終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 338年

338年9月1-3

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 そんなときに、男性が後ろから近づいていた。
 私達の隙間を謝りながら通ってクリスティアナ様の隣に行った。
 オーサー様だ。いつものように男性の服を着てる。
 ファリオン王子と護衛もオーサー様の後に続いて、私たちの前に立った。

 皆さん気づいてオーサー様、ファリオン王子と囁いている。
 クリスティアナ様と少しお話されたオーサー様がこちらを見た。目が合って、微笑んでくださった気がする。
「みなさま初めまして。初めてではない方もいらっしゃいますが。オーサーと申します。今日は例外ですが、原則としてこの建物に男性は入れません。見つけたら叫んでください」

 オーサー様は王太子殿下のエスコートでパーティに出られたと聞いた。王太子殿下とダンスを踊ったそう。
 だけど普段はファリオン王子と一緒に行動されている。並んでいるとファリオン殿下とお似合いだと思う。ファリオン王子はオーサー様に叩き直されたと評判だし。

「私は学校の管理者の一人で、主に雑務担当です。何か不都合な点や改善した方がいいことがあったら、誰でもいいので学校関係者にお伝えください。その際はぜひ、改善策も提案していただけると助かります」
 オーサー様のことはみんな知っているし、学校の校長になると思っていたのにならなかったことがびっくりだった。

「ただ寂しいとか授業が難しいとかそういうことは、まず、隣にいる方に相談してみてください。きっと同じことを考えていると思います。それでどうにもならなかったら、そのときは気軽に教師にご相談ください。十月に皆さんをお待ちしています」
 テティさんと目が合った。みんな初めてだから同じだものね。

「お邪魔しました。失礼します」
 クリスティアナ様と一言話したら、すぐにオーサー様は行ってしまわれた。お忙しい方だから仕方ない。私の横を通るときに会釈してくださった。

 オーサー様の姿が見えなくなると、クリスティアナ様が言われた。
「オーサー様は皆さんに期待されています。国の根幹は教育だと考えられているんです。私も初めてですが、一緒にがんばりましょう」
 はい。

 私は自分が結婚できるかばかり不安だったけれど、国のためにできることがあるのね。
 私にもできるかもしれないし期待されている。緊張するけど、早く十月にならないかしら。
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