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2 君を拘束したい
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馬車は城の門をくぐり、やがて停止した。まずはじめに王子が馬車を降り、その後俺を担いだ兵士が続いた。
「おい!離せよ!俺は城なんてごめんだ!おい!」
できる限りの抵抗をしてみたが、ほぼゼロに近い体力では身動きすら取れない。
「静かにしろ。これは王子の命令だ」
兵士は俺を怒鳴りつけ黙らせると、風呂場に連行した。そして、たっぷりの泡が浮かんでいる湯船に俺を放り込んだ。
「…っ。扱い雑すぎだろ」
するとすぐさま使用人と思わしき女供が入ってきて、服を脱がせにかかる。
「わっやめろっおい!」
「まぁ、どうしたらこんなに汚れるんでしょう。ちょっとスポンジ持ってきて頂戴~」
こちらが動けないのをいいことにやりたい放題だ。最終的に爪の先までピカピカに磨かれ、ぼさぼさで伸びきった髪は整えられてしまった。
その後はふかふかの絨毯が敷き詰められているやけに広い部屋に通された。南には大きな窓があり、派手な装飾が施されている家具が並んでいる。
部屋の中央には机とソファーが置いてあり、豪華な食事まで用意されていた。
「よーしよし頑張ったね。お腹減ってるんでしょ?若いんだからたくさんお食べ」
一番ふくよかな使用人は俺の頭をポンポンと叩くとソファーに座るよう誘導した。
しかし生まれてこの方ソファーなんて座ったことがないから、必要以上に柔らかいその感触がなんとなく気に食わなかった。俺は床に座ると机の上にある料理を素手でつかんで食べ始めた。
もしかしたら毒が入ってるかもしれない。一瞬そう思ったけど、ここ数ヶ月まともな食事にありつけていなかったせいでとてつもなく腹が減っていたんだ。
料理は頭がくらくらするほどおいしかった。硬くないパンに温かいスープ。人生で一番の食事二間違いない。
「ほぅ、綺麗になったね」
食事に夢中で気が付かなかったようだ。後ろを振り返るといつの間にか王子が立っていた。
上目遣いで睨みつけると、彼はクスクスと笑った。
「いくらでも食べ物はあげるからゆっくり食べなさい」
「…っ」
「今後のことなんだけどね。僕は君を飼うことに決めたからここに住んでもらうよ」
「‥嫌だね」
「城なら凶悪なモンスターもムチ打ちをする商人もいない。そして毎日美味しい食事と温かいベットを提供してもらえるのに?」
「…」
「僕に飼われたほうがよほど楽しい人生を送れると思うんだけどな」
確かにそうだ。現に俺はさっきまで道で野垂れ死んでいたのだから。
「目的はなんだ」
「目的?そんなのないよ。まぁ強いて言うなら」
男は俺に近づくと腰を屈めてクイッと顎を持ち上げた。
「君の目が好きだ。挑戦的で尊敬も畏怖の感情もない。人間を憎み嫌うその瞳がすごくいい」
「俺はお前が嫌いだ」
「ふっ、知ってるかい?獣人ってやつはね大抵、すべてを諦め怯えた目をしているんだ。生まれたときから自分たちは支配される側であると叩き込まれるからね」
王子は頬を赤らめうっとりと続けた。
「でも君は違う。だから、ねじ伏せて恐怖に歪んだ顔が見たい。すべてを諦めその瞳から色が抜け落ちる瞬間が見たいんだ」
「…」
こいつは俺が出会った中で一番美しく、そしてやばいやつだった。
逃げろと本能が告げている。でももう遅かった。彼は俺を軽々と担ぎ上げると、部屋の奥に向かう。
そしてベットに突き飛ばした。
「な、なんだよ…やめろっ」
そのまま上から乗り上げると俺の首を両手で締め上げる。
くそっ…息ができない…。
「…っ」
「どう?怖い?今から君は死ぬかもしれない」
「…っ」
酸欠のせいか視界が霞んできた。俺は最後の力をすべて込め、思い切り膝で男を蹴飛ばした。
ダンッ。
蹴りはみぞおちにうまく入り、王子はその瞬間両手を離した。
「かはっ、はぁ、はぁ、はぁ」
し、死ぬかと思った…。肩で息をしながら王子をにらみつける。
「いてて…ふ、ふふ。いいね。すごくいい…」
俺はベットから降り、壁に背を預けた。どうにかして逃げねぇと殺される…。ちらりと視線を送ると、王子は楽しげにクスクスと笑っていた。
