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キノコマスター、再び異世界へ。
最後の夜
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そして、待ちに待った、卒業式……の前日。
フライングで、バルが来た。
大荷物を抱えて。
式が済み次第、そのまま俺を連れて行きたいんだって、頼みに来たようだ。
「その荷物は?」
「ああ、エリアスから聞いたが。本来は”結納品”とやらを贈るのだろう? せっかくご家族と会うのなら、あの時に出来なかったことをするべきだと思ったのだ」
いやいや、結納品って。
そんな、金塊とか宝石を持ってこられても困る。
贈与税いくらになるんだよ!?
とんでもない、お気持ちだけで結構です、と親父がマジで遠慮して。
受け取ってもらえなかったので、バルは残念そうだった。
王族の結納品、レベルが違いすぎる。
それでは、と。
結婚式の時の映像を壁に写して、みんなに見せたりした。
映写機とかあったんだ……?
魔力で動く道具かな?
俺の一世一代の晴れ姿、祖母ちゃんにも見せたかったから。
嬉しいな。
孫の顔は、見せられないけど。
*****
「かっこいいねえ」
「へへ、」
祖母ちゃんに褒められた。
ぐす、と泣き声がして。
見れば、母ちゃんも親父も泣いてた。
「覚悟はしていたものの、寂しくなるなあ」
親父はハンカチで洟をかんでる。
ティッシュ使えよ、もう。
「この子ったら、卒業式近くになったら途端に元気になって。もう、薄情なんだから。そんなに早く家を出て行きたいの?」
キレる母ちゃんを、親父がまあまあ、と宥めている。
半年に一回とは言わないから、一年に一度くらいは顔を見せなさい、と言われた。
日本国内じゃないんだから。
無茶なお願いを了承してくれようとしたバルを止める。
「ごめん。あっちに行ったら、もうこっちには戻らないつもりだ。いつでも帰れると思ったら、どうしても逃げ道にしちゃうから」
もうここには戻らないつもりで。荷物はもう、纏めてある。
それで。
何となく、予感はしていたんだろう。
「……父さん、母さん。今まで育ててくれてありがとう。お祖母ちゃん、可愛がってくれてありがとう」
頭を下げた。
母ちゃんは泣きながら居間を出て行って。
親父がそれを追った。
「もうすっかり一人前の男の顔だよ。……あっちでも、元気でねえ」
祖母ちゃんは涙を溜めながら、俺の手を握った。
……違う。
俺は、臆病なだけなんだ。
年々老いていくだろう両親や、祖母ちゃんを見ることになるのが、つらいから。
異世界に行くのをいいことに、逃げようとしてる。
不老不死を選んだバルは。
どれだけの、大切な人を見送ったんだろう?
俺にはまだ、その覚悟が出来ていないだけなんだ。
*****
このまま家に泊まるのかと思ったら。
バルは何か用事があるとかで、他で宿泊するそうだ。
え、ホテルとったの?
宿泊費とかのお金は、宝石とかを売ったのがあるらしい。
身分証明書、どうしたんだろ……。その辺は魔法で何とかなるのかな?
「では、また明日」
ちゅっ、と。頬にキスをされる。
まあ、これくらいはいいかな?
こっちでも、外国では挨拶でするし。
「うん、待ってる」
去って行くバルの姿を見送った。
「優輝、これ、使っていいかねえ」
一緒に見送りに出てた祖母ちゃんが、財布から、よれよれになった紙切れを出した。
肩たたき券。
敬老の日に、小学校の時に作って渡したやつだ。
今まで、大事に持っててくれたんだ。
……そうか。
もう、これ以降、使う機会はないだろうから。
「うん、もちろんだよ」
受け取って。
居間で、祖母ちゃんの肩を叩いた。
小さな背中。
もっと力を入れて良いんだよ、と言われても。
これでも、国一番の騎士とタメで戦ってたくらいだ。
骨がパキっていっちゃいそうで怖い。
バルも、俺のことをそういう感じで見てたのかもな。
最初の頃、触れるのも恐る恐るだったもん。
タントンタントンタントントン、と。
肩たたきの歌とか、けっこう覚えてるもんだな。歌いながら叩いたりして。
ようやく落ち着いた様子の母ちゃんと親父が来て。
何だか羨ましそうに見てたので。
特別サービスだ。順番に肩叩きした。
母ちゃんはワガママを言いまくったけど、おとなしくきいた。
はいはいマドモアゼル、仰せの通りに。あれ? マダムだっけ? まあいいか。
親父の肩は、わりと気を遣わずに叩いた。
もう俺の方が、力も強くなってるんだろうな。背は、けっこう前に抜いたけど。
「優輝、大きくなったもんだなあ。久しぶりに、父さんとお風呂でも入るか?」
しみじみと言った。
「え、やだ」
それはお断りだ。
いい年して親父と風呂なんて入りたくないし。銭湯ならまだいいけど。狭い家庭風呂で一緒とか絶対無理。
「そうか……」
しょぼんとされても、やだし。
*****
翌日。
待ちに待った、卒業式だ。
楽しみで、つい早起きしてしまった……。
いつもより早めに高校の教室に行ったら、もうすでに気持ちが盛り上がって泣いてるやつがいた。
気が早いな。式はまだだろ!
