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第23話 本番の朝はいつもと違います
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アヤノの震えてる姿を見て、アヤノと相合傘をして、ちょっと彼女を意識してしまうようになる。なんたって美少女だし。ちょっとだけね。
でも、向こうは相変わらずの無表情で意識している感じなんて微塵も感じない。
なんだろ、こちらは少し意識してるのに向こうはしてないなんて、子供じみた発想だが少し寂しい気持ちになる。
反面、俺なんかに意識なんかしないよなー、何て悲しい納得が出来る自分がいる。
まぁ意識してるって言っても、所謂片思いってやつとはちょっと違う。あれだな。無表情で何を考えてるか分からない奴から身近な女の子になったってイメージかな。
体育祭当日。
学校イベントだろうが関係なく、いや、学校イベントだからこそというべきか。
俺は習慣となった早起きをして仕事場であるアヤノの家に向かう。
ここ最近のノルマが【体育祭までに速く走れる様に】との事だったので、夕飯を作ってあげれていない。そもそも夕飯を作ったのは初めてアヤノの家に行った1回きりだ。基本的に俺の母さんが晩御飯を作ってあげているみたいだから心配はいらないのだが、俺の必殺カレーを披露する機会がないのは少し寂しい。母さん曰く初めて食べる人には衝撃らしいからな。あの無表情お嬢様の喜びの表情を拝んでみたいものだ。
あ、そうだ。母さんに頼んで――。
思い付いた事を早速母さんに伝える為にスマホを操作してメッセージを送る。その後に勝手知ったるなんとやら。もう慣れた手つきでアヤノの家のドアを開けて、見慣れた無駄に広い玄関を抜け、アヤノの部屋に勝手に入る。
どうせ寝てるだろうし、ノックする意味もない。
さて、今日はどうやって起こすかな? コショウでもぶっかけてやるか? 流石に無表情から苦い顔になり、怒りの表情を見せてくれるだろう。それはそれで見てみたいものだ。
そんな事を考え「アヤノー。朝だぞー」と言いながら部屋に入る。
入った途端に俺は目を疑ったね。感動した。
アヤノが起きている。あのアヤノが起きているんだ。自力で。まだ6時台だと言うのにだぞ? 今まで何をしても起きなかったアヤノが今日に限ってはめちゃくちゃ早起きであった――下着姿だけど。相変わらずおっぱいちっちぇー。
「なに?」
首を傾げて尋ねてくる。
この状況でなにって……クールというか、ドライというか。
下着姿で男が入ってきたのにも関わらず隠す素振りも見せないのはやはり俺の事なんて何も意識していないんだな。と少しだけ、少しだけ凹む。
とか思いつつも俺の視線はしっかりバッチリと2つの小さな乳房に注いでしまう。だって男の子だもん。本能が刮目せよ! と眼球に指令を与えてくるんだ。抗うことは出来ない。それが例え小さくともだ。それが雄の使命なのである!
「リョータロー……」
彼女の呼びかけに「はっ」っとなり、俺の脳内が何か言い訳を言えと命令してくる。
「いや、ね! ホントね! なんだろ……」
しかし、咄嗟の語学力の低さが出てしまい上手い言い訳を考えつく事が出来なかった。
「ご、ごめん!」
シンプルな謝罪の言葉を発する。
視線はまだ本能のままだけど。
「視線の先と言葉が合っていない」
男の視線ってすぐバレるよね。
「ア、アヤノも隠すとかしてくれよ!」
「リョータローがすぐに出て行くべき」
ごもっともで。
「お、お邪魔しましたー!」
俺は勢いよく部屋を出て行ったのであった。
――いつもとちょっと違う朝。いつもより随分早いモーニングティーを制服に着替えたアヤノに提供してやると、彼女はダイニングテーブルでそれを優雅に飲む。その姿は絵本に出てくるお姫様がテラスでお茶を楽しむ様な光景であった。
「ほ、本日の紅茶はいかがですか?」
紅茶を提供して、立ったまま彼女に問う。
先程下着姿を見てしまったので怒っているか探る様に聞いてみる。
「いつも通り」
「そうっすか……」
恐らくだが怒ってはいない様だ。
前は裸見ても怒られはしなかったので、下着姿見られた位じゃ屁でもないってか? それはそれでどうなんだ……。
「リョータロー?」
アヤノがこちらを見てくる。
「はい?」
「座らないの?」
「あ、ああ……」
いつもは朝に余裕がないので座る事なんて習慣に無かったから突っ立ったままであった。
「そんじゃ失礼して」
