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第1話 秘密の共有は尊い
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バイト禁止の高校に入って一年。
高校二年生になり二ヶ月ほど経過していた。
一年の時からこっそり始めたバイト先のカフェが、今の時代に合わせてデリバリーなんて始めやがった。
普通自動二輪の免許を取得していた俺は店長より、「千田陽《せんだよう》をデリバリー大臣として任命する!」と辞令をいただいてしまった。
本日はデリバリー初配達。
似たような建物がそこらに並ぶ団地。
そこの三階が本日のお客様だ。
ピンポーンとチャイムを押す。
「カフェ・プレシャスでーす。ご注文の品をお届けに参りましたー」
『はーい』
お客様の返事と共に開けられらた玄関。
「「あ……」」
互いの顔を見合わせて声が漏れてしまった。
デリバリーをご注文のお客様は、クラスメイトの東都詩音《とうとしおん》であった。
亜麻色の長い髪に愛らしい顔立ち。
彼女の大きく澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。
いや、吸い込まれそうになっている場合じゃない。
「と、東都……?」
え、なんで? ここが東都の家? いやいや、配達先の人の名前は東都じゃなくて小林だったぞ。なんでぇ?
いや、小林さん家に東都がいる、いない問題は今はいい。
やばい。バレた。クラスメイトにバイトをしているのがバレた。
ウチの学校はバイトをしたら停学。最悪は退学になるくらい厳しい学校だ。
東都にチクられたら俺の学園生活──というか、俺の生活が終わる。
「頼む!」
咄嗟に頭を下げる。
「バイトのことは秘密にして欲しい!」
誠心誠意、魂を込めて頼み込む。今の俺にはこれしか思いつかない。
「あ、いやいや、全然、全然。頭なんか下げないで、千田くん」
こちらが玄関先でいきなり頭を下げたのに対し、向こうもどうリアクションしたら良いのかわからない様子で言ってくる。
「大丈夫だよ。千田くんがバイトしてることは誰にも言わないから。ね」
彼女の言葉を受け、俺は頭を上げた。
「ありがとう」
東都は誰かに言いふらすような奴ではない。普段の学校生活からそれは垣間見れる。
だけど、クラスメイトにバレた以上、いつ、どこで、どう漏れてしまうかはわからないよな。不可抗力というものが存在する限り、俺の不安は拭えない。
「でも、口だけじゃなんとでも言えるよね」
こちらの不安な気持ちを察したのか、東都が思い付いたように言ってくれる。
「そこで千田くん。私に提案があるんだけど」
「提案?」
♢
「本日からお世話になります、東都詩音です。よろしくお願いします」
カフェ・プレシャスの制服を着た東都がバッグヤードにて自己紹介をした。
パチパチと拍手が送られる中、店長の南健太郎《みなみけんたろう》さんが俺にボソッと言ってくる。
「デリバリーから戻って来たら、まさかこんな可愛い子を連れてくるなんて。キミもすみにおけないねー。こんな子、即採用に決まってるよー」
「あ、はは……」
俺もこのスピード感に付いていけていない。
東都詩音の提案はこうだ。
「私を千田くんの働いているバイト先で働かせてくれるようにお願いしてくれないかな?」
秘密を握られている俺としては、彼女の言う通りにしてバイクに彼女を乗せて店に戻って来た次第た。
店長に紹介すると、即合格。今から働いてもらうことになった。
ま、この店は、店長と店長の娘さんと俺の三人だけだったから、人材確保は店長としても喜ばしいことらしい。
「千田くん。これで私もバイト禁止の高校でバイトをする悪い人になっちゃった。お互いにバレたらまずい状況だね」
「これで本当に良かったのか?」
「うん。これで千田くんの秘密を喋らない証明になるかな?」
「俺の秘密を喋れば東都の秘密もバレることになるってことだな」
「そういうこと」
秘密の共有とか尊いな。
「ふふっ。私達ふたりだけの秘密だよ、先輩♪」
ふたりだけの秘密にプラスして同級生から先輩呼ばわりされるの尊いぞ。
高校二年生になり二ヶ月ほど経過していた。
一年の時からこっそり始めたバイト先のカフェが、今の時代に合わせてデリバリーなんて始めやがった。
普通自動二輪の免許を取得していた俺は店長より、「千田陽《せんだよう》をデリバリー大臣として任命する!」と辞令をいただいてしまった。
本日はデリバリー初配達。
似たような建物がそこらに並ぶ団地。
そこの三階が本日のお客様だ。
ピンポーンとチャイムを押す。
「カフェ・プレシャスでーす。ご注文の品をお届けに参りましたー」
『はーい』
お客様の返事と共に開けられらた玄関。
「「あ……」」
互いの顔を見合わせて声が漏れてしまった。
デリバリーをご注文のお客様は、クラスメイトの東都詩音《とうとしおん》であった。
亜麻色の長い髪に愛らしい顔立ち。
彼女の大きく澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。
いや、吸い込まれそうになっている場合じゃない。
「と、東都……?」
え、なんで? ここが東都の家? いやいや、配達先の人の名前は東都じゃなくて小林だったぞ。なんでぇ?
