7 / 65
キノコマスター、旅立つ。
最初の村を出たらすぐ魔王城でした
しおりを挟む
今までの事を、身振り手振りも加えて説明した。
もっと、言葉を覚えておきたかった。
これがバルとの最後の会話になるかもしれないのに。
何故か、バルが一番驚いていたのは。俺が実は勇者だったとか、異世界から来たことではなく。俺の年齢は17歳だと言った時だった。
そんなに意外だったのか……? 12歳のファビオより小さいから、もっと子供だと思ってたのかも。
それに、異世界から勇者が来るのって、ここではあまり珍しくないことなのかもしれない。旅の魔法使いが出来ることだしな……。
*****
『成程。君は異世界から”勇者”として召喚されたんだね。道理で成長が早いはずだ。……君が頑張ったのも、勿論あるけど』
バルは俺の手を取って、手の平を見た。
毎日棍棒や剣を握っていたので血豆が破れてたこになっているし。家事を手伝ってたのもあって、ガサガサで荒れてしまってる。
バルの手は綺麗だから、ちょっと恥ずかしいな、と思ってたら。
「え、」
バルが、俺の手のひらをぺろりと舐めると。
たこも傷も、跡形なく消えていた。荒れてたのも治ってる。
「……ええっ!? マジで!?」
嘘だろ。どういうことだよ!? 呪文も唱えてなかったぞ?
思わず綺麗になった手を二度見して驚いている俺を見て、バルは得意そうに笑ってる。
『バル、医者? 魔法使い?』
服装的には、騎士とか剣を持って戦う職業なのに。魔法も使えるなんて。
『ふふ、何だと思う?』
と笑っていたバルが、突然真顔になった。
『すまない、急用が出来た。行かなくては。……では、また明日会おう』
そう言って。
すっと消えてしまった。
……今の、瞬間移動の魔法?
確か、ファビオのお祖母ちゃんの本に、物凄い高レベルの魔法使いしか使えないって書いてあった。
そうか。道理で現れる時、気配がないはずだよ。瞬間移動してたんだから。
バルは魔法剣士だったのか?
また明日、って言ってた。
明日、俺はもう、この森には来ないのに。
……魔王討伐の旅に、一緒に着いて行ってくれるとか?
まさかな。何だか忙しそうだし。
もしかしたら、見送りに来てくれるつもりなのかもしれない。
だとしたら。
今度はちゃんと、お別れの言葉を言えるかな。
*****
何と、罠を使わなくてもお化けウサギを狩ることが出来てしまった。
いい装備、マジ大事。
今度は無駄に苦しめずに息の根を止められたと思う。
美味しくいただきます。
お化けウサギを背負って村に戻ったら、すごく感謝された。
最後まで村のために頑張ってくれてありがとう、何もしてあげられなくてごめんね、って。
そういうつもりでもなかったんだけど。
村のために頑張ってたっていうより、自分のためっていうか。
早くレベル上げて、元の世界に帰りたかったから頑張ってたんだよな。
でも。いざレベルが上がって旅立つとなると。
心残りがあったんだ。
この村にっていうより、バルと会ったあの森に。
俺は自分で思ってたよりバルとのひと時の出会いを、会話を。
ずいぶんと心待ちにしてたようだ。
恩人だからかな?
その夜も、村のみんなが集まって。
みんなで俺が狩ってきたウサギ肉を焼いたのや、キノコを食べた。
こんな贅沢な食事は今日が最後かなあ、なんて言う村人もいた。
本当に、貧しい村だった。
だからこそ、一刻も早く、魔王を倒してもらいたかったんだろう。
自分で食い扶持を稼げるようになるまで置いてくれたお礼は出来たようだ。
魔王を倒したら、みんなの生活が楽になるのかな?