そして
「拘束」
彼がそう呟くと、体から力が抜け落ちた。
「おい!離せよ!俺は城なんてごめんだ!おい!」
できる限りの抵抗をしてみたが、ほぼゼロに近い体力では身動きすら取れない。
「静かにしろ。これは王子の命令だ」
兵士は俺を怒鳴りつけ黙らせると、風呂場に連行した。そして、たっぷりの泡が浮かんでいる湯船に俺を放り込んだ。
「…っ。扱い雑すぎだろ」
するとすぐさま使用人と思わしき女供が入ってきて、服を脱がせにかかる。
「わっやめろっおい!」
「まぁ、どうしたらこんなに汚れるんでしょう。ちょっとスポンジ持ってきて頂戴~」
こちらが動けないのをいいことにやりたい放題だ。最終的に爪の先までピカピカに磨かれ、ぼさぼさで伸びきった髪は整えられてしまった。
その後はふかふかの絨毯が敷き詰められているやけに広い部屋に通された。南には大きな窓があり、派手な装飾が施されている家具が並んでいる。
部屋の中央には机とソファーが置いてあり、豪華な食事まで用意されていた。
「よーしよし頑張ったね。お腹減ってるんでしょ?若いんだからたくさんお食べ」
一番ふくよかな使用人は俺の頭をポンポンと叩くとソファーに座るよう誘導した。
しかし生まれてこの方ソファーなんて座ったことがないから、必要以上に柔らかいその感触がなんとなく気に食わなかった。俺は床に座ると机の上にある料理を素手でつかんで食べ始めた。
もしかしたら毒が入ってるかもしれない。一瞬そう思ったけど、ここ数ヶ月まともな食事にありつけていなかったせいでとてつもなく腹が減っていたんだ。
料理は頭がくらくらするほどおいしかった。硬くないパンに温かいスープ。人生で一番の食事二間違いない。
「ほぅ、綺麗になったね」
食事に夢中で気が付かなかったようだ。後ろを振り返るといつの間にか王子が立っていた。
上目遣いで睨みつけると、彼はクスクスと笑った。
「いくらでも食べ物はあげるからゆっくり食べなさい」
「…っ」
「今後のことなんだけどね。僕は君を飼うことに決めたからここに住んでもらうよ」
「‥嫌だね」
「城なら凶悪なモンスターもムチ打ちをする商人もいない。そして毎日美味しい食事と温かいベットを提供してもらえるのに?」
「…」
「僕に飼われたほうがよほど楽しい人生を送れると思うんだけどな」
確かにそうだ。現に俺はさっきまで道で野垂れ死んでいたのだから。
「目的はなんだ」
「目的?そんなのないよ。まぁ強いて言うなら」
男は俺に近づくと腰を屈めてクイッと顎を持ち上げた。
「君の目が好きだ。挑戦的で尊敬も畏怖の感情もない。人間を憎み嫌うその瞳がすごくいい」
「俺はお前が嫌いだ」
「ふっ、知ってるかい?獣人ってやつはね大抵、すべてを諦め怯えた目をしているんだ。生まれたときから自分たちは支配される側であると叩き込まれるからね」
王子は頬を赤らめうっとりと続けた。
「でも君は違う。だから、ねじ伏せて恐怖に歪んだ顔が見たい。すべてを諦めその瞳から色が抜け落ちる瞬間が見たいんだ」
「…」
こいつは俺が出会った中で一番美しく、そしてやばいやつだった。
逃げろと本能が告げている。でももう遅かった。彼は俺を軽々と担ぎ上げると、部屋の奥に向かう。
そしてベットに突き飛ばした。
「な、なんだよ…やめろっ」
そのまま上から乗り上げると俺の首を両手で締め上げる。
くそっ…息ができない…。
「…っ」
「どう?怖い?今から君は死ぬかもしれない」
「…っ」
酸欠のせいか視界が霞んできた。俺は最後の力をすべて込め、思い切り膝で男を蹴飛ばした。
ダンッ。
蹴りはみぞおちにうまく入り、王子はその瞬間両手を離した。
「かはっ、はぁ、はぁ、はぁ」
し、死ぬかと思った…。肩で息をしながら王子をにらみつける。
「いてて…ふ、ふふ。いいね。すごくいい…」
俺はベットから降り、壁に背を預けた。どうにかして逃げねぇと殺される…。ちらりと視線を送ると、王子は楽しげにクスクスと笑っていた。
そして
「拘束」
彼がそう呟くと、体から力が抜け落ちた。
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