巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

文字の大きさ
50 / 65
異世界の王様、日本へ行く。

花嫁修業?

しおりを挟む
「あれ? 誰も反対しないの?」

てっきり、結婚には大反対されるかと思ったけど。男同士だし。
特に母ちゃんからは。


親父は言いにくそうに。
「その、あれだ。お互い、す、好いているんだろう? 見ればわかる。わたし達がいくら反対しようと、この方と一緒に、その異世界とやらに行く気だと」

それは。
確かにそうだけど。

「この方なら、おまえを任せられるという安心感がある。だから反対はしない」
親父……。さすが、見る目があるぜ。


「この子、素直なだけが取り柄で。こんな不出来な息子が王妃で、本当にいいんですか?」
母ちゃんひどい。

「とんでもない。我が国……いえ、向こうの世界にとって、優輝は世界を救った救世主です。彼が召喚されなかったら、どうなっていたことか。それと、謙虚というか、卑下をするのはこちらの国の習慣なのでしょうか? しかし、私の愛する人を悪く言うのはやめていただけますか? 優輝は私にとって、何よりも愛おしい、かけがえのない伴侶ですので」

きっぱりと言って。
俺を含め、その場にいる全員が、照れて赤くなった。

言った当人も真っ赤だ。
本来、あっちじゃ愛してるとか人前では言わない言葉なのに、言ってくれたんだよな。


ああもう、バル大好き。


*****


「成績がアヒルの競争なのは謙虚じゃなく、確固たる事実なんですけどね。……将来どうなるか不安だったけど、この王様なら安泰そうで何よりじゃない。イケメンな上、優しそうだし」
母ちゃんが俺に言う。

アヒルの競争って。1,2、1、2ってこと?
そこまでひどくねえよ!? 体育はいつも5だったよ!?

あと、出席すれば理科Ⅱは4くれるし! 国語も一応、4だったし。

悪かったのは数学と英語と音楽と美術だけだもん……。
3年は選択授業だから美術と音楽はないけど。


「でもせめて、一般常識くらい叩き込んでから嫁に出したいですよね? お義母さん」
母ちゃんは祖母ちゃんに同意を求めてる。

それは。
俺も、もっと勉強しておけばよかった、って思ったから。

できれば、今のうちに色々勉強しておきたい。
国の発展に役立つようなこととか。

おこがましいだろうけど。いつかは公私ともに、バルを支えられる存在になりたいと思うんだ。


「今から優輝に花嫁修業をさせるっていうのかい? でも、バルタさんはお大尽さまなんでしょう? 家事はしないでも大丈夫じゃないかしらねえ」
「祖母ちゃん、バルはじゃなくて王様だよ? お手伝いさんはいっぱいいるけど。料理長、すごい腕がいいんだ。あとバルタさんじゃなくてバルタサールな」

「……役職の大臣じゃなく、大尽、お金持ちのことだ」
親父に突っ込まれた。

なにそれ、時代劇語?

「……そういう訳ですので。優輝が高校を卒業するまで、連れて行くのを待って欲しいのですが」
親父が強引に締めた。どういう訳だよ。


*****


「承知しました。ご家族から結婚を認めていただけてよかった。……卒業まで、どのくらいの期間待てば良いのでしょうか」

バルも、俺が高校を卒業するまで待ってくれると言う。
召喚された日に戻って来れたように、戻る時間を調整すればいいだけだって。

なるほど。

「えーと、今は7月の19日だから……6ヶ月くらい?」
「おバカ。卒業式は3月1日なんだから、7ヶ月とちょっとでしょ」
そうだっけ?

「今日からだと、226日後になる」
え、今計算したの? 親父すげえ。天才かよ。

何で俺、頭の出来が母ちゃんに似ちゃったのかな……。
この背は母方の爺ちゃん似で、この家では俺が一番でかい。


何か親父とこっちの暦に興味を覚えたバルが、太陽暦について話してるけど。
さっぱりついていけない……。

「ばあばは、優輝が元気で笑っててくれればそれでいいからね」
皺だらけの手が、俺の手を握った。

あれ?
こんなに小さかったっけ?

あったかい手なのは、俺が小さい時から変わってないけど。


「祖母ちゃん……」

卒業して、向こうに行くまで。色々勉強もするけど。
なるべく孝行しようと思った。


*****


「ところで、その両腕のアクセサリーは何? 夏休みデビューでもする気なの?」

母ちゃんが、俺の腕のシークロに気付いて訊かれた。
不良デビューみたいに言うな。

「さっきバルが言ってたじゃん。誓いの指輪を交換するとき、俺にずっといて欲しいから、指輪じゃなくて両腕両足用のシークロを贈ったって」

シャラシャラ振って見せる。
愛は重いけど、シークロは重くないぜ。

「ああ、これがその、シークロってやつ? 綺麗だけど。校則違反じゃない?」

「あ、そっか……」
すっかり忘れてた。

何の話だ、と首を傾げていたバルに、母ちゃんが説明した。

「こっちじゃ、学校にはこういったアクセサリー類をつけて行ってはいけないんですよ」

「成程。……優輝、」

バルは俺の手を取って。
手首にあったシークロを、袖で隠れる辺りまで上げて、そこに固定させたようだ。

何だか手つきが結婚指輪をはめてるみたいな感じだった。
事実、指輪みたいなもんだけど。

「これでどうかな?」
「うん、足のは靴下で隠れるし。大丈夫だと思う」

幸い、うちの高校にプールは無いのだ。
靴下を脱ぐようなことも滅多にないだろうし。


「……外すって選択肢は無いわけね……」
母ちゃんは半目で見てる。

当たり前じゃないか。
絶対外れない、呪いのアイテムに近いやつだぞこれ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します

市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。 四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。 だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。 自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。 ※性描写あり。他サイトにも掲載しています。

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。

篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。 

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

処理中です...