でき損ないの僕ら

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出来損ないの僕ら

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あの後、秀一の両親は離婚し母親が秀一を引き取った。

どうやら、秀一の父親は愛人を作って浮気していたことや、秀一に暴力を振るっていたことが母親にバレたことが原因らしい。

なんでも、浮気の証拠となるホテルに入って行く写真や浮気相手とのやり取りのLINEのスクショの写真がポストに入っていたり、父親の車から発信器が出てきて、その履歴と現在地が母親のメールに匿名で連絡があったそうだ。



 しかもその時の現在地はちょうどホテルだったらしい………

 そして、更に言うとその時間は本来なら会社にいる時間帯だった。秀一の母親は最初それをいたずらだと思った、いや、思いたかったらしいが、会社に電話を入れたところ……まぁ、残念ながらいなかったらしい。
 そして、その次の日。ドライブレコーダーを確認したところ女が同乗していた映像が出てきた。

(いやー、なんでそんなものが母親に送られてきたんだろうね。この世の中怖いねー)


おばさんは父親が秀一を叱っていたことは知っていても、暴力を振るっていたことは知らなかったらしい。

それについては今回の自殺未遂で医者の検診を受けたことと、秀一自身が母親に話したそうだ。もちろん、診察書も証拠としてもらっている。

そして、秀一は母親話し合った。今までの気持ちを……


そこでわかったのは、母親も秀一に辛く当たっていたことに気づき完璧じゃなくても良いとわかったようだ。
 そこで秀一は何かおかしな事に気付き、さらに話を聞くと……どうやら母親の完璧思考は夫である秀一の父親に植え付けられた思想のようだった。

秀一も母親も、秀一の糞な父親の被害者だったわけだ。


 その原因である糞親父から離れたことで、母親は現実を見ることができたようだ。


正直、俺は秀一が暴力を振るわれていたことは知らなかったため、その話を聞いたときには、今すぐ父親の元に向かって、鉄バットで……

と思い、ネットショッピングで鉄バットを買おうとしたところで秀一に全力で止められた。

「隼人。その鉄バットはナニに使うつもりかな? まさか、×××野郎さん父さんに使ったりしちゃだめだよ?」

「あぁ、大丈夫だ。ちょっとこれで暴力ってどんな恐怖があるのか教育してやるだけだ」

「それ絶対ダメなやつ! 何その教育、怖いよ! 僕はもう気にしてないから、絶対やめてね。それに……そんなことして隼人が捕まっちゃって会えなくなる方が嫌だ……」

「秀一。 ……わりぃ、真面目に言ってくれてるのはわかってる。わかってるけど……その顔は可愛すぎ…」

「え? ちょっ、隼人! まだお昼だから、んんッ」



俺たちは、現在二人で暮らしてる。

秀一は大学へ進学、俺は就職した。俺は両親と離れたかったことや、あの人たちの世話になるのももう嫌だったため、就職することにした。勿論あの学歴主義人たちが許すはずもなく揉めたが、県を越えることで話が着いた。
県を跨いでしまえば世間体も大丈夫だという判断のようだ。俺はあそこまで世間体に捕らわれている両親を見て少しだけあの人たちが憐れに思えた……



あ、そうそう! 告白から秀一と俺は付き合った。まだ秀一の母親にも、俺の両親には言っていない。秀一の母親はまだあのクソ野郎のことで心がいっぱいだろうから整理が着いた頃に話そうと秀一とは話し合ってる。しかし、俺の両親は………言ったところでわかってくれるとは思ってない。まだ、話すかどうかは考え中だ。

しかし、もしあの両親に付き合っていること話して、反対されたとしても俺が秀一と別れることは決してない。もしされたらあの人達と縁を切ることも考えている。あの人たちは世間体をすごく気にするから色々言われそうだが、 俺の人生は自分のものだ。もう俺は絶対にあの人たちの人形にはならない。




出来損ないな俺たち………



「なぁ、秀一は今、幸せか?」

俺はふと秀一に質問する。それに対して秀一は少しだけ目を見開くと、笑いながら答えてくれた。

「フフフ、勿論幸せだよ。
ねぇ、隼人………僕たちは出来損ないだ。
いや、人間なんて皆そうだ。それに気付けたのは隼人がいたからだよ。そして、僕をありがとう隼人。大好きだよ。愛してる」

「!?   ああ。俺も愛してるし大好きだよ。秀一」

出来損ないの俺たちは『自分』を見つけた。もう迷わない。


END

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隼人と秀一はその後、会社を立ち上げました。親との関係に悩んでいる子達への相談所。そして、そんな子達が自分でいられる居場所としてカフェを開き、二人の会社は後に有名となりました。

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                        元凶には罰を………
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