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第一章 無能の兄
第3話 ゲーム世界1話……?
しおりを挟む「お、今日は早いなノーティス」
「ふふふ、まあね」
ユートピアの世界で暮らしてから一週間が経ち、
なんだかんだ俺はかなり馴染めていた。
この世界についての知識が有るのもそうだが、ノーティス君の性格が俺に
似ていたらしく誰からも「なんか変わった?」などと言われなかった。
唯一気づきそうなノーティスの両親も寮暮しなので会わない。
(よしよし、時間前に来れた)
さて、なぜ俺が早めに来たのか、その理由はただ一つ。
(主人公様のライトくんちゃんが来るはずなんだよね……)
今日は4月1日、新たな学期でもあるが、何よりこの世界の主人公が入学する日。
この世界が大きく動きだす起点になる日のはずなのだ!
(どっちかな~僕は女主人公しか知らないけど)
主人公の性別は選択制で俺らは妹に合わせて女主人公でやっていた。
男なら白銀の髪色をした物静かな少年、女なら桃色の髪をしたクール美少女なのだが。
(あと五分……どっちだ!?)
ガラガラ。
「えー皆静かに、残念なお知らせがある」
予想を裏切り、教室に入ってきたのは教師一人だった。
「今日トーシャ村から転校予定だったライトさんだが……どうやら道が木で塞がれてしまっていて馬車が止まって来れなくなったようだ」
「……?」
なんだと?主人公が……来ない?
「先生ー!木が倒れた原因ってなんですかー?」
「ふむ、これが良く分からなくてな。昨晩までは何も無かったようだし雷なども無かった、もしかしたら新種の魔物の仕業かもしれんぞ~」
いや、それはおかしい。「ユートピア」は人間ドラマに重きを置いた作品だ。
そのせいか剣と魔法の世界にも関わらず強力な魔物などは野生に存在しない。
こんな狙ったようなタイミングで倒木なんて起きるか?
「先生、ちょっと気分が悪いので保健室に行ってもいいですか?」
「ん?ノーティスが体調不良とは珍しいな、無理せず行ってこい」
こうなれば授業どころでは無い、早く主人公が来てくれなければ
ゲームのシナリオがガタガタになってしまう。そうなった場合起きるのは……
(帝国の侵攻や王位継承戦のゴタゴタで政権崩壊等のバットエンドだ。
そうなれば他人事じゃない)
「……だとしてどうする?俺に何ができ」
ドンッ!
「うわっ!」
「うおっ!」
考えながら歩いていたせいか誰かにぶつかって尻もちをついてしまった。
咄嗟に謝ろうと思い顔をあげるとそこには
「おいおい、気をつけろよ。
これからデートだって言うのに服が乱れちまったじゃねーか」
俺がぶつかったのは筋骨隆々とした生徒だった。
そして俺はこいつを知っている。
名前はジャイクス、
大斧という専用武器を持った力自慢キャラで「ユートピア」世界の
メインキャラクターの一人だ。
(彼の攻撃力の高さには攻略中世話になったなぁ……)
「おい、大丈夫か?頭でも打っちまったか?」
「!、ああ、ごめんごめん大丈夫」
「怪我が無いなら良いけどよ……」
そう言ってジャイクスは去っていく……。
だがちょっと待て、彼がデート?んな馬鹿な。
彼は「ユートピア」での攻略対象では有るが、デリカシーの低さが災いして
モテず、デートなんて一度もしたことないという設定のはずだぞ?
(主人公以外とくっつかないはずの非モテ男がデートだと?本編開始前に学校をサボって?)
後ろを振り向くとまだジャイクスは見える。
今日は何かおかしい出来事が多い……
果たして彼がデートするなんてイレギュラーは偶然なのか?
「少しだけ、尾行しよう。ただのデートなら途中で帰ればいいし」
違和感が拭いきれず俺は初めて「ユートピア」の世界に干渉することにした。
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