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LOVE4.RAN/見させてよ、Love Song
Song8.)
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「あ、藍いた!」
文化祭ステージがそろそろ始まる時間、ビデオの準備をしていると制服に着替えたしなのがやって来た。
「しなのも見に来たんだ?」
「うん!ともりんが歌うとこ見たいし!」
店番担当が終わって私も制服に着替えスタンバイしていた。
「そっか、軽音部トップバッターだしね」
体育館の一番後ろに三脚を立ててその上に手で持てるタイプのビデオカメラを設置した。
前回はスマホで録画してたけど、手ブレはあるし前の人の頭で上手く撮れないこともあって…今回は備品の申請にビデオカメラも追加した。もちろん、撮影許可だって取った。
始まるまであと10分ぐらい、カメラの最終確認でもしておこう。
「今日気合い入ってない?」
「一応、大会とかないから文化祭が1番のイベントかなって思うし、そしたら残る映像はいい方がいいよね」
「気合い入りまくりじゃん」
順番に、まずカメラレンズの蓋は外した。
録音ボタンはここで…ピントもOK、ズームはもう少し近寄ってもいいかな。
「今日新曲歌うんでしょ?結構話題持ち切りだよ、始業式ん時のよかったからね~」
「それはよかった、始業式の時は必然的にその場にいるから聞いてもらえるけど今日は有志だからお客さんが全然いないってことも想定してたから」
でもそんな心配をよそに体育館はいっぱいだった。
たくさんの生徒が集まってくれて、見に来てくれてる。
それは嬉しい、私としても。
「すごかったからね、あの時のともりん!」
「それ以来しなの夢中だもね」
「だってカッコいいじゃん!一気にファンになっちゃったもん!」
開いた液晶モニターを見ながらステージの上を確認する。ここに合わせておけば、3人が現れた時ちょうど納まる…よね。
「ねぇ藍」
「んー?」
「私がともりんと仲良くし始めた時どう思った?」
「……。」
液晶モニターを見ていた視線をしなのの方へ向けた。
ちょっとだけ驚いた表情をしてたと思う。しなのがそんなこと聞いてくると思ってなかったから。
しなのと望月さんが仲良くしてたって私には関係ないことだし、それはしなのが決めること。だけど…
「めっちゃむかついた」
「あ、やっぱり~!」
あははっとしなのが笑った。
ふいっと視線を逸らした私を見て。
明らかに嫌そうな顔を見せてしまったから。
「でも話してみたら普通にいい子だったじゃん、ともりん」
取られてしまう気がしてた。
奏の隣も、奏のことも。
そしたらきっと私は邪魔な存在になるんだって、疎まれるようになるんだって、軽音部にとっても私はー…
「知らないままより知った方がよかったと思わない?」
“私、折原さんとも仲良くなりたい…!”
「そうだね」
“軽音部、入ろうよ!”
「じゃあ私臨場感楽しみたいから前行くね!録画がんばって!」
「うん、ありがとう」
しなのが人ごみの中に駆けてゆく、そろそろステージの始まる時間ね。
私がステージの上に立つわけじゃないけど緊張して来た…かも、大丈夫だったかな…
ドキドキして心臓が痛い、右手で胸の辺りをさすりながら深呼吸をした。
「今からステージ企画を開催します」
アナウンスが入る、一宮くんの声だ。
そういえば文化祭実行委員はこれも仕事だったよね。一宮くんが話しているのはステージ右下、そこからマイクを使って話してる。
「まずはステージ企画を盛り上がてくれるトップバッター、軽音部です!文化祭ステージ企画を大いに盛り上げてもらいましょう!」
ドキドキと音が大きくなる胸をきゅっと押しながらビデオカメラの録画ボタンを押した。
もうすぐみんな出て来る…
「この秋から新メンバーを加えパワーアップした軽音部所属のCraft of Flapクラフトオブフラップのみなさんです!どうぞ!!」
“藍ちゃんは…俺らのバンド名考えといて!”
