終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年1月5-2

「人間は与えられた選択肢から選ぶ。選択肢を与えられればそこから選ぶものなの。以上から考えてください」
　真剣に私を見ているけど、もう少しリラックスしてほしいもんだ。
「近い距離に女が一人しかいない、しかも自分の生殺与奪の権利を持っている。寝食を共にした上に、今は自分が責任を持ちたいと思っている。もう完璧に、愛情発生の条件を満たしている。レイサスの感情はこの状況上しかたない。状況を変えれば弱くなるだろうから、距離を取って様子を見よう」

「それが何だと言うんだ。私はあなたを愛している。状況も何も関係ない。どうして距離を取らないといけないんだ」
「相応しい相手と」
「それはあなただ。私はそう思っている。あなたしかいらないし、他の者もあなたが相応しいと思っている」
　手で顔を包まれた。手が熱い。
「私の恋人になってほしい」
　目が怖い。真剣だ。

　状況依存とか刷り込みとか興味とか、そういう言葉では逸らせない。
　ここで本気で嫌だと言うことはできない。本気で嫌ではないから。
　だけどうなずいたらどうなるんだろう。愛人はいいけど、捨てられた愛人だといろいろやりにくくなる。

　けれど逃げる事もできなさそう。
　いっかな。やっとけば満足するかも。私にとってもいい記念だ。いろいろ面倒になってきた。普通どころか貧相でつまらない女ってわかるだろうから、もうよくなるかな。けど飽きるんなら最初から関わらないでほしいんだけど。

「ともや、返事を」
　顔近い。これ、傍から見たらキス寸前なんじゃない？　腰が引けるというか力を奪う。
「いいよ」
　考え中だったけど言ってしまった。後悔する間もなくキスされた。