんの未知の素材! 僕の錬金術師スイッチが入りテンションMAX! ワクワクした気持ちで屋敷に向かうと初対面を果たした辺境伯婚約者オリバーは、「忙しいから君に構ってる暇はない。好きにしろ」と、顔も上げずに冷たく言い放つ。 うむ、好きにしていいなら好きにさせて貰おうじゃないか! 僕は屋敷を飛び出し、素材豊富なこの土地で大好きな錬金術の腕を思い切り奮う。 そうしてニ年後。 領地でいい薬を作ると評判の錬金術師となった僕と辺境伯オリバーは再び対面する。 え? 辺境伯様、僕に惚れたの? 今更でしょ。 関係ここからやり直し?できる? Rには*ついてます。 後半に色々あるので注意事項がある時は前書きに入れておきます。 ムーンライトにも同時投稿中

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日投稿だけど時間は不定期   【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸にクリスがひたすら愛され、大好きな兄と暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスは冤罪によって処刑されてしまう。  次に目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。    巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過保護な兄たちに可愛がられ、溺愛されていく。  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで新たな人生を謳歌する、コミカル&シリアスなハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

温泉旅館の跡取り、死んだら呪いの沼に転生してた。スキルで温泉郷を作ったら、呪われた冷血公爵がやってきて胃袋と心を掴んで離さない

水凪しおん
BL
命を落とした温泉旅館の跡取り息子が転生したのは、人々から忌み嫌われる「呪いの沼」だった。 終わりなき孤独と絶望の中、彼に与えられたのは【万物浄化】と【源泉開発】のスキル。 自らを浄化し、極上の温泉を湧き出させた彼の前に現れたのは、呪いにより心と体を凍てつかせた冷血公爵クロード。 半信半疑で湯に浸かった公爵は、生まれて初めての「安らぎ」に衝撃を受ける。 「この温泉郷(ばしょ)ごと、君が欲しい」 孤独だった元・沼の青年アオイと、温もりを知らなかった冷血公爵クロード。 湯けむりの向こうで出会った二人が、最高の温泉郷を作り上げながら、互いの心の傷を癒やし、かけがえのない愛を見つけていく。 読む者の心まですべて解きほぐす、極上の癒やしと溺愛のファンタジーロマンス、ここに開湯。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

処理中です...