教室で出欠確認をとって。
下級生が作った花の飾りを胸につける。この制服を着るのも、今日が最後か。そう思うと何だか感慨深いや。
全員で、体育館に向かう。
この景色を見るのも、今日が最後なんだよな。
フライングで、バルが来た。
大荷物を抱えて。
式が済み次第、そのまま俺を連れて行きたいんだって、頼みに来たようだ。
「その荷物は?」
「ああ、エリアスから聞いたが。本来は”結納品”とやらを贈るのだろう? せっかくご家族と会うのなら、あの時に出来なかったことをするべきだと思ったのだ」
いやいや、結納品って。
そんな、金塊とか宝石を持ってこられても困る。
贈与税いくらになるんだよ!?
とんでもない、お気持ちだけで結構です、と親父がマジで遠慮して。
受け取ってもらえなかったので、バルは残念そうだった。
王族の結納品、レベルが違いすぎる。
それでは、と。
結婚式の時の映像を壁に写して、みんなに見せたりした。
映写機とかあったんだ……?
魔力で動く道具かな?
俺の一世一代の晴れ姿、祖母ちゃんにも見せたかったから。
嬉しいな。
孫の顔は、見せられないけど。
*****
「かっこいいねえ」
「へへ、」
祖母ちゃんに褒められた。
ぐす、と泣き声がして。
見れば、母ちゃんも親父も泣いてた。
「覚悟はしていたものの、寂しくなるなあ」
親父はハンカチで洟をかんでる。
ティッシュ使えよ、もう。
「この子ったら、卒業式近くになったら途端に元気になって。もう、薄情なんだから。そんなに早く家を出て行きたいの?」
キレる母ちゃんを、親父がまあまあ、と宥めている。
半年に一回とは言わないから、一年に一度くらいは顔を見せなさい、と言われた。
日本国内じゃないんだから。
無茶なお願いを了承してくれようとしたバルを止める。
「ごめん。あっちに行ったら、もうこっちには戻らないつもりだ。いつでも帰れると思ったら、どうしても逃げ道にしちゃうから」
もうここには戻らないつもりで。荷物はもう、纏めてある。
それで。
何となく、予感はしていたんだろう。
「……父さん、母さん。今まで育ててくれてありがとう。お祖母ちゃん、可愛がってくれてありがとう」
頭を下げた。
母ちゃんは泣きながら居間を出て行って。
親父がそれを追った。
「もうすっかり一人前の男の顔だよ。……あっちでも、元気でねえ」
祖母ちゃんは涙を溜めながら、俺の手を握った。
……違う。
俺は、臆病なだけなんだ。
年々老いていくだろう両親や、祖母ちゃんを見ることになるのが、つらいから。
異世界に行くのをいいことに、逃げようとしてる。
不老不死を選んだバルは。
どれだけの、大切な人を見送ったんだろう?
俺にはまだ、その覚悟が出来ていないだけなんだ。
*****
このまま家に泊まるのかと思ったら。
バルは何か用事があるとかで、他で宿泊するそうだ。
え、ホテルとったの?
宿泊費とかのお金は、宝石とかを売ったのがあるらしい。
身分証明書、どうしたんだろ……。その辺は魔法で何とかなるのかな?
「では、また明日」
ちゅっ、と。頬にキスをされる。
まあ、これくらいはいいかな?
こっちでも、外国では挨拶でするし。
「うん、待ってる」
去って行くバルの姿を見送った。
「優輝、これ、使っていいかねえ」
一緒に見送りに出てた祖母ちゃんが、財布から、よれよれになった紙切れを出した。
肩たたき券。
敬老の日に、小学校の時に作って渡したやつだ。
今まで、大事に持っててくれたんだ。
……そうか。
もう、これ以降、使う機会はないだろうから。
「うん、もちろんだよ」
受け取って。
居間で、祖母ちゃんの肩を叩いた。
小さな背中。
もっと力を入れて良いんだよ、と言われても。
これでも、国一番の騎士とタメで戦ってたくらいだ。
骨がパキっていっちゃいそうで怖い。
バルも、俺のことをそういう感じで見てたのかもな。
最初の頃、触れるのも恐る恐るだったもん。
タントンタントンタントントン、と。
肩たたきの歌とか、けっこう覚えてるもんだな。歌いながら叩いたりして。
ようやく落ち着いた様子の母ちゃんと親父が来て。
何だか羨ましそうに見てたので。
特別サービスだ。順番に肩叩きした。
母ちゃんはワガママを言いまくったけど、おとなしくきいた。
はいはいマドモアゼル、仰せの通りに。あれ? マダムだっけ? まあいいか。
親父の肩は、わりと気を遣わずに叩いた。
もう俺の方が、力も強くなってるんだろうな。背は、けっこう前に抜いたけど。
「優輝、大きくなったもんだなあ。久しぶりに、父さんとお風呂でも入るか?」
しみじみと言った。
「え、やだ」
それはお断りだ。
いい年して親父と風呂なんて入りたくないし。銭湯ならまだいいけど。狭い家庭風呂で一緒とか絶対無理。
「そうか……」
しょぼんとされても、やだし。
*****
翌日。
待ちに待った、卒業式だ。
楽しみで、つい早起きしてしまった……。
いつもより早めに高校の教室に行ったら、もうすでに気持ちが盛り上がって泣いてるやつがいた。
気が早いな。式はまだだろ!
教室で出欠確認をとって。
下級生が作った花の飾りを胸につける。この制服を着るのも、今日が最後か。そう思うと何だか感慨深いや。
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