もう離さない

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第2章 【逃走】

14話 聖女……

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「え?」

待て待て待て、ゼフィスさんに突如として抱き着いてきた美女は……誰だ

「あ、悪い。忘れてた」

「ゼフィスってそういうところあるわね……で? あなたの隣にいるその子は何?」


こちらに視線を向けた美女は……なぜか敵意を向けてきた

「えっと」

「ああ、紹介する。この前森で迷っていて、今俺が保護してるユートだ」

「優斗です……初めまして」

「んで、ユート。 こいつは俺の幼馴染のレクス。前言ってた聖女だ」

「どうも。 レクスよ。冒険者ランクはS」

「えっ、Sランクですか!」

「そうよ。Sランクよ」

この人もSランク……凄いな

「だから、あんたなんてぽっと出にゼフィスはあげないんだから」

「ん? 俺は別に誰の物でもねぇだろ。あとそろそろ離れろ。男に抱きつかれても暑苦しいだけだ」

「えっ!? お、男?」

「ユート騙されんなよ。こいつ顔とか声は中性的でわかりにくいかもしれんがれっきとした男だ。筋肉は見た目ついてねえけど、キレると俺でも手が付けらんねぇから……」

「ちょっと、筋肉がないの気にしてるんだから言わないでよ! あと、その子よりはあるわよ」

「いやいや、なんでユートと比べてんだよ」

「ふん! 何よ、どうせ良い所のお坊ちゃんでしょ! その日焼けを知らないような白い肌にさらさらとした髪。……良いわよね、生まれが良いだけで苦労も知らずに生きてこられて」

「なっ! ……ユート悪い、話しは通しておいたから上の部屋でその女の人と待っててくれ。レクスはこっち来い!」

そう言い残すと、ゼフィスさんはレクスさんを引っ張ってギルドの外へ行ってしまった

「えっ、ここで放り出す感じですか」

「大丈夫ですよ、私が責任をもって守ります」 

えっ、と思って後ろを向くと先ほどゼフィスさんが話していた女の人だった。

「初めまして、ユートさん。とりあえず上に行きましょう。ここは野獣が多すぎます」

「はぁ、わかりました……」

こうして、ギルドの女の人について部屋に向かった。上に行く途中何やら下がざわざわしていたが喧嘩でも再開したのだろうと気にも留めなかった。実際はユートとゼフィスの話で盛り上がっていたのだが、本人たちはそのことを知らない。







__________________________________________________

【視点ゼフィス】

俺はレクスを引っ張りギルド横の路地に入った。

そして……レクスの胸倉を掴んでいた

「うっ、何すんのよ! あの子の事庇ってるの? 実際本当の事だから…」

「……俺はユートの名誉のためにもあの場では言わなかったが、あの子はな……壮絶な人生送ってんだよ!」

「はぁ? どういう事よ」


そこから俺はユートに出会った経緯や、記憶喪失について、そして俺の推測を聞かせた

レクスは俺の話を聞いていくにつれ顔色が悪くなっていった


「私……」

「お前の言葉にユートは何も感じていないように表面上見えたかもしれないが、それはきっと環境がそうさせたんだ。どんな環境にいればそうなるのか……考えただけでも反吐が出るぜ!」

怒りにまかせて叩いたところ拳がギルドの壁を突き破ってしまった。

「あ、やべ。ギルマスにまた叱られる……はぁ~。 レクス、だから出自関連はユートの前で言うな。それに……出自に関して言えば誇れるようなもんでもねぇだろ」

「……ゼフィスは一応族長の子じゃない」

「ふっ、ああ。だが、アレが本当にその子に対する態度だったかと言われると疑問があるがな……お前も知ってんだろ?」

「……悪かったわよ。そうね。私たちも家庭環境最悪だものね。苦労は分かるわよ……確かに今回は私が悪かったわ。あの子には謝るわよ」

「ああ、そうしろ」
レクスは別に悪いやつじゃない。何でユートを敵視してんのかはわからねぇが、境遇を知れば放ってはおけない性格をしている

「で、あの子、これからどうするのよ」
「ん? 俺の家に居候することになってる」 
「は? ゼフィスの家に? 保護ってそういうこと…… 」
「ああ。この街で一番安全だろ?」

なぜかそこから話し合いというか、口論になり、最終的にレクスも俺の家に来ることになった。


天使との至福の時が……


ちなみに、俺が残念そうにしていた時、レクスは満面の笑みを浮かべていた。
……レクスは俺に恨みでもあるのだろうか
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