巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

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キノコマスター、王様のキノコをGETする。

王様のキノコ

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ピニョンの木。
この木の根元辺りだけに生える、珍しいキノコ。

乳キノコレーチェオンゴ発見! ゲットだぜ!


小ぶりだけど、汁をたっぷり含んでいるのが手に取っただけでわかる。
これは上物だ。

ほくほく気分で狩っていく。
まだ小さいのや、育ちすぎたのは次代の種株として残しておかないといけない。

珍しいからといって根こそぎ狩るのはハンターとして失格である。


今の俺はキノコの達人。
キノコハンター、キングオブキノコ。いわばマスターオブキノコである。

キノコって英語で何ていうのかとか、もはや気にしない。

それはともかく。
達人級マスタークラスのキノコハンターともなれば、目を閉じただけで、質のいいキノコの気配がわかるものだ。


……大物キノコの気配がする。

この気配は。
チャンピニョンに次ぐ、珍品中の珍品。飛ぶキノコボラールオンゴか?

大胆に肉厚に切ってソテーにすると美味しい。バターをのせればもっと美味しいだろうけど、贅沢はいわない。


「そこだぁっ!!」

目を閉じた状態で、キノコハンターとして勘の赴くまま、空中に手を伸ばす。
超大物だ。


「うっ、」


ん? 呻き声?
飛ぶキノコって、魔物化したキノコだったっけ?

感触も、何だかおかしい。服みたいな手触りだ。


*****


結論から言うと。
俺が掴んだのは、キノコはキノコでも、俺が一人で庭に出たと聞いて、心配して様子を見に来たバルのだった。


……大きかった。
色んな意味で、とてつもなく大物のキノコをゲットしてしまった。

本物のキングオブキノコだ。
王様だし。サイズ的にも。スーパーウルトラレアキノコだけど。もちろん、即リリースである。

あー、びっくりした。


「マエステロデオンゴス……なんと、達人にまで到達していたとは……見事だ……」
バルは若干前屈みになりながらも俺の成長を称えてくれた。

こっちでもグッジョブ! って感じで親指立てるんだな。

うう……思い切り握っちゃった……。
バルの。

手に、生温かい、リアルな感触が残ってる。

バルはまだ痛そうだ。前屈みのまま、痛みに耐えているような表情をしてる。
本当に申し訳ない。……小刻みにジャンプしてみる? ってそれはタマのダメージ対処法だった。


残念ながら、飛ぶキノコは目の前にバルが現れたので、怯えて逃げてしまったそうだ。
なので、俺は悪くない。

でもごめん。

「ははあ、これが噂のレーチェオンゴですか。まさかここの敷地内に生えてるなんて寡聞にして存じあげませんで。ボラールオンゴは残念でしたね。どこかの王様が邪魔をしたせいで」
バルと一緒に来ていたエリアスが、興味深げに乳キノコを見ている。

実物は初めて見たそうだ。
これもレアなキノコだもんな。

「野菜と一緒に煮ると、ホワイトシチューみたいで美味しいんだよ」

「では、料理長にそう言って渡しておきますね」
乳キノコを盛ったかごを手に、エリアスが笑顔で言った。

今日の夕食のメニューになるらしい。
楽しみだ。


「私は優輝がレーチェオンゴの汁を絞るところが見たい」
バルは真顔で、乳キノコを指差して言った。

「絞っちゃったら、煮込んでもダシが出ないけど……」

このまま煮たほうが美味しい。
絞り汁は飲んでも美味しいけど。乳キノコは鮮度が命だからなあ。

「何どさくさ紛れに薄汚い欲望だだ漏れにしてるんです……?」
エリアスはバルを軽蔑の眼差しで見ていた。

それは、側近が主人に対してしていい顔じゃないと思う。


「ああ、そうだ」
バルは思い出したように、俺の手を取った。

もう大丈夫そうだ。良かった。

「会議の結果だが。スデステ村は、私の管轄ということで受け入れが決定したことを伝えようと思い、君を探していたのだ」


*****


おお、スデステ村は国王直轄になるのか。それ、何かすごいな。
一番近いから?

「え、ホント!? 良かった。今からだとあれだし、明日にでも話しに行こうか。……早いほうがいいかな?」


気が付けば、もう日が傾いてる。
何かやたら長い会議だったけど。無事終わったらしい。

スデステ村の話だけじゃなく、他の議題も色々あったので思ったよりも長引いてしまったそうだ。
国王って大変なんだな。


「明日にしなさい。私の代理として、エリアスをつけよう」
バルだと魔王呼ばわりされて怖がられて村人との話し合いには行けないから、代わりにエリアスがついてきてくれるという。

バル、こんなにイケメンなのになあ。
スデステ村の人たちの美的感覚が違うのかもしれないけど。


「では、異世界の交渉術、勉強させていただきます」
エリアスに、恭しく頭を下げられる。

「ええっ? いや、交渉とか、そんな立派なもんじゃないよ? 普通に話すだけだし……」

そんな、過剰に期待されると、困ってしまう。
プロでもなんでもないし。恥ずかしい。


「その”普通に話す”ことを、今まで我々は考えもしなかったのだからね。彼らが君を異世界より召喚したのは英断だったな」
バルは、晴れやかな顔をしている。

長年厄介に思っていたことが解決するかもしれないからかな?
役に立てたなら良かった。

話し合い、うまくいくといいな。
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