終生飼育は原則ですから

乃浦

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保護編

17-2

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 私が保護されてから三回目の頭痛が治った朝、ともやに聞いてみた。
<体調が悪い時にご両親は側にいなかったのか?>
<側っていうか、同じ家の中にはいたけど、なぜ?>
<体調が悪い時に一人になりたいのは、昔から一人だったせいなのか、一人ではないから一人になりたいのか>
<う~ん。たぶんひとりじゃないからひとりがいいんだと思う。やっぱり家族が苦しんでいると自分も楽しくなくなるし、それならひとりで誰のことも気にせずに苦しみたいね>

<寂しくはないのか?>
<レイサスもわかると思うけど、日本はとても恵まれている。本当に辛くなったら電話で救急車を呼べばいい。助けてもらえるとわかっているなら大丈夫でしょ>
<けれど本では、具合の悪い時に来てくれない恋人はいらないと>
<あれか。私はそうは思わないけどね。人それぞれなんじゃない。概して男性は具合が悪いと気弱になって頼りたがるみたいだけどね>
 笑って言う。

<人間を二種類に分けるとすれば、具合が悪い時に人恋しいタイプと人嫌いになるタイプ。なんか本で読んだな。とにかく二種類に分けたがる人の話。私は確実に人嫌いだけど、レイサスは人恋しいタイプ?>
 いてほしいと言ってもいいのだろうか。彼女の負担が増える。
<レイサスはこれからレイサスの未知の病気にかかる可能性がある。予防接種はしたけれど、すべての病気の予防ができるわけじゃない。何か体調がいつもと違ったら教えて。人嫌いタイプなら申し訳ないけど、あまり邪魔にならないように観察するから>
 私は人恋しいというよりともやが恋しいのだが。
 一人で大丈夫と言うともやは、なぜともやにいてほしいかをおそらく理解しない。

<人に頼りたくなる事はないのか?>
<ある。常に頼れればなとは思ってるよ。仕事嫌いだから、結婚して専業主婦にしてもらいたいとかさぁ。もう家から出るってだけで疲れるんだよね。だけど私を養ってもいいって人はいないし、人の好意だけが頼りって生活も疲れるよね>
 結婚は人の好意が頼りか。確かにそうだ。貴族の結婚は利害関係が薄れなければ解消されないが、そうでなければ好意だけだ。

<だからレイサスは疲れていると思う。私はいきなり捨てたりはしないから。保護した以上は責任を持つから、私の機嫌を取らなくていいよ>
 機嫌を取る? そうではない。
<ごめん、言い方悪かった。ええっと、私にはそんなに気を遣わないで。掃除やご飯は作ってもらいたいけど、なんて言うかな。それ以外の感情労働はしなくていいよ>
<感情労働?>
<う~ん・・・私が仕事で疲れていると声をかけてくれるけど、放っておいていいよ。自分の不機嫌は自分で処理する。目障りだとは思うけど、レイサスのせいじゃないから気にしなくていいから。本当はそういうのを出すべきじゃないんだけど、人間ができてなくてごめん>

 違う。私はいつも話し掛けたい。話し掛けなくてもいいが抱き締めていたい。
 だがともやはいつも本を読んでいるか何かを作っていて邪魔ができない。
 疲れているときは話し掛ける絶好の機会なだけだ。

<私は話したい。気を遣っているのではなく自分がしたい事をやっている>
<そう・・・それならいいんだけどね・・・>
 納得していないな。なぜ彼女はこんなに自分を過小評価するのだろう。
 希少価値のある人間なのになぜ自分の事をつまらないと考えるのだろう。
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