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キノコマスター、決意する。
この世界を守りたい
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「私達の結婚を祝いに集まった皆に、礼を言おう」
バルが教会の階段の上から、よく通る声で言うと。
みんなからご成婚おめでとうございます、との声が上がる。
「だが、同時にめでたくない報せもある。……もうすぐ、”魔王”が目覚める」
え? 今、この場で言うの!? 結婚式の直後でなくても良くない?
いや、報せるならなるべく早いほうがいいのか?
お祭り騒ぎから一転。
国王からの突然の爆弾発言に、みんなしんと静まり返っている。
固唾を呑んで、こちらを見上げてる。
当たり前だけど。魔王到来の情報を聞いて、不安そうな顔だ。
「しかし、私は勇者であり、今日、最愛の后となった優輝を、命をかけて守り、その力となろう。……我が国民よ、安心するが良い。此度も無事、魔王を封じて見せようぞ!」
国民達は、バルの力強い宣言に。
わあっ、と歓声を上げた。
それが、大きな波のように広がっていく。
希望の声だ。
自分の国の王様が世界一の魔術師で魔導騎士なんて、もう安心感しかないよな。
俺もレベル上げ、頑張らないと。
バルと、バルの大切な、この世界を守るために。
*****
「いやー、でもまさか国王のやる気の 源が、一刻も早く花嫁と性交したいからだとは、ここに集まってる誰も、思いもしてないだろうねー」
いつの間にか後ろに来ていたウィルフレドが呟いた。
直球過ぎる!
「人間らしくていいじゃないですか。むしろ今までのむっつりした陛下よりも好感を持ちましたよ、私は」
エリアスは笑ってる。
バルって今まで、むっつりだったの?
「あはは、確かにね。……あ、そうだ。例の兆候だけど。マリスマの海底火山が噴火しそうになってたよ。とりあえず鎮めておいたけどね」
ウィルフレドはバルに告げた。
「マリスマ……? 近いな」
マリスマというのは、この間、ウィルフレドを見た辺りのようだ。
魚がいっぱいいて、水も澄んでて綺麗だったのに。あの辺、噴火しそうだったんだ?
魔法で鎮めた後だったのかな?
「そんな訳だから。とにかく修行、急いでよね。じゃ、二人とも、結婚おめでとう! ……忠告、くれぐれも忘れないように!」
ウィルフレドはバルに念を押すように言うと。
頭からフードを被って、ローブの裾をひるがえした。
次の瞬間。ウィルフレドの姿がぱっと消えた。
さすが上級魔術師というか。高度な移動魔法を、無詠唱で簡単に使うなあ。
あの時、ウィルフレドが海の近くにいたのは、魔王が目覚める兆候……天変地異のひとつ、海底火山の噴火を鎮めるためだったんだ。
守銭奴って言ってたけど。実は。いい魔術師じゃないか?
さすがに世界の危機には動くのかも。と思っていたら。
「……奴は、勝手に押し付けては情報料、処置料と称して大金を要求する。だからあまり頼りたくないのだがね……」
バルは国民に手を振りながら、そっと溜め息を吐いた。
今回も、請求書を置いて行ったらしい。
ちゃっかりしてるなあ。
*****
そういえば、ウィルフレドの外見はこのセントロ王国の人っぽくないけど。この国が鎖国する前に来た移民とか?
でも、バルの口ぶりだと、どうやら国外にも普通に出て回ってるようだし。
国籍を持たない自由人って感じだ。
それで思い出した。
隣国の人は、海から泳いだり、船とかで来たりしないのかな、と思って聞いてみたら。
こちらの世界の人にはそもそも海を泳ぐ、という考え自体が無いようだ。海には危険な怪物がうじゃうじゃいるからだって。巨大なイカやタコとか出るのかな?
透明で、泳いだら気持ち良さそうだったのにな。
船は、海流の問題で、こっちには来れないようになってるとか。
なるほど。
バルの片腕に乗せられた状態で、教会から、王都の大通りまで移動してきた。
上腕の力だけで支えてる。力持ちだ。
元の世界じゃ、誰かを持ち上げることはあっても、誰かから持ち上げられることなんて無かったっけ。
あってもせいぜい小学生の時までだったかな?
従兄弟の子とかが、俺によく肩車してってせがんでた気持ちがわかったかも。
いつもより視界が高くて新鮮、というか面白い。
「バル、重くない?」
腕、疲れないかな、と思って聞いたら。
「ふふ、まるで羽のように軽いぞ?」
幸せそうに微笑まれた。
足取りも、全く重量を感じさせない。
重さを軽減させる魔法かな?
会話が聞こえていた人達から、おめでとうの言葉と共に、お熱いですね、とか言われた。
うう。
照れる。
*****
「もう少し、私の可愛い花嫁を皆に見せびらかしてやりたいところだが。そろそろ戻るか」
またそんなこと言って。
王都の屋敷に戻るのかな、と思ったら。
静かの森の城に帰るそうだ。
本来、王都の屋敷で王族や領主たちと結婚祝いの晩餐会をする予定があったけど。魔王に備えて対策をしないといけない、とかで。
みんなもう、自分たちの領地へ戻ったらしい。
バルがこうして歩いてみせてるのは、国民へ安心感を与えるよう、アピールするためだそうだ。
つくづくサービス精神旺盛な王様だ。
祝うのを当然、としなくて。
祝いに来てくれた国民に配る引き出物、というかお祝いのお菓子とか、神官たちの手によって配られている。
スデステ村にも、お祝い品を届けたそうだ。
みんな、喜んでくれるといいな。
バルが教会の階段の上から、よく通る声で言うと。
みんなからご成婚おめでとうございます、との声が上がる。
「だが、同時にめでたくない報せもある。……もうすぐ、”魔王”が目覚める」
え? 今、この場で言うの!? 結婚式の直後でなくても良くない?