そう言って反射的に彼女の正面に座ろうとする。
「待って」
俺が椅子に手をかけようとした時、彼女から制止の言葉がかけられる。
「ん?」
「そこはダメ。座るなら……。そこの隣にして欲しい」
「こっち?」
「そっち」
アヤノが指定したのは彼女の父親がいつも座っている席だ。
正面の席は嫌って事か? 俺の事を正面では見たくない? そんなんめっちゃ傷つくやん……。
いや、それは被害妄想が過ぎるか。
思い返してみたら隣に座った事もあるし、店では正面の席に座ってたし。
だから一概に俺の正面が嫌という訳ではなさそうだ。
何か理由があるのだろう。
「そこに座ったらダメな理由があるのか?」
そう尋ねるとコクリと頷く。
良かった。やっぱり理由があるみたいだな。
その後にそのまま何か理由を言ってくれるのかと思ったが、アヤノは黙ったまま安物の紅茶を飲み続けていた。
いや! 言わんのかいっ! って心の中でツッコミを入れるが、言いたくない理由でもあるのだろう。
そんなツッコミを終えるとアヤノは紅茶を飲みながらふとキッチンに目をやった。
「あ、もしかして腹減った? 朝飯欲しいとか? でも――」
俺の言葉が終わる前にアヤノは首を横に振る。
そしてリビングの時計を見た後に俺に言ってくる。
「それよりも時間があるなら……」
途中でアヤノが言いかけて言葉を止めた。
「ん?」
「いや、いい。なんでもない」
何か言いたげであったが、アヤノは何も無かったかの様な態度を取る。
「そうか? ――でも、アヤノがもし朝ご飯いるって言ってもごめんなってなったよ。確か母さんが食材切らしてるって言ってたから朝飯作れないわ。今日買う予定だって言ってたけど。どうせ昼もコンビニだし、早めに出て朝ご飯でも食べるか?」
「それで良い……」
「んー?」
アヤノの表情は変わらないが少しションボリとした雰囲気を感じた。
「なに?」
「ああ……。いや、何となく今アヤノが悲しそうな……。なんて言うと大袈裟だけど、ショボーンとした感じに思えたから」
前々から表情は変わらないけど何となくこうだなー、って感じはしていたけど、今回のは今までよりも確実に感じる事が出来た気がしたので言葉に出してみる。
「べ、別に。そんな事ない」
珍しく言葉を詰まらせた。
「そっか? んまぁアヤノがそう言うなら俺の気のせいなんだろうな」
「そ、その通り」
「アヤノは表情があんまりコロコロと変わるタイプじゃないから見た目で判断するのはちょっと難くて、何となく雰囲気で言ってみただけだよ。あ! でもさ、アヤノってポーカーとかめっちゃ強いんじゃない? もしかして今まで負けた事ないとか?」
出来るだけポップに「お前は無表情で分かりにくい」って事をいじってみるとアヤノは目を伏せてしまった。
あー、しまったな。嫌味を言うつもりではなく、ちょっとした話題としてあげたつもりだったが本人には重い案件だったか。
いじられたくない事だったなら次から話題には出さないでおこう。
自分の中で1人反省会を開いているとアヤノが小さく言ってくる。
「正面悩みではある」
「悩み?」
「そう。あまり感情が表に出ないと言われる事は多々ある……」
「そうだな」
「昔は感情のないロボットだと言われた事もあった」
「ロボットって……」
それは……。良くない。それは言った奴本当に良くないぞ。思っててもそんな事は絶対言っちゃいけない。俺も表情が分かりにくいとはいじったけど、ロボットはだめだぜ。
そんな綺麗事と共に、その言った相手の気持ちも分からなくはないと思うのは俺の性格が悪いからだろうか。
でも――。
「でも……。そんな事ないよな?」
「え?」
俺の言葉に伏せていた目をこちらに向ける。
「表情には出ないだけで、アヤノの中ではちゃんとリアクション取ってるんだろ? 違うか?」
話の流れと今まで何となく感じていた事を思い返して尋ねるとコクリと頷く。
「私も思っている事や感じている事は沢山ある」
それを聞けて、ああは言ったものの正直安堵した。
そりゃ人間なのだから感情が湧くのは当然の事。
しかし彼女の場合は無表情過ぎて、読めなさ過ぎて不安であったが、彼女のその言葉を聞けて安心した。
それと同時に興味が湧く。
「例えば?」
「例えば……」
アヤノは少し考えて口を開いた。
「話かけられたら嬉しい。クラスの人達が話をしている内容があれば中に入りたい。友達と大きな声で笑い合いたい。寄り道したい」
「えっと……」
思ったより偏った返答であった。
「友達が欲しいの?」
「べ、別に……」
