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第三章 兄妹
第21話 -×-=+ (マイナスかけるマイナスはプラス)
しおりを挟む「……見かけ倒しも良いとこだな」
俺が勝ちを確信してそう言うと、イロウは突然謎の含み笑いを始める。
「ブワッハッハ……甘い、甘すぎるぞガキが……」
「何笑ってんだ?」
ほとんど勝負はついてるこの状況で何を考えてる?
「貴様にはまだ分からんだろうがな……
大人は殴り合いに負けた所で負けでは無いのだ」
「?」
「権力、コネ、金、使える物を全て使って立ってる奴が勝ちなんだよ!」
そう言うと、イロウは胸もとから赤い水晶のようなものを取り出して、
何か水晶に向かって喋っている。
……まるで電話のような?
「とにかく!今すぐ来い!来れないならカローか奴のガキを捕まえてこい!」
イロウがそう怒鳴ると、水晶を地面に叩きつける。
ビーッ!ビーッ!
けたたましいブザー音に場が包まれた。
「……偉くなると様々な所につてが出来るのものでな、このボタンを押せば
この辺のチンピラ達が私の敵を排除しに駆けつける。
これがどういう意味か分かるか?」
「援軍登場ってことか?」
まずいかもしれない。
イロウを倒したとしても既に連絡は済んでいる。
早く逃げなければ数の暴力で負ける事間違いなしだ。
「……こういう時は逃げるが勝ちだ!」
「させると思うかぁ!?」
俺が駆け出そうとした瞬間、正面の出口にイロウが立ち塞がる。
(クソ……他に出口は?)
窓など出ようと思えば出られそうな所はあるが……
「……窓が気になるか?アレは特別仕様でな、通常の三倍程の強度を持つ魔法さえ通さない鉄壁の窓なのだ」
「なんのための窓だよ!」
「ブワッハッハ!何とでも言え!どちらにせよ貴様の負けは決定事項だ!」
そう言い放つイロウにさすがの俺も焦りを感じ始める。
(どうする……?)
*
一方その頃、セイラとモモの兄はちょうど町役場に続く道を歩いていた。
「もしかしたら妹は父に会いに町役場に行ったのかもしれません、職場なので」
「……自分の事のように分かるんだね」
「ええ、もちろん!仲良い兄妹ですし!」
(……私はお兄ちゃんが考えてる事分からないのに)
そんな事を思っていると、前から二人組が走ってきていた。
身長から見るに親子かな?
「……ん?あれ、お父さんとモモ?」
「え?」
どうやら彼の父と妹らしい。
「……ゲホッ!……ずっと事務仕事だったから走るのなんていつぶりかな……」
「お父さんしっかり!……あれ?お兄ちゃん?」
「モモ!お前どこに行ってたんだよ!それに、なんでお父さんと……」
「カキ……説明は後だ。とにかく町役場から離れないと……」
……いったいどういう状況なのか全く分からないが、とにかくこの子……カキの
妹は見つかった。自分は帰ろう。そう思った時だった。
「あれ~!?そこに居るのってイロウさんが言ってたカローじゃね?」
突然背後から大きい声が聞こえて振り返ると、十人……いや二十人くらい
のチンピラの団体が居た。
「……なに、あんたら?」
「……あ!てめえはさっきの強気な女!」
「……?」
「おい忘れたとは言わせねぇぞ!さっきは良くも俺の目を……!」
……記憶を探る。
そうだ、コイツはカキにカツアゲしようとしてたチンピラだ。
まさか再会するとは思わなかったな。
「……君達はイロウの手下か?」
「ああそうだぜ!カローさんよぉ~!てめぇの身柄を
イロウさんのとこに持っていきゃあ、お給金が出るのよ!
しかし、そこの女はてめえの娘かなにかか?」
「……違うよ」
私はこの人の家族じゃないし、仲間でも無い。
本当なら助ける義理なんてない。
「やめてよ……」
「あぁん?」
「お父さんをつれてかないで!!!」
モモが力強く叫んだ。
……もし、自分だったら父親を守るために大人に立ち向かえただろうか。
「うるせぇな!退いてろ!」
不思議な事に、モモと昔の自分の姿が重なって見えた、
強い意志が有って、行動もできる。
でも力も何も持っていないから悪い大人に簡単に潰される。
潰されていく弱い自分を誰も助けてくれない。
……私はそう言う現実が大嫌いだ。
「……おい、なんだよ?もしかして邪魔する気か?この人数相手に?」
「ええ」
「はは!コイツは良いや!ムカつく女に復讐出来て仕事も進む!
一石二鳥とはこの事だぜ~!」
これはただの八つ当たりに近い。
正義とかそう言う綺麗な事のためじゃなくて、
私の嫌いなモノを否定するための行動だからだ。
「あの……大丈夫ですか?」
父親が心配そうにそう聞いてくる。
「大丈夫だよ!お姉さんすっごく強かったもん!」
まるでヒーローを見るような目で、カキがそう言う。
「そう、私は強いの。だから安心して見ててね」
「ッ!てめぇ、この人数前にカッコつけんなよ!」
「……上級雷魔法。響いて貫け、ギガサンダー……」
右手に魔力を込め、魔法を詠唱する。
バチバチと音を響かせ、光を放つ大きな雷が右手に顕現していく。
「は?おい、ちょっと待っ」
「待たない!」
バチバチバチ!ビシャン!!!!!
「「「ぐあああああああ!!」」」
一本のビームのように右手から放たれた雷の力はチンピラ達を纏めて貫いた。
「もう終わり?」
「お前、いや。ふざけんなよ……」
何人かは口を聞けるようだが、
ほとんどのチンピラ達が全身を痙攣させながら地面に倒れる。
「すっごい……」
思わず、モモはそう呟いた。
*
セイラ強すぎ。
そう思ったら応援よろしくお願いします。
↓おまけのキャラ強さ指標。
セイラ>エリト≧ノーティス≧マロン>イロウ>ザコス>カイ
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