終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 338年

338年3月3-3

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「せっかくのドレスなのに、アクセサリーを何もつけてらっしゃらないのね」
 かわいいなぁ。何か文句をつけたいんだろうね。
 後ろから女性たちが入ってきた。入室を制限しているわけじゃないからね。ここも早く出ないと。
「このドレスに相応しいアクセサリーを所持しておりませんので」
 ひそひそと後ろで情報が伝わったらしい。

 たぶん三十代後半の女性が言った。
「レイサス殿下が用意してくださらないなんて残念ですわね」
 みんな文句を言いたくて仕方ないのね。
「キャメロン伯爵夫人、レイサス様はいろいろ用意されたのに、オーサー様が断られたのです」
 クリスが気分を害している。
「そうですの」
 わかっているわ、言い方はいろいろあるわねといった感情をありありと伝わるように言った。さすが年の功。

「私の身には余る品でしたので、不釣合いな物をつけるよりは何もつけないほうが見苦しくないと考えまして」
 キャメロンね。ソサイゾ派だね。
 大変豪華なネックレスが、大変立派な胸の上で輝いている。

「オーサー様は貴族ではないと聞きましたが」
「はい。平民です」
「このような場にいると疲れるのではありません? 釣り合いの取れない装飾品はつけると疲れますし、不釣合いな場にいらしても疲れますでしょう?」

 ごめん。すごく笑える。上品な微笑じゃなくてにやっと笑っちゃった。
 そう来るなら言っちゃうけど。言おうと思ったら、私はひどいことも言えるんだけど。

「キャメロン伯はすばらしい宝飾品をお持ちなのですね。よくお似合いです。ただ・・・」
 心配そうに言いよどんでみた。
「どうかされまして?」
「報告されている評価資産額と、身につけていらっしゃる宝飾品にずいぶん乖離があるようだと思いまして」
 はっとした表情になった。

「クリスティアナ様、皆さんに紹介していただけるとうれしいのですが」
「そうですわね。デジェス伯爵夫人、べライン男爵夫人、リオーネル子爵夫人、その後ろの方が・・・」
 さすがクリス。わかってくれてる。後ろは逃げ出してるな。

「皆さま、オーサーと申します。輝くような衣装、素晴らしい宝飾品をおつけになった、美しい方たちにお目にかかれて光栄です」
 今日一番気合を入れた礼をしてやった。
 皆さま固まっていた。
 金を払わないやつが大きな口を叩くなってことだ。
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