Craftクラフトの意味は技術や技能、Flapフラップは羽ばたく。
直訳したら“羽ばたく技術”、羽ばたくことに優れた技能を持ってるってことになるんだけど…
奏の安定したリズムと駿二先輩のなめらかな音で作られる伴奏はバランスが良くて2人だからこそ奏でられるメロディーだと思う。
今までは駿二先輩が歌ってた。
でも2人の演奏はメンズボーカルだと暗く感じてしまって…
第一声から圧倒される、望月さんの伸びの良い声はそんな演奏を一気に変えてくれる。
暗く感じてたのが深さへと、だから引き込まれるの。
そんな意味で名前を付けた。
3人揃えばどこまでも届く、羽ばたくような音楽を作れるって。
「……っ」
あぁ、やっぱり歌上手いなぁ望月さん。
涙が溢れそうだった。
あんなに必死に堪えて、絶対泣かないようにしようって思ってたのに。
こんな歌聞かされたら…
ずっと奏を見て来た。
小さな頃からずっと。
私はいつでも思い出せるよ。
忘れたことなんかないよ。
昨日のことみたいに、覚えてる。
奏とひまわり畑で交わした約束を。
でもあれは幼かった私たちの大人をマネた約束でしかないの。
奏は1人じゃないよ、私がいるよって…
でも本当はね、ただ好きだっただけなの。
奏のことがずっとずっと好きだっただけなの。
気付けばポロポロと涙が零れていた。それは止まることを知らず、必死に声を殺すことしか出来なくて。
前が向けない。
あんな楽しそうにギターを弾いてる奏を見るの
がこんなに苦しいなんて。
目の当たりにして痛感した。
奏が自分で見つけた居場所は、奏が作り上げた世界は、とっても煌めいてる。
そんな世界を見られて嬉しい。
奏が笑っていられる世界に出会えたことが嬉しい。
でも奏の世界にいる女の子は私じゃない。
隣にいるのは私じゃない。
私じゃないんだ。
文化祭ステージがそろそろ始まる時間、ビデオの準備をしていると制服に着替えたしなのがやって来た。
「しなのも見に来たんだ?」
「うん!ともりんが歌うとこ見たいし!」
店番担当が終わって私も制服に着替えスタンバイしていた。
「そっか、軽音部トップバッターだしね」
体育館の一番後ろに三脚を立ててその上に手で持てるタイプのビデオカメラを設置した。
前回はスマホで録画してたけど、手ブレはあるし前の人の頭で上手く撮れないこともあって…今回は備品の申請にビデオカメラも追加した。もちろん、撮影許可だって取った。
始まるまであと10分ぐらい、カメラの最終確認でもしておこう。
「今日気合い入ってない?」
「一応、大会とかないから文化祭が1番のイベントかなって思うし、そしたら残る映像はいい方がいいよね」
「気合い入りまくりじゃん」
順番に、まずカメラレンズの蓋は外した。
録音ボタンはここで…ピントもOK、ズームはもう少し近寄ってもいいかな。
「今日新曲歌うんでしょ?結構話題持ち切りだよ、始業式ん時のよかったからね~」
「それはよかった、始業式の時は必然的にその場にいるから聞いてもらえるけど今日は有志だからお客さんが全然いないってことも想定してたから」
でもそんな心配をよそに体育館はいっぱいだった。
たくさんの生徒が集まってくれて、見に来てくれてる。
それは嬉しい、私としても。
「すごかったからね、あの時のともりん!」
「それ以来しなの夢中だもね」
「だってカッコいいじゃん!一気にファンになっちゃったもん!」
開いた液晶モニターを見ながらステージの上を確認する。ここに合わせておけば、3人が現れた時ちょうど納まる…よね。
「ねぇ藍」
「んー?」
「私がともりんと仲良くし始めた時どう思った?」
「……。」
液晶モニターを見ていた視線をしなのの方へ向けた。
ちょっとだけ驚いた表情をしてたと思う。しなのがそんなこと聞いてくると思ってなかったから。
しなのと望月さんが仲良くしてたって私には関係ないことだし、それはしなのが決めること。だけど…
「めっちゃむかついた」
「あ、やっぱり~!」
あははっとしなのが笑った。
ふいっと視線を逸らした私を見て。
明らかに嫌そうな顔を見せてしまったから。
「でも話してみたら普通にいい子だったじゃん、ともりん」
取られてしまう気がしてた。
奏の隣も、奏のことも。
そしたらきっと私は邪魔な存在になるんだって、疎まれるようになるんだって、軽音部にとっても私はー…
「知らないままより知った方がよかったと思わない?」
“私、折原さんとも仲良くなりたい…!”
