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第一章 無能の兄
第7話 仲間
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「ノーティス君が赤組リーダー?」
「そうらしいよ」
「なんで?つーかノーティスって誰だっけ?」
「ほらあいつだよ、教室の端に居るだろ?」
「あー!あいつか!……でも、あいつなんか雰囲気違くね?」
「だよな?俺もそう思うんだけど……何があったんだろうな」
噂というのは腐るのが早い物で、昨日セイラの話をしていた者達は軒並み
ノーティス・シャドウのことを話題にあげている。
彼らが口を揃えて言うように確かにノーティスは変わった。
夢を見ているようにぼんやりしていた顔は引き締まり、目を隠しがちだった
前髪はオールバックに固められ、何も見逃すまいと眼光が鋭い。
変わったのは見た目だけではなく、雰囲気も違う。
どこにでもいるような存在感の無さはどこへやら、一種のカリスマのような
近づきがたく、しかし近づきたくなるような独特の雰囲気が全身から漂う。
(まずは頼れる仲間だな……)
そして何かを思案し終わると、やるべき事を完全に理解しているような
迷いの無い足取りで教室を出た。
*
俺が向かったのは休みなら自由に解放されている訓練場、
元の世界で言う所の体育館。
「……ハッ!オラッ!オラァ!」
俺は掛け声を挙げながら無心で木剣を訓練用の人形に向かって振る。
そして次には弓、槍、斧、最後には魔導書を用いた魔法などゲームの
「ユートピア」でノーティスが使うことが出来た武器を一通り試す。
「身体が覚えてるって奴なのかな……全部違和感無く使える」
ノーティスの記憶なのか武器を握れば振り方と構えが、魔導書を持てば唱える
呪文が自然に頭に浮かんだ。
これは俺にとってかなり都合がいい、鍛錬を積む時間を他に回せるからだ。
「まあ、この確認はもう良いかな。僕の目的は彼女だから」
そう呟きながら少し離れた場所で大きな剣をブンブンと振り回す
彼女に声を掛けた。
「流石のパワーだね、マロン」
「ん?ああ、ノーティスか。何の用だ」
マロンはこちらに反応してそのがっしりとした170cmを超える長身を翻し、
栗色のショートカットと大きな傷跡の有る顔をこちらに向けた。
そう、俺がこの世界での初登校で声を掛けた女生徒が彼女だ。
彼女は青組の生徒なので、本来は敵。
だが学内対抗戦には特別なルールが有る。
「うん、君に頼みがあるんだ。単刀直入に言うと今度の学内対抗戦で、
俺達赤組の仲間として参加して欲しい」
他の組の生徒だろうと本人の承諾が有れば参戦させられるのだ。
作中で『リーダーとなった者の求心力を確かめる為』との理由づけが
されているが、実際は好きな仲間を使う為のシステムだろう。
「ふむ……だが、なぜ私を?」
「そりゃあ君の「剣士」としての力に惚れたから」
「!私の……力……」
彼女は商人の家に生まれ、親は何処かの貴族に嫁がせようと育てたらしい。
しかし、当の本人にそんな気はサラサラ無く剣術に励む毎日を送っていた。
親への反発もあるのか剣士として扱われると途端に機嫌が良くなる。
「そう、君の力。駄目かな?」
「いや、もちろんオーケーだ。実を言うと私の力を試せる機会を待っていたんだ、
誘ってくれて感謝する」
「決まりだね」
こうして俺はマロンを仲間として登録する為に職員室に向かう。
*
職員室奥の書類部屋で手早く仲間にする登録を済ませる。
「よし、これで登録は出来た。正式に仲間だ」
「うむ……」
記入した登録名簿を棚に戻し、職員室を後にした。
「……」
「……」
……仲間になったは良いものの、静かな廊下に気まずい雰囲気が強く流れる。
とりあえず仲良くなろうと雑談でも持ち掛けてみる。
「あー……マロンは何か好きな食べ物とか有る?」
「……モンブランだな」
「そう……俺はモンブラン嫌いじゃないよ(好きでも無いけど)」
「うむ、アレは美味い」
「……」
「……」
会話があっさりと途切れ再び場が静寂に包まれる。
