巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

文字の大きさ
30 / 65
キノコマスター、決意する。

この世界を守りたい

しおりを挟む
「私達の結婚を祝いに集まった皆に、礼を言おう」

バルが教会の階段の上から、よく通る声で言うと。
みんなからご成婚おめでとうございます、との声が上がる。

「だが、同時にめでたくない報せもある。……もうすぐ、”魔王”が目覚める」


え? 今、この場で言うの!? 結婚式の直後でなくても良くない?
いや、報せるならなるべく早いほうがいいのか?

お祭り騒ぎから一転。
国王からの突然の爆弾発言に、みんなしんと静まり返っている。

固唾を呑んで、こちらを見上げてる。
当たり前だけど。魔王到来の情報を聞いて、不安そうな顔だ。


「しかし、私は勇者であり、今日、最愛の后となった優輝を、命をかけて守り、その力となろう。……我が国民よ、安心するが良い。此度も無事、魔王を封じて見せようぞ!」

国民達は、バルの力強い宣言に。
わあっ、と歓声を上げた。

それが、大きな波のように広がっていく。
希望の声だ。

自分の国の王様が世界一の魔術師で魔導騎士なんて、もう安心感しかないよな。


俺もレベル上げ、頑張らないと。
バルと、バルの大切な、この世界を守るために。


*****


「いやー、でもまさか国王のやる気の みなもとが、一刻も早く花嫁と性交したいからだとは、ここに集まってる誰も、思いもしてないだろうねー」
いつの間にか後ろに来ていたウィルフレドが呟いた。

直球過ぎる!

「人間らしくていいじゃないですか。むしろ今までのむっつりした陛下よりも好感を持ちましたよ、私は」
エリアスは笑ってる。

バルって今まで、むっつりだったの?

「あはは、確かにね。……あ、そうだ。だけど。マリスマの海底火山が噴火しそうになってたよ。とりあえず鎮めておいたけどね」
ウィルフレドはバルに告げた。

「マリスマ……? 近いな」

マリスマというのは、この間、ウィルフレドを見た辺りのようだ。
魚がいっぱいいて、水も澄んでて綺麗だったのに。あの辺、噴火しそうだったんだ?

魔法で鎮めた後だったのかな?


「そんな訳だから。とにかく修行、急いでよね。じゃ、二人とも、結婚おめでとう! ……忠告、くれぐれも忘れないように!」
ウィルフレドはバルに念を押すように言うと。

頭からフードを被って、ローブの裾をひるがえした。
次の瞬間。ウィルフレドの姿がぱっと消えた。

さすが上級魔術師というか。高度な移動魔法を、無詠唱で簡単に使うなあ。


あの時、ウィルフレドが海の近くにいたのは、魔王が目覚める兆候……天変地異のひとつ、海底火山の噴火を鎮めるためだったんだ。
守銭奴って言ってたけど。実は。いい魔術師じゃないか?

さすがに世界の危機には動くのかも。と思っていたら。


「……奴は、勝手に押し付けては情報料、処置料と称して大金を要求する。だからあまり頼りたくないのだがね……」
バルは国民に手を振りながら、そっと溜め息を吐いた。

今回も、請求書を置いて行ったらしい。
ちゃっかりしてるなあ。


*****


そういえば、ウィルフレドの外見はこのセントロ王国の人っぽくないけど。この国が鎖国する前に来た移民とか?
でも、バルの口ぶりだと、どうやら国外にも普通に出て回ってるようだし。
国籍を持たない自由人って感じだ。


それで思い出した。
隣国の人は、海から泳いだり、船とかで来たりしないのかな、と思って聞いてみたら。

こちらの世界の人にはそもそも海を、という考え自体が無いようだ。海には危険な怪物がうじゃうじゃいるからだって。巨大なイカやタコとか出るのかな?
透明で、泳いだら気持ち良さそうだったのにな。

船は、海流の問題で、こっちには来れないようになってるとか。
なるほど。


バルの片腕に乗せられた状態で、教会から、王都の大通りまで移動してきた。
上腕の力だけで支えてる。力持ちだ。

元の世界じゃ、誰かを持ち上げることはあっても、誰かから持ち上げられることなんて無かったっけ。
あってもせいぜい小学生の時までだったかな?

従兄弟の子とかが、俺によく肩車してってせがんでた気持ちがわかったかも。
いつもより視界が高くて新鮮、というか面白い。


「バル、重くない?」
腕、疲れないかな、と思って聞いたら。

「ふふ、まるで羽のように軽いぞ?」
幸せそうに微笑まれた。

足取りも、全く重量を感じさせない。
重さを軽減させる魔法かな?

会話が聞こえていた人達から、おめでとうの言葉と共に、お熱いですね、とか言われた。


うう。
照れる。


*****


「もう少し、私の可愛い花嫁を皆に見せびらかしてやりたいところだが。そろそろ戻るか」
またそんなこと言って。

王都の屋敷に戻るのかな、と思ったら。
静かの森の城に帰るそうだ。

本来、王都の屋敷で王族や領主たちと結婚祝いの晩餐会をする予定があったけど。魔王に備えて対策をしないといけない、とかで。
みんなもう、自分たちの領地へ戻ったらしい。


バルがこうして歩いてみせてるのは、国民へ安心感を与えるよう、アピールするためだそうだ。
つくづくサービス精神旺盛な王様だ。

祝うのを当然、としなくて。
祝いに来てくれた国民に配る引き出物、というかお祝いのお菓子とか、神官たちの手によって配られている。

スデステ村にも、お祝い品を届けたそうだ。
みんな、喜んでくれるといいな。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します

市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。 四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。 だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。 自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。 ※性描写あり。他サイトにも掲載しています。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

処理中です...