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黄龍大帝のツガイ

結婚のお祝い

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誓いの杯を酌み交わして。


祝いの宴が始まった。
后という扱いではあるけど、女物の服ではなく。雷音のと色違いで、お揃いの衣装だった。

雷音が黒と黄色で、俺は赤と白だけど。
女装じゃなくてほっとした。


見れば、天女みたいな格好の女の人がひらひら舞い踊ったり、女官が客人にお酌をしたりしていた。
この国、こんなに女の人がいたんだ、と思ってたら。

どうやら、結婚するまでは俺が女の人に目移りしないように、目に付かないようにしていたらしい。
心配性だなあ。


彼女いない暦=年齢を舐めるなよ?

自慢じゃないが。
女の人への声の掛け方すらわかんないんだからな!


*****


俺の杯には、お酒じゃなくて桃のジュースが入っていた。

蓮麒辺りから聞いたのだろうか?
酒癖が悪いとか。


『こちらは、仙桃せんとうの果実を絞り、したものです。お口に合いましたか?』
剛麒が持って来てくれた祝いの品だったらしい。

麒麟の国では、桃が特産品なようだ。
仁獣だから肉が食べられないせいかな?

「ありがとう。すごく美味しいよ」

後に残らない、さっぱりした甘さで。いくらでもゴクゴク飲めちゃいそうだ。
さすが仙人の桃……! 貴重品っぽいから、ちびちび飲むけど。


『え、いいな。俺にも一口!』
元白……。

『あ、はい。白龍王様も、どうぞ』
剛麒は元白の杯に桃ジュースを注いだ。

あれ?
ほんのり頬を染めて元白を見ている。

ああ、そういえば強くて有名な聖将なんだっけ?


ドジっこ枠同士、惹かれるのだろうか。
望は俺の命の恩人なんだよ、わたしもです、とか仲良く話している。青春だなあ。

『元白にも、春到来か?』
雷音も、笑顔で二人を見てた。


俺は今、凄く幸せだから。
みんなにも、幸せになって欲しいと思う。


*****


鳳凰の二人が見事な祝いの舞を踊って見せてくれたり、元白が剣舞を披露したり。
宴は大いに盛り上がった。


蓮麒は、このような披露の宴は二千年ぶりだと言った。
鳳凰夫妻の式以来らしい。

そんな長い間ツガイでいるのに、あんなに仲睦まじいんだ。
俺達も、ああいう風にいられたらいいな。


俺の中に、雷音の生命がある。
もう龍気を補給しなくて良くなるのは、これがあるからだ。

龍はツガイができたらツガイひと筋になるというのも納得だ。
命を分けた相手だもんな。

一途で、かわいい生き物だと思う。


『望、何をしているのだ? ……ほう、これは……』
雷音が俺の手元を覗き込んだ。

赤い紐で、飾りを編んでいた。
ビーズみたいな宝石の玉は、冬雅の国に行った時にもらったものだ。

『おお、これは見事な』
蓮麒も俺の手元を覗き込んで驚いている。


「で、仕上げに房をつけて完成」


*****


『隆鳳殿、細君さいくんもこちらへ』
雷音が二人を手招きしてくれたので。

「先程の素敵な舞いのお礼、と言っては何ですけど……」

鳳凰が舞っている姿を編んだ飾りを二つ渡した。
並べると、二対の鳳凰になる。


『有難う御座います。まさか、このような素晴らしき御宝を賜るとは、望外の喜びに存じます……!』
隆鳳は物凄く恐縮して、礼をした。

いや、今作ったものだよ。
お宝じゃないよ……。アクセントに少し、宝石は使ったけど。

『わたくしにまで……! 光栄で御座います……!』
凰華夫人は、目に涙まで溜めていた。

いや、そこまで喜ばれるとは思ってなかった……。
何か、逆に申し訳なく思ってしまう。

まあ、喜んでもらえてよかった。


『くっ、こちらも踊りを見せるべきであったか……!』
「蓮麒の踊りは別に見たくないかな……。あ、剛麒には元白とお揃いの飾り、後で作ってあげるね」

『良かったな、剛麒。ほら、これだよ』
元白は、自分の飾りを見せた。

『まことでございますか!? 嬉しいです!』
飛び上がらんばかりに喜んでいる。

剛麒はかわいいなあ。


『望殿~。剛麒のやつばかりずるいではないか。仙桃果汁がお好みなら、いくらでも贈るので俺にも~』
「わかった、わかったから。何か考えとくから這い寄るのやめて」

這い寄る蓮麒は、剛麒と元白が元の席まで戻してやった。


*****


「……?」

飛陽が尾を九本出して、きらきらした目でこちらを見ている。
何をアピールしてるんだろう。

『飛陽殿からは、祝いに反物を戴いている。一応、返礼品は用意してあるのだが……』
雷音がこそっと囁いて教えてくれた。

聖獣の国は、毛織物が特産品なのか。
聖獣の毛だったりするのかな?

ちなみに、鳳凰の国からの祝いの品は”蓬莱の玉の枝”だそうだ。

根は白銀、茎は黄金、実は真珠でできている木の枝だって。
そっちの方がお宝じゃないか!


「わかった。何か作るよ」
『すまない、頼む』

何か、物凄く期待した目で見られてるし。
手持ちの材料で足りるかな……?


中央に穴の開いた石を、円形になるよう組んで。

ドリームキャッチャーの要領で、仮止め用の糸で細かい蜘蛛の巣状に編んだ円の中に、白い糸で九尾の狐をレース編みの要領でかたどってく。
目には青い石を使おう。

刺繍が終わったら、仮止め用の糸を切ると、狐だけが残る。


『おお……、どのように作ったのかと不思議に思っていたが。そういう方法だったか』
感心しながら、懐から雷音にあげた龍の飾りを取り出した。

それ、いつも持ち歩いてるのかよ。
もー、照れるだろ!


『しかし、速いな……』
雷音は感心している。

そりゃ、内職は時間との勝負だからな。
ストラップとか一個0・5円とかの世界なので数をこなさないと話にならない。しかも、商品なので手抜きは許されない。合格品を一時間に何十個作れるかが勝負だ。

いや、これは内職じゃないけど。


*****


『ふおおおお、ありがたき幸せ! 素晴らしい!』

出来上がった飾りを見て、飛陽は大喜びしてくれた。
良かった……。


内職だと、出来て当たり前だから。表立って褒められることはないので、こうして目の前で喜んでもらえるのは嬉しいものだ。


『愛らしい上に、このような素晴らしい技術までお持ちとは。是非とも我が国へ技術指導にいらして欲しいです』
飛陽に、刺繍の腕を見込まれてしまった。

ここには刺繍自体、ないようだ。


招待客が皇帝のツガイの意外な特技に驚きつつも満足した様子で。
宴はつつがなく終わった。
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