俺の話題振りが下手なのも有るが、マロンはかなり口下手なようだ。
他に、他に何かマロンに聞いておきたいことは……あ、そうだ。
「あと……なんで良く知らない俺の事信頼してくれたの?」
これは正直な疑問だった。いくらゲームの知識でクリティカルな誘い文句が
言えたとしても、俺自体はそこまで大した魅力も風格も無い人間だ。
彼女は何故そんな俺の仲間になってくれたのか。
「……そうだな。私を剣士として見てくれたのもそうだが、何より私は仲間と
言うのにずっと憧れがあった」
「憧れ」
「うむ、私はどうも人と関わる事が苦手でな……友情だとか絆だとかそういうものに縁が無かった。クラスでも一人だし、家にも居場所は少ない。だから、
そんな私を誘ってくれる奴が出るなんて思って無かった。私にとってこれは
友情を手に入れる初めての大きなチャンスだったんだ。だから話に乗った」
(ちょっと、共感できるかな)
思えば転生前の俺は少し彼女に似ているかも知れない。
行動力が低めで家にすら居場所が無い。
そう思うと、とても親近感が湧いてくる。
「そうだね、じゃあこのチャンスを拾って良かったと思うくらい
良い学園生活にして見せるよ」
「ああ、よろしく頼むぞ」
お互い気づかない内に俺らは握手を交わしていた。
少しゴツゴツした力強い彼女の手からは確かに人の暖かさを感じる。
……そう思った時。
「……おい」
突如、三人組に声をかけられた。かと思うと彼らは俺らを取り囲む。
「何の用?」
「お前が何したかは知らねえけどよ……セイラ様からの伝言だ」
「!」
こいつら……奈緒の手下か。あいつは俺の行動にもう勘づいたのか?
「セイラ様は言ってたぜ、『警告はしたはずだ』ってなぁ!」
男子生徒はそう叫ぶと、どこからか棒切れを取り出しこちらに殴りかかる。
「ちょっ、いきなり!?」
身構える前に襲われ一撃もらってしまうかと思ったその時。
パシッ!
「私の『仲間』に手を出さないで貰えるか?」
マロンが棒切れを掴み、俺は難を逃れた。
「俺の仲間でいるならこういう事ばっかだと思うけど……大丈夫?」
「……ああ、もちろん」
「クソがッ!」
男子生徒がマロンの手を強引に振りほどき、構え直す。
「大人しくやられとけよ!」
「断る!」
俺も構え、廊下での乱闘が始まった。
「そうらしいよ」
「なんで?つーかノーティスって誰だっけ?」
「ほらあいつだよ、教室の端に居るだろ?」
「あー!あいつか!……でも、あいつなんか雰囲気違くね?」
「だよな?俺もそう思うんだけど……何があったんだろうな」
噂というのは腐るのが早い物で、昨日セイラの話をしていた者達は軒並み
ノーティス・シャドウのことを話題にあげている。
彼らが口を揃えて言うように確かにノーティスは変わった。
夢を見ているようにぼんやりしていた顔は引き締まり、目を隠しがちだった
前髪はオールバックに固められ、何も見逃すまいと眼光が鋭い。
変わったのは見た目だけではなく、雰囲気も違う。
どこにでもいるような存在感の無さはどこへやら、一種のカリスマのような
近づきがたく、しかし近づきたくなるような独特の雰囲気が全身から漂う。
(まずは頼れる仲間だな……)
そして何かを思案し終わると、やるべき事を完全に理解しているような
迷いの無い足取りで教室を出た。
*
俺が向かったのは休みなら自由に解放されている訓練場、
元の世界で言う所の体育館。
「……ハッ!オラッ!オラァ!」
俺は掛け声を挙げながら無心で木剣を訓練用の人形に向かって振る。
そして次には弓、槍、斧、最後には魔導書を用いた魔法などゲームの
「ユートピア」でノーティスが使うことが出来た武器を一通り試す。
「身体が覚えてるって奴なのかな……全部違和感無く使える」
ノーティスの記憶なのか武器を握れば振り方と構えが、魔導書を持てば唱える
呪文が自然に頭に浮かんだ。
これは俺にとってかなり都合がいい、鍛錬を積む時間を他に回せるからだ。
「まあ、この確認はもう良いかな。僕の目的は彼女だから」
そう呟きながら少し離れた場所で大きな剣をブンブンと振り回す
彼女に声を掛けた。
「流石のパワーだね、マロン」
「ん?ああ、ノーティスか。何の用だ」