いや、小林さん家に東都がいる、いない問題は今はいい。
やばい。バレた。クラスメイトにバイトをしているのがバレた。
ウチの学校はバイトをしたら停学。最悪は退学になるくらい厳しい学校だ。
東都にチクられたら俺の学園生活──というか、俺の生活が終わる。
「頼む!」
咄嗟に頭を下げる。
「バイトのことは秘密にして欲しい!」
誠心誠意、魂を込めて頼み込む。今の俺にはこれしか思いつかない。
「あ、いやいや、全然、全然。頭なんか下げないで、千田くん」
こちらが玄関先でいきなり頭を下げたのに対し、向こうもどうリアクションしたら良いのかわからない様子で言ってくる。
「大丈夫だよ。千田くんがバイトしてることは誰にも言わないから。ね」
彼女の言葉を受け、俺は頭を上げた。
「ありがとう」
東都は誰かに言いふらすような奴ではない。普段の学校生活からそれは垣間見れる。
だけど、クラスメイトにバレた以上、いつ、どこで、どう漏れてしまうかはわからないよな。不可抗力というものが存在する限り、俺の不安は拭えない。
「でも、口だけじゃなんとでも言えるよね」
こちらの不安な気持ちを察したのか、東都が思い付いたように言ってくれる。
「そこで千田くん。私に提案があるんだけど」
「提案?」
♢
「本日からお世話になります、東都詩音です。よろしくお願いします」
カフェ・プレシャスの制服を着た東都がバッグヤードにて自己紹介をした。
パチパチと拍手が送られる中、店長の南健太郎《みなみけんたろう》さんが俺にボソッと言ってくる。
「デリバリーから戻って来たら、まさかこんな可愛い子を連れてくるなんて。キミもすみにおけないねー。こんな子、即採用に決まってるよー」
「あ、はは……」
俺もこのスピード感に付いていけていない。
東都詩音の提案はこうだ。
「私を千田くんの働いているバイト先で働かせてくれるようにお願いしてくれないかな?」
秘密を握られている俺としては、彼女の言う通りにしてバイクに彼女を乗せて店に戻って来た次第た。
店長に紹介すると、即合格。今から働いてもらうことになった。
ま、この店は、店長と店長の娘さんと俺の三人だけだったから、人材確保は店長としても喜ばしいことらしい。
「千田くん。これで私もバイト禁止の高校でバイトをする悪い人になっちゃった。お互いにバレたらまずい状況だね」
「これで本当に良かったのか?」
「うん。これで千田くんの秘密を喋らない証明になるかな?」
「俺の秘密を喋れば東都の秘密もバレることになるってことだな」
「そういうこと」
秘密の共有とか尊いな。
「ふふっ。私達ふたりだけの秘密だよ、先輩♪」
ふたりだけの秘密にプラスして同級生から先輩呼ばわりされるの尊いぞ。
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