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エピローグ
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「いやいやノエム君、お疲れだったね。いや、今回の事件の成功を祝して遠野君と呼ぶべきか。レント君も良く頑張ってくれた」
「まぁ、あの御神とかという切れ者の存在は予定外でしたけど。私の正体に例え薄々気が付いていたとしても、その証拠や根拠が全くないので私を逮捕する事が出来ませんから、まぁ、勝負はイーブンで終わったってとこですかね」
「そうだな。私もライバル社の大きなイメージダウンが成功して良かったよ。これでこの業界は我が社が独占って訳だ。ついでにツインホテルの世間からの評判も悪くなる事は確実だし、積王商事も潰せたしな。・・・・・ああ、約束の成功報酬の三億円だな。こんな額、今回の成功を考えると安い物だよ」
そう言って清彦は高級ソファーから立ち上がり遠野に背を向け、金庫に向かって歩き出した。
それを見届けると、遠野が注射器を取り出し、清彦に気付かれないよう慎重に清彦の饅頭にそれを刺した。
しかし、清彦はそれに気付かず高級ソファーの方へ戻り、その動作を後、二回繰り返した。
「これが今回の成功報酬の三億円だ。レント君と同じくあの機械で数えるんだろ」
「いえ、今回は貴方を信用し数えませんが、最後に一つ質問しても良いですか?」
「なんでも申せ」
「何故、今川を殺さなければならなかったのですか?もしかして、昔から抱いている山光興業への背信が原因ですか?」
「・・・・・それもあるが、彼奴は、私の娘の佳純に執拗に付き纏っていた。私は彼奴の事が好かん。しかし、幾ら私が社長だからといって、世間からの体裁に敏感なこの会社では不当な解雇は出来ないし、もしそれを強行したとしても、彼奴の性格を考えると今後、佳純にストーカー紛いな事も致しかねん。そうなる前にこの世から抹殺するのがベストだと考えたからだ」
「なるほど、確かにあの人、執拗に佳純さんの気を引くように愛執していましたからね」
「まぁ、そんな事より茶菓子を召し上がってくれ」
「はい。では、遠慮なく頂きます」
そう言うと遠野がテーブルの上に置いてある饅頭を一つ手に取り頬張った。
「やはり、高級な饅頭は普通のと違いますね」
「そうだろう。私も頂くとしよう」
そう言うと、今度は清彦がテーブルの上に置いてある自分の饅頭を一つ手に取り頬張った。
「この饅頭を一度食べたらもう他の饅頭が食べられな ― く ― ・・・・・・・・・・・・・ゴフォッ、ゴフォッ、ゴフォッ。キッ、サマ、ドクヲ ― モ・・・・・・・・・・・・・・ッタ・・・・・・・・・・・・・・・ナ・・・・・・・・・・・・・・」
清彦は藻掻き吐血しながら、そう言い残し、高級ソファーから転げ落ち床へ倒れ込んだ。
「本当に人生で最後の質問でしたね。悪く思わないで下さい。これはある人物からの依頼を実行したまでの事で、私は貴方に肩入れするつもりは初めから毛頭御座いませんでした。私がこの時間帯、この部屋にいた事は当然シムテム上、貴方とある依頼者だけしか知りません。そして、貴方は部下の犯罪の責任を取って自殺したと警察に断定されるでしょう。また、この部屋は貴方以外の人間は余程の事がない限り入る事が出来ないので、貴方の発見時刻が遅れます。ご了承して下さい」
遠野が死体の清彦に告げると両手を合わせ、目を瞑り合掌した。
その直後、三十代後半の中年男性がこの隠れ家に入ってきた。
「これでこの部屋も俺が自由に使える訳だ」
「まだ、あんたが社長になるって決まった訳ではないでしょう」