だったら、頑張らないと。
言葉はまだまだだけど。旅の途中でも勉強は出来るだろう。
レベルだって、今より上がるかもしれないし。
*****
翌朝。
朝食を済ませ、装備を身に着けていたら。
朝食に顔を出さなかったファビオが、二階の自室から駆け下りてきた。
泣き腫らしたみたいに目元や鼻を真っ赤にして。
『これ、持っていけ。勇者の魔法で魔王なんてとっととやっつけて、戻って来るんだぞ!』
俺に、魔法書を渡してくれた。
大切な、お祖母ちゃんの形見なのに。
『ありがとう、ファビオ』
『絶対、戻って来いよな。忘れるなよ、俺たちはもう、兄弟みたいなもんなんだからな!』
俺よりも大きな子供に抱きつかれて、大泣きされてしまった。
父親のマルシオも涙目になっている。
『今まで、ありがとう。……行ってきます』
さようなら、じゃなくて。
行ってきますを別れの言葉に選んだ。
出掛けに、白いマントを渡された。
村の女性達が、お化けウサギの毛皮でフードを作ったマントを縫ってくれたようだ。
もふもふだ。
白い鎧に、皮のブーツ。マントを羽織って、腰から剣を下げて。
まるで勇者みたいだ。って勇者だった。
移動は白馬じゃなく、徒歩だけどな! 馬、乗れないし。
*****
ところで。
『俺、どこへ行けばいい?』
今まで一番聞きたかったのに聞けなかった質問をする。
村長は、あ、そういえば言ってなかった、って顔をして。
『向かうのは、あの森の向こうにある魔王城だ。そこに住むのは恐ろしくも冷酷な魔術師の王、バルタサール=ウルタード。死人のような白い肌に世にも不吉な黒い鎧を身につけているという……』
え、最初の村を出たら。もうラスボスなの? 早くない?
っていうか。
白い肌に、黒い鎧って。なんか、どこかで見知ったような……。
バルタサール? ……バル……。
……まあいいか!
『行ってきます!!』
村のみんなに見送られて、旅立った。
たった数キロ先にある、魔王城へ。
もっと、言葉を覚えておきたかった。
これがバルとの最後の会話になるかもしれないのに。
何故か、バルが一番驚いていたのは。俺が実は勇者だったとか、異世界から来たことではなく。俺の年齢は17歳だと言った時だった。
そんなに意外だったのか……? 12歳のファビオより小さいから、もっと子供だと思ってたのかも。
それに、異世界から勇者が来るのって、ここではあまり珍しくないことなのかもしれない。旅の魔法使いが出来ることだしな……。
*****
『成程。君は異世界から”勇者”として召喚されたんだね。道理で成長が早いはずだ。……君が頑張ったのも、勿論あるけど』
バルは俺の手を取って、手の平を見た。
毎日棍棒や剣を握っていたので血豆が破れてたこになっているし。家事を手伝ってたのもあって、ガサガサで荒れてしまってる。
バルの手は綺麗だから、ちょっと恥ずかしいな、と思ってたら。
「え、」
バルが、俺の手のひらをぺろりと舐めると。
たこも傷も、跡形なく消えていた。荒れてたのも治ってる。
「……ええっ!? マジで!?」
嘘だろ。どういうことだよ!? 呪文も唱えてなかったぞ?
思わず綺麗になった手を二度見して驚いている俺を見て、バルは得意そうに笑ってる。
『バル、医者? 魔法使い?』
服装的には、騎士とか剣を持って戦う職業なのに。魔法も使えるなんて。
『ふふ、何だと思う?』
と笑っていたバルが、突然真顔になった。
『すまない、急用が出来た。行かなくては。……では、また明日会おう』
そう言って。
すっと消えてしまった。
……今の、瞬間移動の魔法?
確か、ファビオのお祖母ちゃんの本に、物凄い高レベルの魔法使いしか使えないって書いてあった。
そうか。道理で現れる時、気配がないはずだよ。瞬間移動してたんだから。
バルは魔法剣士だったのか?
また明日、って言ってた。
明日、俺はもう、この森には来ないのに。
……魔王討伐の旅に、一緒に着いて行ってくれるとか?