「何でそこは強がるんだよ……」
俺のツッコミにアヤノは俺をジッと見つめる。
「え? な、なに?」
「あとは覗かれて恥ずかしい」
おっと! いきなりの俺への攻撃が仕掛けられた。
「や! ちょ! きょ、今日のは不可抗力だろ。つかお前が部屋には勝手に入って良いって言っただろうが」
「言った。じゃあ前の脱衣所のは故意的だったの?」
「あれこそ完璧なる不可抗力だっての! まずアヤノの家だって事すら知らなかったよ」
「そう」
「あっれ? 信じてない感じ?」
「ない」
「ど、どうすれば信じてもらえるかしら?」
「でも、別にリョータローだから……。構わない」
「え?」
それってどういう。
「リョータローにはそんな度胸ないだろうし」
「なっ!」
それはそれで男としてのプライドが傷つけられた気がする。
しかし正論なので言い返せない。
「はぁ……。ほらほら。紅茶飲んだならさ、早起きしたんだからちょっと早めに行こうぜ。折角の体育祭なんだし」
空のカップを見てアヤノに言う。
「バイク?」
「何でだよ。時間余裕あるのにリスク高すぎるだろ」
「罰を受けるのはリョータローだけ。私に危害はない」
「とんでもねぇ事言うな」
「人間らしいでしょ?」
何でそんな質問してくるのだろうと思ったが、先程の話題でロボットと言われたのを思い出しての発言なのだろう。
「性格のわっりぃな人間だな。ほらほら行くぞ」
そう言って俺が立ち上がるとアヤノも立ち上がった。
いつも通りシンクにカップをいれてから俺達は家を出た。
今日は朝からアヤノの悩みを聞けたな。
朝から中々に深い話だったが、今日は学校イベントの体育祭だからな。
体育祭だけじゃなくて、修学旅行とか文化祭とかの日って妙にテンションが上がって色々と話したい気分になるよね。ポップな話からディープな話まで。アヤノもそんな気分だったのだろう。
そう考えるとアヤノは無表情のお嬢様だけど、どこにでもいる普通の女の子なんだなと実感出来る。
でも、向こうは相変わらずの無表情で意識している感じなんて微塵も感じない。
なんだろ、こちらは少し意識してるのに向こうはしてないなんて、子供じみた発想だが少し寂しい気持ちになる。
反面、俺なんかに意識なんかしないよなー、何て悲しい納得が出来る自分がいる。
まぁ意識してるって言っても、所謂片思いってやつとはちょっと違う。あれだな。無表情で何を考えてるか分からない奴から身近な女の子になったってイメージかな。
体育祭当日。
学校イベントだろうが関係なく、いや、学校イベントだからこそというべきか。
俺は習慣となった早起きをして仕事場であるアヤノの家に向かう。
ここ最近のノルマが【体育祭までに速く走れる様に】との事だったので、夕飯を作ってあげれていない。そもそも夕飯を作ったのは初めてアヤノの家に行った1回きりだ。基本的に俺の母さんが晩御飯を作ってあげているみたいだから心配はいらないのだが、俺の必殺カレーを披露する機会がないのは少し寂しい。母さん曰く初めて食べる人には衝撃らしいからな。あの無表情お嬢様の喜びの表情を拝んでみたいものだ。
あ、そうだ。母さんに頼んで――。
思い付いた事を早速母さんに伝える為にスマホを操作してメッセージを送る。その後に勝手知ったるなんとやら。もう慣れた手つきでアヤノの家のドアを開けて、見慣れた無駄に広い玄関を抜け、アヤノの部屋に勝手に入る。
どうせ寝てるだろうし、ノックする意味もない。
さて、今日はどうやって起こすかな? コショウでもぶっかけてやるか? 流石に無表情から苦い顔になり、怒りの表情を見せてくれるだろう。それはそれで見てみたいものだ。
そんな事を考え「アヤノー。朝だぞー」と言いながら部屋に入る。
入った途端に俺は目を疑ったね。感動した。
アヤノが起きている。あのアヤノが起きているんだ。自力で。まだ6時台だと言うのにだぞ? 今まで何をしても起きなかったアヤノが今日に限ってはめちゃくちゃ早起きであった――下着姿だけど。相変わらずおっぱいちっちぇー。
「なに?」
首を傾げて尋ねてくる。
この状況でなにって……クールというか、ドライというか。
下着姿で男が入ってきたのにも関わらず隠す素振りも見せないのはやはり俺の事なんて何も意識していないんだな。と少しだけ、少しだけ凹む。
とか思いつつも俺の視線はしっかりバッチリと2つの小さな乳房に注いでしまう。だって男の子だもん。本能が刮目せよ! と眼球に指令を与えてくるんだ。抗うことは出来ない。それが例え小さくともだ。それが雄の使命なのである!