「決まったのも同然さ。この会社は同族企業だからね。俺は佳純の婚約者、山鍋社長の息子はまだ小学生、よって、俺が次期社長間違いなしって訳だ。しかし、若くして大企業の社長という地位、それによる財産、美しい妻、世間から見れば俺は羨望の的だろうな。今まで鳴かず飛ばずで、人前で善人を演じてきた甲斐があったというものだ」
「他人に口を挟む気はないが、あんたも非道だね。自分の欲望の為に実兄までも利用するなんて。しかし、あんた運が良いね。非公開オークションでこの計画の真の首謀者権をあんたが一番高い入札金額で落札したからね。吝嗇な性格でなくて良かったね。もしそうだったら、今頃あんたが山鍋社長の立場だったよ」
「故山鍋前社長だろ。たった今から俺がこの会社の社長なんだから」
「だから、まだ決まった訳では・・・・・ってそんな事より約束の成功報酬五億円を所定の口座への振り込みは忘れないで下さいよ」
「分かっているって。これで財産はたっぷりある事になるからね。それにもし支払わなかったらあんたに殺されそうだ。しかし、あんた今回たっぷり儲けたね。兄貴と利恵さんから前金一千万円、山鍋前社長から前金一億円、成功報酬三億円、計四億円、そして、俺から前金一千万円、成功報酬五億円、計五億一千万円。総額九億二千万円。あんたこれで一生贅沢して暮らせるんじゃない。当然、所得は隠蔽出来るのだからお国様から差し引かれる事もないだろうしさ」
「まぁ、それなりの仕事はしましたからね。しかし、山鍋社長が寿命で亡くなるまでいや、せめて社長から引退するまで待てなかったものかね。それにあんたの婚約者の佳純さんはつくづく不幸な人だね。自分の親の殺害を依頼したのは自分の夫になる人で、その夫の裏の顔を知らずこれから先、狡猾なあんたと共に生きて行くなんて」
「それを待っていたら十年程掛かるだろうし、もし、待ったとしても恐らく、山鍋前社長は自分の寵愛している息子を社長にしてしまう可能性が高い。そうなったら、今度は山鍋前社長の代わりにその息子の殺人をあんたに依頼すると思うから、どっちにしろ一緒だよ。それに俺は千両役者で、佳純は無垢な性格だからね。余程の事がない限り、俺の冷酷な性格はばれないよ」
「まぁ、これ以上野暮な事は訊きません。もう一度確認しますが、山鍋社長の自殺の動機は部下の社会的責務を自らも取ったって事でお願いします」
「分かっているって。記者会見では悲痛な次期社長、笹野誠を演じて魅せてやるよ。俺の名演技を是非ニュースで観てくれ」
「あんた、相当性格悪いね」
「大きなお世話だよ」
そう聞くと遠野は「ではこれで私は失礼します。また、後処理は宜しく願いします。では、またのご利用お待ちしています」と言い残して部屋から出て行った。
「ああ、機会があったら、また是非利用させて頂きますよ。いや、俺を蹴落としたあの糞兄貴がいないから多分それはないか・・・・・」
扉が完全に閉まる音を聞き終わると自分と清彦以外いないこの隠れ家で、一人そう呟いた。
とある雑貨ビルの一室で、カラスのマークが入った艶やかな銀色のバッチを左胸に付け、全身黒スーツに身を包み、顔をサングラスとマスクで覆っている男が大きなジュラルミンケース三つを精一杯手に握り締めた若い男と密談している。
「レントさん、どうでしたか、私の仕事ぶりは?」
「なかなか良かったよ。次もお前に任す事にするよ」
「しかし噂通り、あの御神って男なかなかの逸材ですね。私が今回の推理現場に居合わせ、御神をじっくり観察した事も無駄ではありませんでしたね」
「ああ、偶々透氏の弟の誠氏の婚約者であった山鍋社長の娘の佳純氏が、御神と知り合いで山鍋社長や誠氏、透氏に対し佳純氏の知り合いである御神をこの計画に参加させる事を依頼を受ける為の条件項目に付け加えたのはやはり正解だったな。・・・・・今回の犯罪計画は幾つか綻びを作り、トリックも容易でレベルを序の口程度にしたがそれでも良く御神は全てを見抜いたな。わざわざ、山光興業のヘッドハンティングの噂話を広め、二つの銀行強盗事件から手回しした甲斐があったというものだ」
