聴かせてよ、ラブソング。

めぇ

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LOVE3.SOU/歌ってよ、Love song

Song1.)

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「奏、おはよ~」

「んはお~」

洗面台の前でシュコシュコと歯磨きをしている時に藍に話しかけられたから上手く声が出せなかった。でもあいさつされたらあいさつで返したいからそこは仕方ない。

「今日から部活再開だよね」

コップに入れてあった水を口に含んでガラガラとすすぐ、この口の中が爽快感に溢れる瞬間っていいよね。
スッキリーって感じがすごく好きな瞬間。

「…うん、そうだよ」

だから時間差で藍に返事をすることになった。歯磨きしてる時に話しかけられたから。

「テスト終わったら文化祭モードだもんね」

「うん、これからいつもより忙しくなるね」

「駿二先輩も張り切ってたよね」

「それはもう…めちゃくちゃ」

ふふって藍が笑いながら、鏡の裏の収納棚からくしを取り出した。

こんなイベントごとがある時は週2日だった部活動が毎日になる。普段ゆったりした練習もこの時だけは力が入って…でも俺バイトあるんだよね。毎日は出られないなぁ。

「奏、寝ぐせ付いてるよ」

「これ全然直らないから諦めた」

くるんっと右に跳ねていかにも寝ぐせ感で、歯磨きの前に調整を試みたけど無理だった。強すぎる寝ぐせにさよならを告げたとこだった。

「もう、仕方ないなぁ」

そう言って今度は収納棚からスプレー的なものを取り出した。俺の髪を持っていたくしでといて、シュシュッとスプレーを髪にかける。湿っていく髪を丁寧にとかして、隣の棚からドライヤーを手に取った。

ここまですごくスムーズで、髪の長い藍はいつもこんなことをやっているからさすが手つきがいい。俺はただその場に立って、じーっと目の前の鏡を見てる。

「……。」

ブォーっと音を立てて温かい風が頬に当たり始めた。

「これさ」

「え、何?」

「藍じゃなかったら直せないよね」

「何?聞こえないんだけど」

ドライヤーのスイッチを切って、鏡越しに俺の顔を見た。

「ううん、なんでもない」
 
頭は動かさないまま、ピシッとその場に立って。
藍がまたドライヤーのスイッチを入れた。

あんまり考えたことなかったけど、藍って女の子にしては背高いよね。だからこうやって俺の髪の毛にも触れる。

だけど、灯璃だったら…届かないだろうな。 

そう思ったら、なぜだか笑えてしまって。くすくすと笑ってしまった。

「ちょっと、何!?笑ってる!?」

必死に背伸びしながら髪の毛を直す灯璃を想像してしまったから。

「はい、出来たよ」

「ありがとう」

あっという間にくるんっと跳ねていた髪は元通りになった。

ふと藍の方を見れば、髪の毛もしゃんとして制服も乱れることなくしっかり着ていた。
もう学校へ行く準備万端だった、俺はまだパジャマなのに。

「…何?まだ何かあった?」

「今日は藍も部活来るんだよね?」

「行くよ。文化祭の曲も許可が出たし、真面目に部活やる期間始まったんでしょ」

「うん、そう…」

使ったタオルを洗面台の隣に置いてある洗濯機の中に入れた。

「どしたの?なんか気分落ちてない?」

気分が落ちてるってわけではないんだけど…

「ちょっと緊張しちゃうなって、あとなんか恥ずかしいし…俺の作った曲を藍に聞いてもらうのは」

「えー、なんで?何が恥ずかしいの?」

「恥ずかしいよ、だって藍は家族みたいなもんだもん」

どことなく恥ずかしい。今までひっそりやって来て、聞かせたことなかったから。

「もう1回聞いたのに?始業式の時聞いたよ?」

「あの時とはまた気分が違うんだよ、あれはやるつもりなかったのを急遽だったから」 

本番直前のステージに立つ前、ギリギリの変更だったこともあってか不思議と緊張はなくてワクワクしてた。

高まっていく気持ちに気分さえよくて、あれを“快感”って表現するのかなってぐらいに。

「あ、そうそう!あれって勝手に演奏する曲変えて怒られなかったの?」

「怒られた」

「あ、やっぱそうだよね。絶対何するでも許可いるのに、その許可取った意味ないもんね」

始業式の演奏も文化祭と同じで数ヶ月前から曲や機材使用の申請が必要だったのに、それを突然変更したらそら怒られるに決まってる。 

「でも盛り上がったからいいって許された」

「久野先生、寛大でよかったね」

「なんなら褒められた」

「じゃあ尚のことよかったじゃん、結果オーライだね!」
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