「リョータロー……」
彼女の呼びかけに「はっ」っとなり、俺の脳内が何か言い訳を言えと命令してくる。
「いや、ね! ホントね! なんだろ……」
しかし、咄嗟の語学力の低さが出てしまい上手い言い訳を考えつく事が出来なかった。
「ご、ごめん!」
シンプルな謝罪の言葉を発する。
視線はまだ本能のままだけど。
「視線の先と言葉が合っていない」
男の視線ってすぐバレるよね。
「ア、アヤノも隠すとかしてくれよ!」
「リョータローがすぐに出て行くべき」
ごもっともで。
「お、お邪魔しましたー!」
俺は勢いよく部屋を出て行ったのであった。
――いつもとちょっと違う朝。いつもより随分早いモーニングティーを制服に着替えたアヤノに提供してやると、彼女はダイニングテーブルでそれを優雅に飲む。その姿は絵本に出てくるお姫様がテラスでお茶を楽しむ様な光景であった。
「ほ、本日の紅茶はいかがですか?」
紅茶を提供して、立ったまま彼女に問う。
先程下着姿を見てしまったので怒っているか探る様に聞いてみる。
「いつも通り」
「そうっすか……」
恐らくだが怒ってはいない様だ。
前は裸見ても怒られはしなかったので、下着姿見られた位じゃ屁でもないってか? それはそれでどうなんだ……。
「リョータロー?」
アヤノがこちらを見てくる。
「はい?」
「座らないの?」
「あ、ああ……」
いつもは朝に余裕がないので座る事なんて習慣に無かったから突っ立ったままであった。
「そんじゃ失礼して」
そう言って反射的に彼女の正面に座ろうとする。
「待って」
俺が椅子に手をかけようとした時、彼女から制止の言葉がかけられる。
「ん?」
「そこはダメ。座るなら……。そこの隣にして欲しい」
「こっち?」
「そっち」
アヤノが指定したのは彼女の父親がいつも座っている席だ。
正面の席は嫌って事か? 俺の事を正面では見たくない? そんなんめっちゃ傷つくやん……。
いや、それは被害妄想が過ぎるか。
思い返してみたら隣に座った事もあるし、店では正面の席に座ってたし。
だから一概に俺の正面が嫌という訳ではなさそうだ。
何か理由があるのだろう。
「そこに座ったらダメな理由があるのか?」
そう尋ねるとコクリと頷く。
良かった。やっぱり理由があるみたいだな。
その後にそのまま何か理由を言ってくれるのかと思ったが、アヤノは黙ったまま安物の紅茶を飲み続けていた。
いや! 言わんのかいっ! って心の中でツッコミを入れるが、言いたくない理由でもあるのだろう。
そんなツッコミを終えるとアヤノは紅茶を飲みながらふとキッチンに目をやった。
「あ、もしかして腹減った? 朝飯欲しいとか? でも――」
俺の言葉が終わる前にアヤノは首を横に振る。
そしてリビングの時計を見た後に俺に言ってくる。
「それよりも時間があるなら……」
途中でアヤノが言いかけて言葉を止めた。
「ん?」
「いや、いい。なんでもない」
何か言いたげであったが、アヤノは何も無かったかの様な態度を取る。
「そうか? ――でも、アヤノがもし朝ご飯いるって言ってもごめんなってなったよ。確か母さんが食材切らしてるって言ってたから朝飯作れないわ。今日買う予定だって言ってたけど。どうせ昼もコンビニだし、早めに出て朝ご飯でも食べるか?」
「それで良い……」
「んー?」
アヤノの表情は変わらないが少しションボリとした雰囲気を感じた。
「なに?」
「ああ……。いや、何となく今アヤノが悲しそうな……。なんて言うと大袈裟だけど、ショボーンとした感じに思えたから」
前々から表情は変わらないけど何となくこうだなー、って感じはしていたけど、今回のは今までよりも確実に感じる事が出来た気がしたので言葉に出してみる。
「べ、別に。そんな事ない」
珍しく言葉を詰まらせた。
「そっか? んまぁアヤノがそう言うなら俺の気のせいなんだろうな」
「そ、その通り」
「アヤノは表情があんまりコロコロと変わるタイプじゃないから見た目で判断するのはちょっと難くて、何となく雰囲気で言ってみただけだよ。あ! でもさ、アヤノってポーカーとかめっちゃ強いんじゃない? もしかして今まで負けた事ないとか?」