「次の依頼は一体どういった内容で、どういった計画を立てましたか?」
黒スーツの男が手に持っている灰色の鞄から手帳を取り出し一言。
「次の依頼は・・・・・」
「まぁ、あの御神とかという切れ者の存在は予定外でしたけど。私の正体に例え薄々気が付いていたとしても、その証拠や根拠が全くないので私を逮捕する事が出来ませんから、まぁ、勝負はイーブンで終わったってとこですかね」
「そうだな。私もライバル社の大きなイメージダウンが成功して良かったよ。これでこの業界は我が社が独占って訳だ。ついでにツインホテルの世間からの評判も悪くなる事は確実だし、積王商事も潰せたしな。・・・・・ああ、約束の成功報酬の三億円だな。こんな額、今回の成功を考えると安い物だよ」
そう言って清彦は高級ソファーから立ち上がり遠野に背を向け、金庫に向かって歩き出した。
それを見届けると、遠野が注射器を取り出し、清彦に気付かれないよう慎重に清彦の饅頭にそれを刺した。
しかし、清彦はそれに気付かず高級ソファーの方へ戻り、その動作を後、二回繰り返した。
「これが今回の成功報酬の三億円だ。レント君と同じくあの機械で数えるんだろ」
「いえ、今回は貴方を信用し数えませんが、最後に一つ質問しても良いですか?」
「なんでも申せ」
「何故、今川を殺さなければならなかったのですか?もしかして、昔から抱いている山光興業への背信が原因ですか?」
「・・・・・それもあるが、彼奴は、私の娘の佳純に執拗に付き纏っていた。私は彼奴の事が好かん。しかし、幾ら私が社長だからといって、世間からの体裁に敏感なこの会社では不当な解雇は出来ないし、もしそれを強行したとしても、彼奴の性格を考えると今後、佳純にストーカー紛いな事も致しかねん。そうなる前にこの世から抹殺するのがベストだと考えたからだ」
「なるほど、確かにあの人、執拗に佳純さんの気を引くように愛執していましたからね」
「まぁ、そんな事より茶菓子を召し上がってくれ」
「はい。では、遠慮なく頂きます」
そう言うと遠野がテーブルの上に置いてある饅頭を一つ手に取り頬張った。
「やはり、高級な饅頭は普通のと違いますね」
「そうだろう。私も頂くとしよう」
そう言うと、今度は清彦がテーブルの上に置いてある自分の饅頭を一つ手に取り頬張った。
「この饅頭を一度食べたらもう他の饅頭が食べられな ― く ― ・・・・・・・・・・・・・ゴフォッ、ゴフォッ、ゴフォッ。キッ、サマ、ドクヲ ― モ・・・・・・・・・・・・・・ッタ・・・・・・・・・・・・・・・ナ・・・・・・・・・・・・・・」
清彦は藻掻き吐血しながら、そう言い残し、高級ソファーから転げ落ち床へ倒れ込んだ。
「本当に人生で最後の質問でしたね。悪く思わないで下さい。これはある人物からの依頼を実行したまでの事で、私は貴方に肩入れするつもりは初めから毛頭御座いませんでした。私がこの時間帯、この部屋にいた事は当然シムテム上、貴方とある依頼者だけしか知りません。そして、貴方は部下の犯罪の責任を取って自殺したと警察に断定されるでしょう。また、この部屋は貴方以外の人間は余程の事がない限り入る事が出来ないので、貴方の発見時刻が遅れます。ご了承して下さい」
遠野が死体の清彦に告げると両手を合わせ、目を瞑り合掌した。
その直後、三十代後半の中年男性がこの隠れ家に入ってきた。
「これでこの部屋も俺が自由に使える訳だ」
「まだ、あんたが社長になるって決まった訳ではないでしょう」