いや、報せるならなるべく早いほうがいいのか?
お祭り騒ぎから一転。
国王からの突然の爆弾発言に、みんなしんと静まり返っている。
固唾を呑んで、こちらを見上げてる。
当たり前だけど。魔王到来の情報を聞いて、不安そうな顔だ。
「しかし、私は勇者であり、今日、最愛の后となった優輝を、命をかけて守り、その力となろう。……我が国民よ、安心するが良い。此度も無事、魔王を封じて見せようぞ!」
国民達は、バルの力強い宣言に。
わあっ、と歓声を上げた。
それが、大きな波のように広がっていく。
希望の声だ。
自分の国の王様が世界一の魔術師で魔導騎士なんて、もう安心感しかないよな。
俺もレベル上げ、頑張らないと。
バルと、バルの大切な、この世界を守るために。
*****
「いやー、でもまさか国王のやる気の 源が、一刻も早く花嫁と性交したいからだとは、ここに集まってる誰も、思いもしてないだろうねー」
いつの間にか後ろに来ていたウィルフレドが呟いた。
直球過ぎる!
「人間らしくていいじゃないですか。むしろ今までのむっつりした陛下よりも好感を持ちましたよ、私は」
エリアスは笑ってる。
バルって今まで、むっつりだったの?
「あはは、確かにね。……あ、そうだ。例の兆候だけど。マリスマの海底火山が噴火しそうになってたよ。とりあえず鎮めておいたけどね」
ウィルフレドはバルに告げた。
「マリスマ……? 近いな」
マリスマというのは、この間、ウィルフレドを見た辺りのようだ。
魚がいっぱいいて、水も澄んでて綺麗だったのに。あの辺、噴火しそうだったんだ?
魔法で鎮めた後だったのかな?
「そんな訳だから。とにかく修行、急いでよね。じゃ、二人とも、結婚おめでとう! ……忠告、くれぐれも忘れないように!」
ウィルフレドはバルに念を押すように言うと。
頭からフードを被って、ローブの裾をひるがえした。
次の瞬間。ウィルフレドの姿がぱっと消えた。
さすが上級魔術師というか。高度な移動魔法を、無詠唱で簡単に使うなあ。
あの時、ウィルフレドが海の近くにいたのは、魔王が目覚める兆候……天変地異のひとつ、海底火山の噴火を鎮めるためだったんだ。
守銭奴って言ってたけど。実は。いい魔術師じゃないか?
さすがに世界の危機には動くのかも。と思っていたら。
「……奴は、勝手に押し付けては情報料、処置料と称して大金を要求する。だからあまり頼りたくないのだがね……」
バルは国民に手を振りながら、そっと溜め息を吐いた。
今回も、請求書を置いて行ったらしい。
ちゃっかりしてるなあ。
*****
そういえば、ウィルフレドの外見はこのセントロ王国の人っぽくないけど。この国が鎖国する前に来た移民とか?
でも、バルの口ぶりだと、どうやら国外にも普通に出て回ってるようだし。
国籍を持たない自由人って感じだ。
それで思い出した。
隣国の人は、海から泳いだり、船とかで来たりしないのかな、と思って聞いてみたら。
こちらの世界の人にはそもそも海を泳ぐ、という考え自体が無いようだ。海には危険な怪物がうじゃうじゃいるからだって。巨大なイカやタコとか出るのかな?
透明で、泳いだら気持ち良さそうだったのにな。
船は、海流の問題で、こっちには来れないようになってるとか。
なるほど。
バルの片腕に乗せられた状態で、教会から、王都の大通りまで移動してきた。
上腕の力だけで支えてる。力持ちだ。
元の世界じゃ、誰かを持ち上げることはあっても、誰かから持ち上げられることなんて無かったっけ。
あってもせいぜい小学生の時までだったかな?
従兄弟の子とかが、俺によく肩車してってせがんでた気持ちがわかったかも。
いつもより視界が高くて新鮮、というか面白い。
「バル、重くない?」
腕、疲れないかな、と思って聞いたら。
「ふふ、まるで羽のように軽いぞ?」
幸せそうに微笑まれた。
足取りも、全く重量を感じさせない。
重さを軽減させる魔法かな?
会話が聞こえていた人達から、おめでとうの言葉と共に、お熱いですね、とか言われた。
うう。
照れる。
*****
「もう少し、私の可愛い花嫁を皆に見せびらかしてやりたいところだが。そろそろ戻るか」
またそんなこと言って。
王都の屋敷に戻るのかな、と思ったら。
静かの森の城に帰るそうだ。
本来、王都の屋敷で王族や領主たちと結婚祝いの晩餐会をする予定があったけど。魔王に備えて対策をしないといけない、とかで。
みんなもう、自分たちの領地へ戻ったらしい。
バルがこうして歩いてみせてるのは、国民へ安心感を与えるよう、アピールするためだそうだ。
つくづくサービス精神旺盛な王様だ。
祝うのを当然、としなくて。
祝いに来てくれた国民に配る引き出物、というかお祝いのお菓子とか、神官たちの手によって配られている。
スデステ村にも、お祝い品を届けたそうだ。
みんな、喜んでくれるといいな。
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