出来るだけポップに「お前は無表情で分かりにくい」って事をいじってみるとアヤノは目を伏せてしまった。
あー、しまったな。嫌味を言うつもりではなく、ちょっとした話題としてあげたつもりだったが本人には重い案件だったか。
いじられたくない事だったなら次から話題には出さないでおこう。
自分の中で1人反省会を開いているとアヤノが小さく言ってくる。
「正面悩みではある」
「悩み?」
「そう。あまり感情が表に出ないと言われる事は多々ある……」
「そうだな」
「昔は感情のないロボットだと言われた事もあった」
「ロボットって……」
それは……。良くない。それは言った奴本当に良くないぞ。思っててもそんな事は絶対言っちゃいけない。俺も表情が分かりにくいとはいじったけど、ロボットはだめだぜ。
そんな綺麗事と共に、その言った相手の気持ちも分からなくはないと思うのは俺の性格が悪いからだろうか。
でも――。
「でも……。そんな事ないよな?」
「え?」
俺の言葉に伏せていた目をこちらに向ける。
「表情には出ないだけで、アヤノの中ではちゃんとリアクション取ってるんだろ? 違うか?」
話の流れと今まで何となく感じていた事を思い返して尋ねるとコクリと頷く。
「私も思っている事や感じている事は沢山ある」
それを聞けて、ああは言ったものの正直安堵した。
そりゃ人間なのだから感情が湧くのは当然の事。
しかし彼女の場合は無表情過ぎて、読めなさ過ぎて不安であったが、彼女のその言葉を聞けて安心した。
それと同時に興味が湧く。
「例えば?」
「例えば……」
アヤノは少し考えて口を開いた。
「話かけられたら嬉しい。クラスの人達が話をしている内容があれば中に入りたい。友達と大きな声で笑い合いたい。寄り道したい」
「えっと……」
思ったより偏った返答であった。
「友達が欲しいの?」
「べ、別に……」
「何でそこは強がるんだよ……」
俺のツッコミにアヤノは俺をジッと見つめる。
「え? な、なに?」
「あとは覗かれて恥ずかしい」
おっと! いきなりの俺への攻撃が仕掛けられた。
「や! ちょ! きょ、今日のは不可抗力だろ。つかお前が部屋には勝手に入って良いって言っただろうが」
「言った。じゃあ前の脱衣所のは故意的だったの?」
「あれこそ完璧なる不可抗力だっての! まずアヤノの家だって事すら知らなかったよ」
「そう」
「あっれ? 信じてない感じ?」
「ない」
「ど、どうすれば信じてもらえるかしら?」
「でも、別にリョータローだから……。構わない」
「え?」
それってどういう。
「リョータローにはそんな度胸ないだろうし」
「なっ!」
それはそれで男としてのプライドが傷つけられた気がする。
しかし正論なので言い返せない。
「はぁ……。ほらほら。紅茶飲んだならさ、早起きしたんだからちょっと早めに行こうぜ。折角の体育祭なんだし」
空のカップを見てアヤノに言う。
「バイク?」
「何でだよ。時間余裕あるのにリスク高すぎるだろ」
「罰を受けるのはリョータローだけ。私に危害はない」
「とんでもねぇ事言うな」
「人間らしいでしょ?」
何でそんな質問してくるのだろうと思ったが、先程の話題でロボットと言われたのを思い出しての発言なのだろう。
「性格のわっりぃな人間だな。ほらほら行くぞ」
そう言って俺が立ち上がるとアヤノも立ち上がった。
いつも通りシンクにカップをいれてから俺達は家を出た。
今日は朝からアヤノの悩みを聞けたな。
朝から中々に深い話だったが、今日は学校イベントの体育祭だからな。
体育祭だけじゃなくて、修学旅行とか文化祭とかの日って妙にテンションが上がって色々と話したい気分になるよね。ポップな話からディープな話まで。アヤノもそんな気分だったのだろう。
そう考えるとアヤノは無表情のお嬢様だけど、どこにでもいる普通の女の子なんだなと実感出来る。
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