「決まったのも同然さ。この会社は同族企業だからね。俺は佳純の婚約者、山鍋社長の息子はまだ小学生、よって、俺が次期社長間違いなしって訳だ。しかし、若くして大企業の社長という地位、それによる財産、美しい妻、世間から見れば俺は羨望の的だろうな。今まで鳴かず飛ばずで、人前で善人を演じてきた甲斐があったというものだ」
「他人に口を挟む気はないが、あんたも非道だね。自分の欲望の為に実兄までも利用するなんて。しかし、あんた運が良いね。非公開オークションでこの計画の真の首謀者権をあんたが一番高い入札金額で落札したからね。吝嗇な性格でなくて良かったね。もしそうだったら、今頃あんたが山鍋社長の立場だったよ」
「故山鍋前社長だろ。たった今から俺がこの会社の社長なんだから」
「だから、まだ決まった訳では・・・・・ってそんな事より約束の成功報酬五億円を所定の口座への振り込みは忘れないで下さいよ」
「分かっているって。これで財産はたっぷりある事になるからね。それにもし支払わなかったらあんたに殺されそうだ。しかし、あんた今回たっぷり儲けたね。兄貴と利恵さんから前金一千万円、山鍋前社長から前金一億円、成功報酬三億円、計四億円、そして、俺から前金一千万円、成功報酬五億円、計五億一千万円。総額九億二千万円。あんたこれで一生贅沢して暮らせるんじゃない。当然、所得は隠蔽出来るのだからお国様から差し引かれる事もないだろうしさ」
「まぁ、それなりの仕事はしましたからね。しかし、山鍋社長が寿命で亡くなるまでいや、せめて社長から引退するまで待てなかったものかね。それにあんたの婚約者の佳純さんはつくづく不幸な人だね。自分の親の殺害を依頼したのは自分の夫になる人で、その夫の裏の顔を知らずこれから先、狡猾なあんたと共に生きて行くなんて」
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「まぁ、これ以上野暮な事は訊きません。もう一度確認しますが、山鍋社長の自殺の動機は部下の社会的責務を自らも取ったって事でお願いします」
「分かっているって。記者会見では悲痛な次期社長、笹野誠を演じて魅せてやるよ。俺の名演技を是非ニュースで観てくれ」
「あんた、相当性格悪いね」
「大きなお世話だよ」
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扉が完全に閉まる音を聞き終わると自分と清彦以外いないこの隠れ家で、一人そう呟いた。
とある雑貨ビルの一室で、カラスのマークが入った艶やかな銀色のバッチを左胸に付け、全身黒スーツに身を包み、顔をサングラスとマスクで覆っている男が大きなジュラルミンケース三つを精一杯手に握り締めた若い男と密談している。
「レントさん、どうでしたか、私の仕事ぶりは?」
「なかなか良かったよ。次もお前に任す事にするよ」
「しかし噂通り、あの御神って男なかなかの逸材ですね。私が今回の推理現場に居合わせ、御神をじっくり観察した事も無駄ではありませんでしたね」
「ああ、偶々透氏の弟の誠氏の婚約者であった山鍋社長の娘の佳純氏が、御神と知り合いで山鍋社長や誠氏、透氏に対し佳純氏の知り合いである御神をこの計画に参加させる事を依頼を受ける為の条件項目に付け加えたのはやはり正解だったな。・・・・・今回の犯罪計画は幾つか綻びを作り、トリックも容易でレベルを序の口程度にしたがそれでも良く御神は全てを見抜いたな。わざわざ、山光興業のヘッドハンティングの噂話を広め、二つの銀行強盗事件から手回しした甲斐があったというものだ」
「次の依頼は一体どういった内容で、どういった計画を立てましたか?」
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