聴かせてよ、ラブソング。

めぇ

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LOVE4.RAN/見させてよ、Love Song

Song2.)

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「おっ、今日は全員いるね~!」

最後に部室に来た駿二先輩が両手を広げながら入って来た。たぶんこのポーズに意味はないんだと思う。

「文化祭も近付いて来たから気合い入れてくぞ!しまってこーっ!」

「駿二、そんな熱血部でもないよ」

「昨日スポコン漫画読んでさぁ、俺は今野球がしたい!」

「今日もいつも通りの個人練して合わせね」

さっきの意味のないポーズは野球のキャッチャーの掛け声をマネたものだったのね。誰も野球に詳しくなくて奏の呼び掛けで部活に切り替わった。

最初の1時間は個人練習、この時間の私はまだ決まらないグループ名を考える時間。

部室の角っこにパイプ椅子を置いて、練習風景を見ながら…ずーっと考えてるんだけどいい案が浮かばなくて、ノートに書いては消してを繰り返してる。

3ピースバンド…
じゃないよね、今までデュオだったのがボーカルが加わって…
声も女の子になったから…

「灯璃、ここの歌い方なんだけどさ…あ」

「え?何、おかしかった?」

奏が望月さんの髪の毛に触れた、人差し指と親指で挟んだ髪をスーッとなぞるようにして撫でる。

「ゴミ、付いてた」

「…ありがとう」

微笑む奏に望月さんが少しだけ頬を染める。 


そんな望月さんを見て奏は… 


奏が言ってほしくなかった気持ちはわかるの。 

だって居づらくなるのは奏の方だから。


私が奏を苦しませることになること、わかってた。


告いわない方がいいこと…

わかってたの。



でもね、もう限界だったの。



どんどん望月さんを見る瞳が変わっていく奏を見るのが…


そんな愛しそうな瞳で見ないで。

そんな柔らかい顔で笑わないで。



もう限界―…っ



「藍ちゃーんっ」

至近距離から聞こえた声にビクッと体が震えた。
まだ野球モードなのかと思うぐらい大きな声で、そんな近くからなら十分聞こえるのに。いくらイヤホンをしていた私でも。

「…何ですか?」

ワイヤレスイヤホンを外してスカートのポケットに入れた。

「ちょっと聞きたいことあるんだけどさ」

ギターストラップを肩から掛けたまま、余っているもう1つのパイプ椅子を私の隣に置いた。
ノートを見られるのはなんだか恥ずかしくて慌てて閉じる。

「こないだみんなで合わせた時さ、藍ちゃん俺の演奏どう思った?」

持って来た椅子に座って膝の上にギターを乗せ、顔だけ私の方を向けた。

「駿二先輩の演奏ですか?」

「うん、その時録音もしてくれたじゃん?自分で自分の演奏聞いたんだけど、藍ちゃんはどう思ってるかなって…ちょっと意見欲しい!」

「そうですねぇ…」

腕を組んでうーんと考える、数日前の合同練習で初めて録音をした。今もその演奏を聞きながらグループ名を考えていたから…

「駿二先輩たまに誤魔化してますよね」

「うっわ、バレた!?」

「バレてますよ、そうゆうアレンジなのかなとも思わなくない弾き方ですけど奏が最初にくれたデモとは違いますよね」

「ちなみにどこがそう思った?」

奏が私にも用意してくれた楽譜を見る。どの部分だったかを思い出すように順番に目で追った。

「そうですね…あ、ここです!」

「うわっ、俺の思った多とこドンピシャだった!」

私が指を差したところを見て、ばつが悪そうな顔をした。駿二先輩本人も自覚はあったみたいで、ぺろっと下を出して楽譜を見つめていた。

「ここ難しいんだよね~、何度やってもしっくり来なくてノリで弾いてるから」

「そこ結構目立つんですよね、難しいってことは見せ場でもあるのでもっとハッキリ音があった方がいいんじゃないかと思います」 

「ごもっとも」

ふぅっと息を吐きながら駿二先輩がパイプ椅子の背もたれに体をくっ付けた。両手を上にしてんーっと背伸びをして一気に緩めた。

「ふぁ~…ッ、もっとがんばんないとか~!」

「その方がカッコよく聞こえるかと思いますよ」

「そっか、じゃあやるか…せっかくステージもらえてるんだもんな」

「文化祭までもう少し時間もありますし、駿二先輩ならきっと大丈夫じゃないですか」

スマホを開いてスケジュール帳を開いた。 

久野先生が来て、そのあと体育館で演奏出来る日も入ってるから…それまで合同練習より個人練習に時間を注ぐようにしてもっと個々に時間を割いた方がいいかな。時間はあると言っても、これだけやってればいいわけじゃないからね。

「ちょっとそこ重点的にやるかな」

「はい、何かお手伝いすることあったらしますよ」

「うん、ありがと!文化祭って超楽しみだけど緊張するな~!またお腹壊さないようにしないとだな~!」

「駿二先輩、意外と緊張しやすいですよね」

「俺ガヤが向いてるの、注目されるとテンパる!」

ギターを持った駿二先輩が立ち上がった、ジャンなんて効果音を付けて。

「何ですか、それ」

つい笑ってしまって、くすくすと笑う私の方に駿二先輩がくるっと振り返った。

「そーいえば藍ちゃんたちのクラスは文化祭何やるの?」

「え、うちはー…」


****


「カラフル喫茶に決定しました~!」

1年1組の文化祭でやる企画が決まった。

お昼を食べ終えた5限目の授業、今日は文化祭の内容と係決めだった。級長兼文化祭実行委員の一宮くんの取り仕切りでスムーズに企画が決まり、文化祭までの必要なもの、係決めに仕事内容、その他いろいろ話し合いが行われた。

「部活で企画ある人は部活優先で、それ以外の人がクラス企画を中心的にって感じで!」

ちなみに級長と文化祭実行委員が兼ねているのは担任が決める時間を削減するため兼任でいいかとなったから、よくないと思ったけど本人たちが引き受けると言った以上私には何も言う権利がないので仕方なく飲み込んだのよね。

「カフェ名がカラフル喫茶でカラフルソーダの販売をするってことでいいですかー?」

だから私はこの話を自分の席に座って聞くだけ、もちろん係はするけどこのことに関しては副級長であり文化祭実行委員のしなのもそれでいいって言ったから。

「ねぇ藍、一緒に予算案出すの手伝ってもらえない?」

係がぞくぞく決まっていく中でしなのが私の元へ1枚の紙を持ってやって来た。

「必要なものの購入予算出さなきゃいけなくて。売り上げ予想とか、収入と支出?をちゃんと書いて提出しなきゃいけないの…もう全然わかんなくて!」

「あぁ、実行委員ってこんなこともしないとだよね」

見せてもらった紙には必要な材料の用途まで書くように指示されていて、学校のイベントは何かと許可が必須なのよね。お金のかかることだから仕方ないことだけど。

「お願い!ちょっとでいいから手伝ってもらえないかな!?」

パンッと手を合わせるしなのに断る理由が特に見付からなかったので引き受けることにした。

「うん、いいよ。お金の計算は部活で散々してるから」

「ありがとう藍~!助かる!」
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