異世界転生 「転生したらスマホがスキルメニューだった件」

1章 異世界転生

1節 日常の終焉

「……また遅刻だ！」

主人公、**佐藤悠真（さとう ゆうま）**は、慌ただしく部屋の扉を開け放つと、ベッドの上に散らばる教科書とノートを一瞥した。大学のレポート締切に追われ、昨夜は結局寝落ちしてしまったのだ。それが原因で目覚ましを三回もスルーする羽目になった。

「くそ、就職活動もうまくいかないし、何か面白いこと起きないかなぁ…」

そうぼやきながら、カバンを片手にアパートを飛び出す。だが、悠真の願いが、彼の思い描く形で叶うことはなかった。

交差点。信号が点滅する中、全力疾走する悠真。だが、その時だった。

「おい、あぶねぇぞ！」

自転車のブレーキ音が響く。悠真がそちらを振り返った瞬間、視界の端に大きなトラックの影が映る。

「あ……」

彼の口から短い声が漏れた瞬間、轟音とともに視界は白く染まり、全てが途切れた。

――それからどれくらいの時間が経ったのだろうか。

悠真はふと、奇妙な感覚に気づいた。

「え、俺、死んだよな？」

そこには見慣れない風景が広がっていた。どこまでも続く青空と、そよ風に揺れる草原。かすかに小鳥の鳴き声が聞こえる。

「……え？」

彼が状況を理解しようとする間もなく、頭の中に突然、不思議な声が響いた。

――『スキルチェック中……チート特性を付与します』

「ちょっと待て、何だそれ！？しかも選ばせるとかじゃないの？」

異世界に来たという事実をまだ飲み込めていない中、悠真は自分の運命が大きく動き始めたことを知るよしもなかった――。