巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

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キノコマスター、修行する。

目指せキノコマスター

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頭の中に鳴り響く、レベルアップをしらせるファンファーレ。

「よっしゃあああ!! レベルカンストぉぉぉ!!!」
と、雄々しく力強く拳を突き出したのはいいものの。

この度めでたくレベルMAXになったのは、『キノコ狩り』のスキルだったりする。

今日から俺は、キノコマスターになったのである。
キノコの中のキノコ。いわばキングオブキノコ。俺にかかればどんな稀少なキノコも探し出して狩るぜ? ……って、全く格好がつかないけどな。


まだいるの? いつになったら魔王を倒しに行くの? という村人のなまぬる~い視線にはもう慣れた。
どうせ、高く売れるキノコを持って帰れば黙るんだから。

しょせん世の中、物を言うのは金なんだ。
これまでバイトもしたことがなく、学校、部活、家という狭い世界しか知らなくて世間の厳しさを知らないピュアだった俺も、異世界の荒波に揉まれて擦れちまったもんだ。
などとやさぐれてみたり。

やさぐれたくもなるよ。
だって。この状況、あんまりにも理不尽すぎる。


もう、半年くらい前になるだろうか?
”人々を苦しめる魔王を倒すため”とかいう理由で、ごく普通の高校生だった俺がこの世界に”勇者”として召喚されたのは。


*****


明日から夏休みだ! ヤッター、と。浮かれながら家に帰る途中だったと思う。

突然、足元の地面が無くなった。
落とし穴のようなものに落ちた感じで。魂抜けるかと思った。

どのくらい落ちたのか。
だめだこれ、絶対死ぬ、と。怖くなって目を閉じた。

でも、恐れてた衝撃は来なかった。
気がついたらこの、巨人ばかりの異世界にいた訳だ。しかも、手ぶらで。高校の制服のまま。


人の声がして。目を開けたら、やたらでっかい奴らに囲まれていた。
鼻が高くて掘りの深い顔とか、髪の色、浅黒い肌で。最初、外国人かと思った。

でも、外国人にしても大きすぎた。俺はこれでも180cmあるっていうのに、全員、俺よりも倍近く大きいんだ。かなりビビッた。
一瞬、自分の身長が縮んだのかと思ったくらいだ。

中学辺りからニョキニョキ背が伸びて。ここんところ、誰かを見下ろすことはあっても見下ろされることなんて滅多に無かったから、新鮮……というか、むしろ恐怖だった。取り囲まれて、やたらジロジロ見られてるし。


俺を呼び出した人……スデステ村の村長は、せっかく呼んだ”勇者”が小さくて弱そうなんで、がっかりしてた。周りにいた村人たちもだ。

俺だって、好きでここに来た訳じゃない。心構えもなく、いきなり召喚されたんだ。
高校最後の夏休みを楽しみにしてたのに。せめて一声かけてくれてもよくない? 理不尽な話だよな。


*****


この時点で言葉が通じたのは、俺を召喚したという魔法使いだけだった。
知らない土地で、言葉がわかる人がいたのはほっとした。

だけど、薄情な魔法使いは。俺をここに召喚した理由を説明して。
『料金分の仕事はしたよ。仕事は終わった』とか言って。

俺を置いて、旅に出てしまったのだ。
元々、旅の途中だったのを呼び止められてただけみたいだから、仕方ないんだけど。

『確かに君は魔王の力を抑えるために生まれた、を持つ者だよ。まだ弱いけどね』
とか意味不明なことを言い残して。

魔法使いは、村人が料金を惜しんだために、呼ばれた勇者……俺が最強レベルMAX状態じゃなくて、勇者として育てる必要があるってことは説明したようだ。


それで、俺が一人前の勇者になるまで、村長の家に住み込みで修行することになった。

がっかりムードな上に、言葉も通じない中、俺は頑張った。
英語は赤点常連なのに。異世界の言葉を覚えながら、地道にレベル上げをしていった。勇者としての修行だけじゃなく、村長の家の手伝いまでして。

人間、必死になれば何とかなるもんだ。今ではそこそこ会話が出来るようになった。
それで村人の陰口や、俺に対しての不満を知ったりして、いい事ばかりでもなかったけど。


討伐の練習として、まずは村の周りに出る、村人でも倒せるくらい弱い魔物退治から始めることになった。

勇者っていうなら、もっといい装備を用意してくれてもいいだろうに。装備は、着ていた夏服のみ。ここは夏でも涼しい国だというので、少々肌寒かったけど。俺に合うサイズの服もないし、仕方ない。武器は、その辺の木を削って作った棍棒だ。

村に金があまり無い……というかド貧乏なのは、村の様子を見てすぐにわかってたから、文句は言わなかったが。
っていうか、文句を言おうにも、まだよく言葉がわかんなかったともいう。


ろくな武器や防具を持ってないので、しばらくの間はなかなか強い敵には手を出せなかったっけ。
ほんと、大変だったなあ。


*****


初めて戦った、歩くキノコカミナルオンゴレベル1対勇者レベル1のバトルは、我ながら、かなり酷かったと思う。

胞子をまともに顔面に食らって、棍棒を落としてしまい、涙目になりながらひたすら目の前のキノコをぶん殴っていたらいつの間にか勝ってた、って感じ。
歩くキノコは、その辺の村人でも素手で勝てる程度の、弱~い敵だったんだ。
そんな敵に苦戦して、このザマだ。


キノコはぐしゃぐしゃだし。
これ、どうしたらいいんだろう、と、途方に暮れていた。
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