「そうだね」
“軽音部、入ろうよ!”
「じゃあ私臨場感楽しみたいから前行くね!録画がんばって!」
「うん、ありがとう」
しなのが人ごみの中に駆けてゆく、そろそろステージの始まる時間ね。
私がステージの上に立つわけじゃないけど緊張して来た…かも、大丈夫だったかな…
ドキドキして心臓が痛い、右手で胸の辺りをさすりながら深呼吸をした。
「今からステージ企画を開催します」
アナウンスが入る、一宮くんの声だ。
そういえば文化祭実行委員はこれも仕事だったよね。一宮くんが話しているのはステージ右下、そこからマイクを使って話してる。
「まずはステージ企画を盛り上がてくれるトップバッター、軽音部です!文化祭ステージ企画を大いに盛り上げてもらいましょう!」
ドキドキと音が大きくなる胸をきゅっと押しながらビデオカメラの録画ボタンを押した。
もうすぐみんな出て来る…
「この秋から新メンバーを加えパワーアップした軽音部所属のCraft of Flapクラフトオブフラップのみなさんです!どうぞ!!」
“藍ちゃんは…俺らのバンド名考えといて!”
Craftクラフトの意味は技術や技能、Flapフラップは羽ばたく。
直訳したら“羽ばたく技術”、羽ばたくことに優れた技能を持ってるってことになるんだけど…
奏の安定したリズムと駿二先輩のなめらかな音で作られる伴奏はバランスが良くて2人だからこそ奏でられるメロディーだと思う。
今までは駿二先輩が歌ってた。
でも2人の演奏はメンズボーカルだと暗く感じてしまって…
第一声から圧倒される、望月さんの伸びの良い声はそんな演奏を一気に変えてくれる。
暗く感じてたのが深さへと、だから引き込まれるの。
そんな意味で名前を付けた。
3人揃えばどこまでも届く、羽ばたくような音楽を作れるって。
「……っ」
あぁ、やっぱり歌上手いなぁ望月さん。
涙が溢れそうだった。
あんなに必死に堪えて、絶対泣かないようにしようって思ってたのに。
こんな歌聞かされたら…
ずっと奏を見て来た。
小さな頃からずっと。
私はいつでも思い出せるよ。
忘れたことなんかないよ。
昨日のことみたいに、覚えてる。
奏とひまわり畑で交わした約束を。
でもあれは幼かった私たちの大人をマネた約束でしかないの。
奏は1人じゃないよ、私がいるよって…
でも本当はね、ただ好きだっただけなの。
奏のことがずっとずっと好きだっただけなの。
気付けばポロポロと涙が零れていた。それは止まることを知らず、必死に声を殺すことしか出来なくて。
前が向けない。
あんな楽しそうにギターを弾いてる奏を見るの
がこんなに苦しいなんて。
目の当たりにして痛感した。
奏が自分で見つけた居場所は、奏が作り上げた世界は、とっても煌めいてる。
そんな世界を見られて嬉しい。
奏が笑っていられる世界に出会えたことが嬉しい。
でも奏の世界にいる女の子は私じゃない。
隣にいるのは私じゃない。
私じゃないんだ。
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