まさかな。何だか忙しそうだし。
もしかしたら、見送りに来てくれるつもりなのかもしれない。
だとしたら。
今度はちゃんと、お別れの言葉を言えるかな。
*****
何と、罠を使わなくてもお化けウサギを狩ることが出来てしまった。
いい装備、マジ大事。
今度は無駄に苦しめずに息の根を止められたと思う。
美味しくいただきます。
お化けウサギを背負って村に戻ったら、すごく感謝された。
最後まで村のために頑張ってくれてありがとう、何もしてあげられなくてごめんね、って。
そういうつもりでもなかったんだけど。
村のために頑張ってたっていうより、自分のためっていうか。
早くレベル上げて、元の世界に帰りたかったから頑張ってたんだよな。
でも。いざレベルが上がって旅立つとなると。
心残りがあったんだ。
この村にっていうより、バルと会ったあの森に。
俺は自分で思ってたよりバルとのひと時の出会いを、会話を。
ずいぶんと心待ちにしてたようだ。
恩人だからかな?
その夜も、村のみんなが集まって。
みんなで俺が狩ってきたウサギ肉を焼いたのや、キノコを食べた。
こんな贅沢な食事は今日が最後かなあ、なんて言う村人もいた。
本当に、貧しい村だった。
だからこそ、一刻も早く、魔王を倒してもらいたかったんだろう。
自分で食い扶持を稼げるようになるまで置いてくれたお礼は出来たようだ。
魔王を倒したら、みんなの生活が楽になるのかな?
だったら、頑張らないと。
言葉はまだまだだけど。旅の途中でも勉強は出来るだろう。
レベルだって、今より上がるかもしれないし。
*****
翌朝。
朝食を済ませ、装備を身に着けていたら。
朝食に顔を出さなかったファビオが、二階の自室から駆け下りてきた。
泣き腫らしたみたいに目元や鼻を真っ赤にして。
『これ、持っていけ。勇者の魔法で魔王なんてとっととやっつけて、戻って来るんだぞ!』
俺に、魔法書を渡してくれた。
大切な、お祖母ちゃんの形見なのに。
『ありがとう、ファビオ』
『絶対、戻って来いよな。忘れるなよ、俺たちはもう、兄弟みたいなもんなんだからな!』
俺よりも大きな子供に抱きつかれて、大泣きされてしまった。
父親のマルシオも涙目になっている。
『今まで、ありがとう。……行ってきます』
さようなら、じゃなくて。
行ってきますを別れの言葉に選んだ。
出掛けに、白いマントを渡された。
村の女性達が、お化けウサギの毛皮でフードを作ったマントを縫ってくれたようだ。
もふもふだ。
白い鎧に、皮のブーツ。マントを羽織って、腰から剣を下げて。
まるで勇者みたいだ。って勇者だった。
移動は白馬じゃなく、徒歩だけどな! 馬、乗れないし。
*****
ところで。
『俺、どこへ行けばいい?』
今まで一番聞きたかったのに聞けなかった質問をする。
村長は、あ、そういえば言ってなかった、って顔をして。
『向かうのは、あの森の向こうにある魔王城だ。そこに住むのは恐ろしくも冷酷な魔術師の王、バルタサール=ウルタード。死人のような白い肌に世にも不吉な黒い鎧を身につけているという……』
え、最初の村を出たら。もうラスボスなの? 早くない?
っていうか。
白い肌に、黒い鎧って。なんか、どこかで見知ったような……。
バルタサール? ……バル……。
……まあいいか!
『行ってきます!!』
村のみんなに見送られて、旅立った。
たった数キロ先にある、魔王城へ。
45
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します
市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。
四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。
だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。
自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。
※性描写あり。他サイトにも掲載しています。
【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は?
最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか?
人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。
よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。
ハッピーエンド確定
※は性的描写あり
【完結】2021/10/31
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ
2021/10/03 エブリスタ、BLカテゴリー 1位
限界オタクだった俺が異世界に転生して王様になったら、何故か聖剣を抜いて勇者にクラスチェンジした元近衛騎士に娶られました。
篠崎笙
BL
限界ヲタクだった来栖翔太はトラックに撥ねられ、肌色の本を撒き散らして無惨に死んだ。だが、異世界で美少年のクリスティアン王子として転生する。ヲタクな自分を捨て、立派な王様になるべく努力した王子だったが。近衛騎士のアルベルトが勇者にクラスチェンジし、竜を退治した褒美として結婚するように脅され……。
俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜
陽七 葵
BL
主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。
この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。
そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!
ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。
友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?
オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。
※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※
救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。
篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる