クーデレお嬢様のお世話をすることになりました

すずと

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第21話 お嬢様に厳しいノルマを与えられました

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 6限はそのまま体育祭の事を決める時間となる。
 それぞれ出場種目が決まったので、続いては男女で出場する種目別に集まって話をする事になる。
 短距離や中距離の人達何かは決める事なんてないから駄弁っているだけだが、俺みたいな男女混合リレーに出場が決まった人間は順番等を話さなければならない。

「あ、蓮くんと南方くんがリレーなんだ」

 そう言いながらこちらへ来たのはクラスのアイドル水野 七瀬。

「――よろしく」

 そして無表情お嬢様の波北 綾乃であった。

「お! 七瀬と波北さんと一緒か!」

 流石のフレンドリーイケメン野郎の蓮もアヤノの事は苗字呼びらしい。

「よろしくー」

 うはぁ。美少女2人とか目の保養になるわー。
 
 何て思いながら俺は無難に挨拶すると水野が俺に微笑みかける。

「体育祭でも同じだね。よろしくお願いします。先輩」

 そう言うとピクッとアヤノが反応した気がした。

「その先輩呼びはやめれ」

 邪な事を考えてしまうから。

「ふふ。本当の事でしょ?」
「お前面白がってるだろ?」
「だってちょっと照れてる感じがして可愛いんだもん」
「あのなー」

 それは照れているんではなくて、エロい事を考えているんです。

 なんて言うと引かれるから言わないでおこう。

 そんな話をしていると蓮が爽やかに笑いながら言ってくる。

「七瀬と涼太郎ってそんなに仲良かったっけ?」
「そうだよー。ね? 南方くん」

 そう言って俺の隣にピョンと立つ。
 若干ぶりっ子っぽい行動だが、可愛いから許せる。

 しかし仲が良いのか? バイトが同じだけだろ? 

 そう言おうとしたが、彼女の甘い香りのせいでその言葉が出なかった。
 この子めっちゃ良い匂いすんだよな。何で美少女って良い匂いするんだろうね? 不思議だわ。

「――順番。どうする?」

 話が脱線しかけた所をアヤノが珍しく発言する。
 その発言を受けて「そうだね」と蓮が仕切ってくれる。

「七瀬の運動神経が良いのは知ってるけど……。2人は?」

 蓮が俺を見て聞いてくる。

「普通かな。中学は運動部だったけど、高校じゃ運動してないし」
「そうか。波北さんは?」

 アヤノは蓮を見て少し考えた後に口を開いた。

「普通」
「おっけ。ならアンカーは俺で良い……かな?」

 仕切りがアンカーに行くという発言は少し嫌らしい気もするが『普通』という1番難しい答えを出した俺がどうこう言える立場ではない。それに、これは蓮なりの気を使った発言なのだろう。アヤノもそう思ったのか、蓮の発言に頷いた。水野は彼の運動神経を分かっての事なのか、迷いなく頷いた。

 イケメンで運動神経も良いってか? 人生イージーモードだな。この野郎。

「それじゃあ1番は――七瀬行ってくれるか?」
「分かった」

 蓮の提案に水野は頷く。

「それじゃあ俺が2番行くよ。女、男、女、男がセオリーだろ?」

 そう言うと蓮は爽やかに「OK」と了承してくれる。

「波北さんは3番で大丈夫?」

 蓮が尋ねると頷いて答えた。

「よっしっ。――ってすんなり決まったな」
「私達チームワーク良いんじゃない?」
「リレーはチームワークも大事だからな。これなら1位狙えるかもな!」

 男女混合リレーチームは結構和やかなムードであった。



♦︎



『放課後。ちょっぱやで自販機前よろ』

 6限終わりに直接言えば良いのに、相変わらず性格の違うメッセージが届いていた。

 パッと後ろを振り返ると既にアヤノの姿はない。

 やべ……。心読まれたおっぱいの件か……。さっき普通に輪にいたから忘れてた。
 行かないと怒るよな……。最悪クビになるかもしれないし行かないとな……。

 元々今日の放課後はアヤノの所でバイトの予定だったし、アヤノにもこの後仕事すると言ってあるんだよな……。

 ――行くしかないか。
 
 俺は意を決して旧校舎の自販機前に向かった。



 ――指定された場所に到着すると、アヤノはこの前座っていた席でスマホを弄っていた。

「ご、ご機嫌よう……」

 様子を伺う様にアヤノに近づくとこちらに気が付いて見てくる。
 その表情はいつも通りの無表情なので、怒っているのかどうかは判断出来ない。

「リョータロー。遅い」
「アヤノが早いんだって……。それで、話って?」

 怒られる覚悟を決めて話題を振るとアヤノはサラッと言ってのける。

「体育祭までに速く走れる様にして」
「――ごめん! やっぱりおっぱ――はい?」
「おっぱ?」
「いやいや。こっちの話」
 
 なんだ、おっぱいの事じゃなかったか。てかそりゃそうだわな。エスパーじゃあるまいし、分かるはずないか。

「――じゃなく! どゆことよ?」
「私の運動神経は悪い」

 堂々と言ってくる。

「さっき普通だって言ってたろ」
「空気を読んだ」

 キミ空気読めるんだね。

「いや、おまっ。え? 蓮とかめっちゃ勝つ気でいるぞ?」
「そもそも体育が苦手だからリョータローに相談しようとした。だけど運悪くクジで苦手なリレーになった。そして風見くんのやる気に負けて空気を読んだ」
「そこは素直に言っておけよ」
「でも、嘘が嘘でなくなれば真実。体育祭までにリョータローが私を仕上げれば何の問題もない」
「そんなめちゃくちゃな」
「それを当分のノルマとする」
「あ! お前! きったねー」
「それがリョータローの仕事」

 仕事ってホント楽な物なんてないですな。

「――はぁ。わーったよ。1回走ってみてくんない?」
「どこ?」
「ここら辺。軽くで良いから」

 そう言うとアヤノは素直に頷いた。

 そして走り出す。

 うわぁ。すごーい。

 めちゃくちゃ可愛い走り方。これ見たら男共の何人か惚れてまうわ。

 所謂女の子走りで可愛く内股でトテトテと走っていた。

 駐輪場と反対方向に走って行き、ある程度したら引き返して戻ってくる。

「どう?」

 戻って来たアヤノは涼しい顔をして聞いてくる。

「全然ダメ」
「そう」

 少しションボリした声を出す。

「私の全力だった」
「全力だった割に涼しい顔してるけどな」
「息切れが激しい」
「嘘つけ!」

 無表情で息も上がってないのにそんな訳あるか!

「とりあえず今の走り方で速くなるのは難しいな」
「この完璧なフォームが?」
「本気で言ってんの? それボケだよね?」
「割と本気」
「今すぐその概念を捨てろ」
「簡単に捨てられる物じゃない」
「なんでそこにプライド持ってんだよ!」
「このフォームで速くなりたい」
「なんのこだわり!? 無理だから! 頼むから言う事聞いて」

 俺の頼みに考え込むアヤノ。
 
 なんなのこの子。意味ぷーなんだけど。

「ポテチ買ってやるから言う事聞けって」
「2つで手を打つ」

 お嬢様の癖にポテチで釣れたわ。

「それで良いから。――そんじゃまず腕の振り方からだな」

 俺はその場でいつも走る時の腕の振り方をする。右腕が前に出ている時は左腕が後ろ。左腕が前に出ている時は右腕と一般的な走り方を見せる。

「無難」
「あれ? 今もしかして文句言いました?」
「それじゃあ特徴がない」
「へいへい。どしたどした。いきなり個性出して目立ちたいんですか? この野郎」
「やはり私の走り方が完璧」
「――な訳ねーだろ! 良いからさっさとやる!」

 そう言うとポテチの為なのか、アヤノは不器用に腕を振って見せる。その姿は電車ゴッコみたいである。
 どうしてこうなった?

「こう?」
「全然ダメ」
「難しい」

 何が難しいのか俺には理解できないが……。世の中にはジャンプ出来ないアイドルもいるというから、腕振りが出来ない人がいてもおかしくはない。

「うーん……。そうだな……」

 俺は彼女の前に立つ。

「右腕出して」

 言いながら俺も右腕を出す。
 真似してアヤノも右腕を出す。

「左腕はこう」

 言いながら左腕を後ろに持っていく。
 これも真似して同じポーズを取ってくれる。

「そのまま左右を逆転させる」

 ゆっくりと右腕を後ろに持っていきつつ左腕を前に持ってくる。
 アヤノも右腕を後ろに持って――いかずに左腕を前に出す。

「こう?」
「なんでそうなった?」
「やはり先程の私のフォームが――」
「――完璧じゃねーよ!」

 はぁ……。このお嬢様めちゃくちゃ不器用だな。

「仕方ない。アヤノちょっと我慢しろよ?」

 そう言って彼女の右手首を軽く握る。その時軽くピクっと反応した。

「――っとごめん。痛かったか?」
「問題ない。それで? どうするの?」
「あ、ああ。この手を前に出して。左腕は後ろね」

 言われた通りアヤノが右腕を前に出す。それに釣られて俺の左手も前に出る。

「さっきみたいに右と左を逆転させる」

 言う通りに左を前に出そうするが、右の反応が無いので、俺がサポートで後ろに持っていってやる。

「――こう!」
「おお。出来た」
「よし。次だ」

 俺はアヤノの左側へまわり、左手首を掴む。
 そしてさっきと同じ様にサポートしてやる。

「そうそうそう! そんな感じよ!」

 パチパチパチと手を叩いて褒めてやる。

「これくらい余裕」
「どの口が言うとんねん! ほら、次は自力でやってみよう」
「もうマスターした」

 そう言ってアヤノは後ろの左腕を前に持っていき、右腕は――そのまま!

「なんでやねん!」

 どうやらこれはかなりの重労働になりそうである。
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