マロンはこちらに反応してそのがっしりとした170cmを超える長身を翻し、
栗色のショートカットと大きな傷跡の有る顔をこちらに向けた。
そう、俺がこの世界での初登校で声を掛けた女生徒が彼女だ。
彼女は青組の生徒なので、本来は敵。
だが学内対抗戦には特別なルールが有る。
「うん、君に頼みがあるんだ。単刀直入に言うと今度の学内対抗戦で、
俺達赤組の仲間として参加して欲しい」
他の組の生徒だろうと本人の承諾が有れば参戦させられるのだ。
作中で『リーダーとなった者の求心力を確かめる為』との理由づけが
されているが、実際は好きな仲間を使う為のシステムだろう。
「ふむ……だが、なぜ私を?」
「そりゃあ君の「剣士」としての力に惚れたから」
「!私の……力……」
彼女は商人の家に生まれ、親は何処かの貴族に嫁がせようと育てたらしい。
しかし、当の本人にそんな気はサラサラ無く剣術に励む毎日を送っていた。
親への反発もあるのか剣士として扱われると途端に機嫌が良くなる。
「そう、君の力。駄目かな?」
「いや、もちろんオーケーだ。実を言うと私の力を試せる機会を待っていたんだ、
誘ってくれて感謝する」
「決まりだね」
こうして俺はマロンを仲間として登録する為に職員室に向かう。
*
職員室奥の書類部屋で手早く仲間にする登録を済ませる。
「よし、これで登録は出来た。正式に仲間だ」
「うむ……」
記入した登録名簿を棚に戻し、職員室を後にした。
「……」
「……」
……仲間になったは良いものの、静かな廊下に気まずい雰囲気が強く流れる。
とりあえず仲良くなろうと雑談でも持ち掛けてみる。
「あー……マロンは何か好きな食べ物とか有る?」
「……モンブランだな」
「そう……俺はモンブラン嫌いじゃないよ(好きでも無いけど)」
「うむ、アレは美味い」
「……」
「……」
会話があっさりと途切れ再び場が静寂に包まれる。
俺の話題振りが下手なのも有るが、マロンはかなり口下手なようだ。
他に、他に何かマロンに聞いておきたいことは……あ、そうだ。
「あと……なんで良く知らない俺の事信頼してくれたの?」
これは正直な疑問だった。いくらゲームの知識でクリティカルな誘い文句が
言えたとしても、俺自体はそこまで大した魅力も風格も無い人間だ。
彼女は何故そんな俺の仲間になってくれたのか。
「……そうだな。私を剣士として見てくれたのもそうだが、何より私は仲間と
言うのにずっと憧れがあった」
「憧れ」
「うむ、私はどうも人と関わる事が苦手でな……友情だとか絆だとかそういうものに縁が無かった。クラスでも一人だし、家にも居場所は少ない。だから、
そんな私を誘ってくれる奴が出るなんて思って無かった。私にとってこれは
友情を手に入れる初めての大きなチャンスだったんだ。だから話に乗った」
(ちょっと、共感できるかな)
思えば転生前の俺は少し彼女に似ているかも知れない。
行動力が低めで家にすら居場所が無い。
そう思うと、とても親近感が湧いてくる。
「そうだね、じゃあこのチャンスを拾って良かったと思うくらい
良い学園生活にして見せるよ」
「ああ、よろしく頼むぞ」
お互い気づかない内に俺らは握手を交わしていた。
少しゴツゴツした力強い彼女の手からは確かに人の暖かさを感じる。
……そう思った時。
「……おい」
突如、三人組に声をかけられた。かと思うと彼らは俺らを取り囲む。
「何の用?」
「お前が何したかは知らねえけどよ……セイラ様からの伝言だ」
「!」
こいつら……奈緒の手下か。あいつは俺の行動にもう勘づいたのか?
「セイラ様は言ってたぜ、『警告はしたはずだ』ってなぁ!」
男子生徒はそう叫ぶと、どこからか棒切れを取り出しこちらに殴りかかる。
「ちょっ、いきなり!?」
身構える前に襲われ一撃もらってしまうかと思ったその時。
パシッ!
「私の『仲間』に手を出さないで貰えるか?」
マロンが棒切れを掴み、俺は難を逃れた。
「俺の仲間でいるならこういう事ばっかだと思うけど……大丈夫?」
「……ああ、もちろん」
「クソがッ!」
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