こちらを無意識に尊死させようとしてくる東都詩音

すずと

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第16話 遠回しの言い方尊い

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 今日の放課後は東都とデートだ。

 早く放課後にならないか。時間よ早く進めと願いながら、ようやくと昼休みになる。

「陽」

 友人の爽やか甘いマスクにゴリマッチョのミスマッチボディ、風見晴人が声をかけてくれる。

「お客さんだぞ」

 晴人が教室の入り口の方を指差す。

 そこには金髪ショートのクールビューティー、西府雅の姿が見えた。

「西府さんが男子に用だなんて、もしかして告白とか?」

「まさか、そんなはずないだろ」

 そんなことを言いながら俺は教室の入り口の方へ足を伸ばした。

「急にごめんなさい」

「どうかしたのか?」

「ここじゃなんやし、場所変えてもええかな?」

「ああ」

「じゃあ、中庭で」

 西府の提案で場所を変えることに。

 中庭に向かっていると、男女問わず視線がこちらに飛んでくる。

 こいつ、やっぱりモテるんだな。

 そんなモテモテ女子は男子とあまり絡まない。なのに俺と歩いているもんだから、やたらめったら注目されている。

 もしかしたらカップルとか思われたかな。こんな美少女と思われるのは光栄だけど、俺は東都とカップルになりたいからなぁ。なんて思いながら中庭に到着する。

 あまり人がいない中庭。

 なんだか神妙な面持ちの西府。

 待って。え、待って。これってもしかして告白?

 うそ、ちょ、え? でも、雰囲気がなんか告白っぽいんですけど!?

 どどどどどーすんの? どーすんの!? 返事どうすんの!?

 こんな美少女が告ってきて、でも、俺は東都が好きだし、たこ焼き器持ってないし、お好み焼きをおかずに白米を食べないし……。

「千田くん、実は──」

「ごめん、西府! 俺、たこ焼き器ないし、お好み焼きで白米は食べられない!」

「……はい?」

「だから、その……」

「なんの話しか全然わからへんけど、ウチの家にもたこ焼き器ないし、お好み焼きは単品でいくで?」

「へ? そうなの?」

「あ、でも、関東のタクシーに乗った時の運ちゃんが、関西でうどん食うた時、汁が薄いから醤油入れたって言ってたな。関西のうどん出汁は関東の人には薄いんかな?」

「同じ日本でも味の文化が全然違うんだな」

「不思議な話やねぇ」

 ピューっと風が吹く。

「で? なんの話し?」

「千田くんがいきなりウチの話の腰を折ったんやで?」

「ほんますいまへん」

 とりあえず謝ると、改めて西府の話を聞く。

「実はな、ウチ最近成績が頭打ちしとって……成績上がらへんねん。もう少しで塾の模試もあるし、このまま成績下がったらって思うと不安なんよ」

 そこで、と俺に視線を送る。

「学年一位の千田くんに勉強見てみらいたくてな」

「なんだ……勉強か」

「なんやって言うけど、ウチには結構深刻なことなんよ?」

「ごめんごめん。それなら暇な時にいつでも良いよ」

「ほんま!? ありがとお! めっちゃ嬉しいわぁ」

 そう言って普段クールな西府が俺の手を握ってくる。

 クールな美少女が時折見せる無邪気な姿ってのは良いな。

「また暇な時あったら連絡頂戴や」

 そう言ってお互いにスマホを取り出して連絡先を交換した。

「そういえば、千田くん。なんや思ってた話しとちゃうっぽい反応してたけど、なんの話しやと思ったん?」

「いや、その……」

「もしかしたら、ウチがあんたに告るとでも思った?」

「うっ……!」

 図星です、はい。

 こちらの態度で察したのか、西府はクールに微笑んだ。

「でも、もしかしたらあり得る話しかもな」

「へ?」

「だってウチのタイプは、自分より頭の良い人やし」

「なっ……!?」

 それって、つまり西府は俺のことを……?

 こちらが慌ててるところにボソッと言ってくる。

「また色々教えてな、先生」

 色々ってなに!?

 関西弁でそんなこと言われるのもアリか……。



 教室に戻ると、やたらと視線を感じる。

「東都、どうかした?」

「べっつにー」

 隣の席の東都が、むすっとしていた。

「ただ、西府さんに呼びされて戻って来たら千田くんがにやにやして戻って来たから、良い事あったんだねーって思ってるだけですけどー」

「にやにやしてた?」

「知りませーん」

 ぷいっと視線を逸らされてしまう。

「……告白でもされたの?」

 顔を逸らしたまま聞かれる。

「俺なんかが告白なんてされるはずないだろ」

 答えると、「そっか」と小さく言って、顔をこちらに向けてくれる。

「でも」

 東都は嬉しそうな笑みで言ってくれる。

「千田くんに告白してくれる人は案外近くにいるかもね」

「それって……」

 キーンコーンカーンコーンと鐘の音が響き渡る。

「あ、ほらほら、授業始まっちゃう」

 そう言ってわざとらしく机の中から教科書を取り出し、さっきの話をなかったことにしやがった。
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