巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

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キノコマスター、旅立つ。

最初の村を出たらすぐ魔王城でした

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今までの事を、身振り手振りも加えて説明した。

もっと、言葉を覚えておきたかった。
これがバルとの最後の会話になるかもしれないのに。


何故か、バルが一番驚いていたのは。俺が実は勇者だったとか、異世界から来たことではなく。俺の年齢は17歳だと言った時だった。
そんなに意外だったのか……? 12歳のファビオより小さいから、もっと子供だと思ってたのかも。

それに、異世界から勇者が来るのって、ここではあまり珍しくないことなのかもしれない。旅の魔法使いが出来ることだしな……。


*****


『成程。君は異世界から”勇者”として召喚されたんだね。道理で成長が早いはずだ。……君が頑張ったのも、勿論あるけど』
バルは俺の手を取って、手の平を見た。

毎日棍棒や剣を握っていたので血豆が破れてたこになっているし。家事を手伝ってたのもあって、ガサガサで荒れてしまってる。
バルの手は綺麗だから、ちょっと恥ずかしいな、と思ってたら。

「え、」
バルが、俺の手のひらをぺろりと舐めると。

たこも傷も、跡形なく消えていた。荒れてたのも治ってる。

「……ええっ!? マジで!?」
嘘だろ。どういうことだよ!? 呪文も唱えてなかったぞ?


思わず綺麗になった手を二度見して驚いている俺を見て、バルは得意そうに笑ってる。

『バル、医者? 魔法使い?』
服装的には、騎士とか剣を持って戦う職業なのに。魔法も使えるなんて。

『ふふ、何だと思う?』
と笑っていたバルが、突然真顔になった。

『すまない、急用が出来た。行かなくては。……では、また明日会おう』
そう言って。

すっと消えてしまった。


……今の、瞬間移動の魔法?
確か、ファビオのお祖母ちゃんの本に、物凄い高レベルの魔法使いしか使えないって書いてあった。
そうか。道理で現れる時、気配がないはずだよ。瞬間移動してたんだから。

バルは魔法剣士だったのか?


また明日、って言ってた。
明日、俺はもう、この森には来ないのに。

……魔王討伐の旅に、一緒に着いて行ってくれるとか?
まさかな。何だか忙しそうだし。


もしかしたら、見送りに来てくれるつもりなのかもしれない。
だとしたら。

今度はちゃんと、お別れの言葉を言えるかな。


*****


何と、罠を使わなくてもお化けウサギを狩ることが出来てしまった。
いい装備、マジ大事。

今度は無駄に苦しめずに息の根を止められたと思う。
美味しくいただきます。


お化けウサギを背負って村に戻ったら、すごく感謝された。
最後まで村のために頑張ってくれてありがとう、何もしてあげられなくてごめんね、って。

そういうつもりでもなかったんだけど。
村のために頑張ってたっていうより、自分のためっていうか。

早くレベル上げて、元の世界に帰りたかったから頑張ってたんだよな。

でも。いざレベルが上がって旅立つとなると。
心残りがあったんだ。

この村にっていうより、バルと会ったあの森に。


俺は自分で思ってたよりバルとのひと時の出会いを、会話を。
ずいぶんと心待ちにしてたようだ。

恩人だからかな?


その夜も、村のみんなが集まって。
みんなで俺が狩ってきたウサギ肉を焼いたのや、キノコを食べた。

こんな贅沢な食事は今日が最後かなあ、なんて言う村人もいた。


本当に、貧しい村だった。
だからこそ、一刻も早く、魔王を倒してもらいたかったんだろう。

自分で食い扶持を稼げるようになるまで置いてくれたお礼は出来たようだ。


魔王を倒したら、みんなの生活が楽になるのかな?
だったら、頑張らないと。

言葉はまだまだだけど。旅の途中でも勉強は出来るだろう。
レベルだって、今より上がるかもしれないし。


*****


翌朝。
朝食を済ませ、装備を身に着けていたら。

朝食に顔を出さなかったファビオが、二階の自室から駆け下りてきた。
泣き腫らしたみたいに目元や鼻を真っ赤にして。


『これ、持っていけ。勇者の魔法で魔王なんてとっととやっつけて、戻って来るんだぞ!』
俺に、魔法書を渡してくれた。

大切な、お祖母ちゃんの形見なのに。


『ありがとう、ファビオ』

『絶対、戻って来いよな。忘れるなよ、俺たちはもう、兄弟みたいなもんなんだからな!』
俺よりも大きな子供に抱きつかれて、大泣きされてしまった。
父親のマルシオも涙目になっている。


『今まで、ありがとう。……行ってきます』

さようなら、じゃなくて。
行ってきますを別れの言葉に選んだ。


出掛けに、白いマントを渡された。

村の女性達が、お化けウサギの毛皮でフードを作ったマントを縫ってくれたようだ。
もふもふだ。

白い鎧に、皮のブーツ。マントを羽織って、腰から剣を下げて。
まるで勇者みたいだ。って勇者だった。


移動は白馬じゃなく、徒歩だけどな! 馬、乗れないし。


*****


ところで。
『俺、どこへ行けばいい?』

今まで一番聞きたかったのに聞けなかった質問をする。

村長は、あ、そういえば言ってなかった、って顔をして。
『向かうのは、あの森の向こうにある魔王城だ。そこに住むのは恐ろしくも冷酷な魔術師の王、バルタサール=ウルタード。死人のような白い肌に世にも不吉な黒い鎧を身につけているという……』


え、最初の村を出たら。もうラスボスなの? 早くない?

っていうか。
白い肌に、黒い鎧って。なんか、どこかで見知ったような……。


バルタサール? ……バル……。


……まあいいか!


『行ってきます!!』
村のみんなに見送られて、旅立った。


たった数キロ先にある、魔王城へ。
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