終生飼育は原則ですから

被保護編 338年

338年2月2-4

　王宮に移るので、入ったことのない奥まで案内してもらった。
　王妃宮にも頻繁に行くので王宮に詳しくなった。そうすると、家庭菜園を見つけた。二月というこの季節、何もないけどこの土の盛り方、菜園だ。
　誰がやっているのか聞くと、大学の、農業を研究しているニコラ・エコロ伯爵だと言う。
　もちろんすぐに会いに行った。

　エコロ伯は研究者によくいるタイプの変わり者だった。
　財産を研究につぎ込んで邸も処分し、大学に住んでいる。もともと財産はそれほどなかったらしいけど。
　しつこく頼んでそこら中に小さな畑を作っているらしい。ちなみに研究対象は豆。
　人間の食糧増産を目標にしていて、粉にしないと食べられない小麦より、煮れば食べられる豆を対象にしたそう。
　特に大豆。この世界では主にソファリスで作られている大豆を改良し、イユリスで作らせたい。大豆のすばらしさについて熱く語る。

　知ってる。大豆のすばらしさについてはよく知ってるよ。根粒菌、たんぱく質、イソフラボン、若くても食べられるし、加工もできる。完璧だよね。
　他にも品種改良を研究している人たちと話した。軽くね。深く聞くと帰れなくなる。

　実験農地を作ることにする。ちょうどソサイゾ領が手に入ったから。
　ソサイゾ領はロユデの隣という絶好の場所なので、大学からも通えるでしょう。
　レイサスとグレスさんに話を通さないと。予算はどれくらい必要だろう。

　向こうでは種は一大ビジネスだ。種の配給会社が世界の食料を握っている。毎年買わないと作物ができない。買った種で作った作物の種を蒔いてもまともな作物が育たない。あの技術力はすごいわ。
　この世界ではそんなことは望めないだろう。いい種ができたら各国に広がり最初しか売れない。
　だけどそれでもいいんじゃないかな。開発にそれほどお金がかかるわけではないし、人間飢えるといいことはない。

　しかしいいね。手近で大豆が手に入るなら、本当に麹をどうにかしないと。
　米を炊いて放置して麹菌を捕まえるという、実に恐ろしい方法を考える時が来た。
　かびてふわふわの米を食べるんだろうなぁ。はぁ。