こちらを無意識に尊死させようとしてくる東都詩音

すずと

文字の大きさ
20 / 20

第20話 東都と花火大会より尊いことをする

しおりを挟む
 今日は東都と花火大会に行く約束をしている。

 花火大会会場の最寄駅で待ち合わせとなっているのだが。

「すんげぇ人」

 花火大会会場の最寄駅は人で溢れていた。流石は夏の風物詩だな。

「千田くーん!」

 駅前で待っていると、聞き慣れた声が聞こえてくる。

「東都……」

 目の前に現れたのは、白を基調とした黄色い花柄の浴衣姿の東都であった。浴衣に合わせて髪を上げている。

 清楚な見た目に活発な性格って感じで、東都にマッチしている。

 普通に見惚れてしまった。

「めちゃくちゃ浴衣似合ってる」

 つい声に出して言うと、髪を触りながら少し頬を赤く染めた。

「あ、ありがと」

 そこから少しばかりの沈黙のあと、東都が口火を切った。

「ごめんね、遅れちゃって」

「何言ってんだ。約束の時間より全然早いぞ」

 前回は東都を待たせてしまったから四〇分前に着たのだが、俺が着いてからものの五分で来た。

 約束の三五分前に来て遅れちゃってなんてセリフを聞くとは思いもしなかった。

「次は私が早く行って待ってるから」

「次もデートするのか?」

 そう聞くと、ちょっと照れながら視線を逸らす。

「せ、千田くんは偽物だけど私の彼氏さんだから、ね。か、勘違いしないでよね。偽物だから仕方なく、だからね」

「おおー!!」

 俺はつい拍手をしてしまう。

 東都が、あの東都が普通のツンデレを披露してくれた。これほどまでに嬉しいことはない。

「え? え?」

「いや、なにもない」

 感慨深く頷いて彼女へ言ってのける。

「行こう」

「あ、う、うん」

 俺達は歩み出し、花火大会の会場へ向かった。

♢ 

 最寄駅も多かったけど、会場に向かえば向かうほどに人の数は多くなる。

「東都、はぐれないように手を繋ごう」

「ええ!?」

 なんとも驚いた声を出されてしまう。

「偽物でもなんでも、俺達は恋人、なんだろ?」

 東都と手を繋ぎたいだけなのに、それらしい理由を述べると東都はコクリと頷いて俺と手を取り合ってくれる。

 東都の手小さくて柔らかい……。

 あー、くそ。やたらめったら緊張して汗が止まらない。

 東都、俺のこと気持ち悪いとか思わないかな……。うおお、止まってくれ、俺の手汗。

 そんな願いは叶わなかったが──。

 ギュッ。

 東都が優しく手を握り返してくれる。

 東都の方へ視線をやると。

「え、へへ……」

 照れ笑いを浮かべていた。

 可愛すぎて尊死するところだったわ。



 無言のままだが、しっかりと手を繋いだまま花火大会会場までやって来た。

 もうすぐ花火が打ち上がるってところなのに、まだ俺達は手を繋いだままだ。

 バーン──!

 夜空に花火が打ち上がる。夜空をバックに花を咲かせる火の花はとても綺麗であった。

 だけど、花火よりも俺の視線は東都にいってしまう。

 花火よりもずっと綺麗な東都を見てしまう。

「綺麗だね」

 ニコッと微笑んでくれる笑顔が尊過ぎて限界だった。

「東都の方が綺麗だ」

 バーン!!

 俺の言葉は花火の音にかき消された。

「千田くん? 今、なんて言ったの?」

 やっぱり今のは聞こえてなかったか。

 ま、別に良いけどさ。

「俺は東都が好きだって言ったんだよ」

「え……」

 唐突な俺の告白に東都は目を丸めていた。

「東都に偽物の彼氏を頼まれて嬉しかったけど、こうやって一緒に花火大会に来たら、やっぱりそんなんじゃなくて本物の恋人になりたい」

 一度好きだと告白すると止まらなかった。

「俺の秘密を守ってくれた。学校サボってまで看病してくれた。俺の過去を聞いてくれた。そんな優しい東都が俺は大好きなんだ」

 俺の告白を聞くと、東都は声も出さずに涙を流した。

「嬉しい……」

 そう言うと、涙を拭きながら言ってくれる。

「本当はね、しつこい人に、『大好きな彼氏と行く花火大会の方が楽しい!』じゃなくて、『大好きな千田くんと行く花火大会の方が楽しい!』って言っちゃったんだ……。だから、ね。今日は絶対に私から告白するって決めてたんだ」

 なんだよ、それ。めちゃくちゃ嬉しいじゃないか。

「千田くんのこと前から好きだったんだよ。千田くんと秘密の共有できて、一緒にバイトして、勉強して、千田くんのことを知れて、もっともっと千田くんのことが好きになった」

 だから、ニコッと東都が涙を流しながら微笑んだ。

「私を千田くんの本物の彼女にしてくれませんか?」

「うん。俺の彼女になってくれ」

 俺は手を離し、東都を抱きしめた。

 そして見つめ合いそのまま唇を重ねた。



 唇を離すと、お互いに照れながら視線を逸らす。

「えっと……あの……」

「どうかした?」

「もう一回、キス、したい──ん♡」

 このあとめちゃくちゃキスをした。

 花火大会なのに花火なんて見ず、ひたすらにキスを重ねた。

「えへへ、これからもよろしくお願いします♡」

「こちらこそお願いします」

 改めて、彼氏彼女の挨拶をすると、更にキスをした。

 周りの目なんか気にせずにひたすらに──。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...